ゴールデンウィークと△関係 12話
夢華は珍しくモジモジしながらそこにいた。
普段の強気な態度とは違って緊張していて、少しだけ寂しそうにも見えた。
「い……いや、流石にダメだろ。」
「……ダメ?」
う……そう言われると何も言えない。
普段釣りあがった鋭い目付きが妙に弱々しくなっていて、正直可愛いと思ってしまう自分がいる。
「だー、わかったわかった。でも俺すぐ寝るからな。」
「相変わらず優しいね。」
俺は背を向けて目を閉じると夢華が布団に入ってくる様子が妙に生々しく感じる。
そして、少し高めの体温が伝わってきた。
彼女も背を向けてるのかもしれない。
どうしよう、どうしてこうなった?
というか、何を話せばいいのかわからん。
「うち、帰りたくない。」
「……。」
「もっと直輝と一緒に居たいし、ここに入ると自分の知らない自分に会えるから、その時間がたまらなく楽しいんだよね。」
「来年、受験に合格してこいよ。お互い受験生だ。」
すると、俺の身体に夢華の細い手足と高めの体温が絡みつくのを感じた。
それを感じて、また妙に緊張してしまう。
背中には彼女の柔らかい感覚が当たっている……これ、いや考えるな俺。もう寝るんだ。
「直輝の匂い……落ち着く、なんか安心するわ。」
「臭いってことか?」
「いや?全然。」
正直、自分の匂いとか分からない。
小中で汚いとか言われてたから、自信すら感じなかった。
「ねえ、直輝……こっち向いてよ。」
「流石にこれ以上はダメだ。追い出すぞ。」
流石に大人の対応をしなきゃダメだ。
なんというか、一歩間違えたらまるで花を手折るかのように夢華を愛してしまいそうだった。
というか、既に部分的に反応している。
それだけ俺は夢華を女性として意識していた。
「直輝……緊張してる?」
「う……うるさいな。」
「直輝なら、いいよ?」
「いいって何がだよ!」
咄嗟に……彼女の方向をみてしまった。
しまった、ツッコミのつもりが……反応してしまった。
すると、その先に暗闇越しに夢華の顔があった。
はっきりと表情までは見えないけど、月明かりで彼女のサラサラとした髪が乱反射している。
「隙あり!」
「な……謀ったな!」
夢華はそれを見逃さずに抱き合うような体勢になってしまう。夢華のしなやかで発育の良い身体を全身に感じて、妙に心地良さまで感じてしまった。
「もう離さないもーんだ。」
「ぐぬぬ……。」
「ねえ、直輝……。」
「なんだよ。」
「なんか、当たってるんだけど……もしかして。」
もう、なんか色々と限界だった。
こんなに魅力的な女の子がいて……抱かないやつなんているのだろうか。
本能が彼女を求めている感覚があった。
理性を保ってるけど、この時人間も所詮動物なのだと思い知らされる。
俺は目が血走り夢華を押し倒してしまう。
「な……直輝……?」
「はあ……はあ……。」
すると、夢華は少し震えつつも……まるでこれから起こることを受け入れるかのように、静かに目を閉じていた。
………………。
俺の思考回路は、もはや麻痺をしていた。
本能のままに動いてしまってる。
だけど夢華の顔を見ると、少しだけ涙目だった。
それをみて……俺はやっと理性を取り戻した。
「すまん……。」
「ううん、うちもからかいすぎた……ごめん。」
きっと夢華は初めてなのかもしれない。
体が震えて、涙目で……でも、それを欲していて……その迷いが見えたから、どうにか留まることができた。
「俺も……夢華が居るとすごく勇気が湧いてくるよ。」
「え?」
「夢を追い求めて走る夢華をみて、俺も医者になるために頑張りたいと思った。だからこの生活が終わるのは……俺も寂しいんだ。」
「直輝……。」
俺たちは過ちを犯すことをなんとか踏みとどまることができた。
月明かりに照らされる俺たちは、妙に蒸し暑いベッドの中向き合って話していた。
身体は密着してるけど、でも……さっきよりは衝動が抑えられている。
「ありがとう、直輝。やっぱうち直輝のことが大好き。」
妙に安心すると……弱ってた身体が無理に興奮した反動なのか……一気に身体が重力に吸い込まれるように地に落ちるような感覚があった。
「うちも受験頑張るから……直輝も頑張りなさいよ!」
「ああ……言われなくても。」
俺たちは小さな約束を交わし……静かに眠りにつく。
人と寝るのは久しぶりだ。
心地良く、たまに鬱陶しくかんじつつも妙に安心する。
俺は……静かに眠りについたのだった。
☆☆
チュンチュン……!
朝日を浴びて、俺は静かに目を覚ます。
昨日は、危なかったけど……何とか眠りにつくことができたみたいだ。
というか、疲れて気を失ってたに近いけどな。
「……夢華?」
しかし、夢華はそこにはいなかった。
どうしたのだろう。
まだ、体温が残っているからここから出てあまり時間経っていないみたいだけど……。
リビングに降りると、母ちゃんがそこにいた。
「おはよ、直輝。」
「おはよう……夢華、どこいった?」
何故か1階にも居なくて、少し焦りを感じる。
母ちゃんは……どうして何も言ってくれないのだろう。
「なあ、母ちゃん……夢華どこにもいないんだけど。」
「夢華ちゃんなら……さっき家を出たわ。」
「え。」
「直輝なら……心配して、最後まで着いてきちゃうから休んで欲しくて……って。」
「な……なにを。」
俺は焦っているのか冷や汗をかいていた。
それが喪失感なのか、それとも彼女に対する未練なのかは定かじゃないけど……酷くふらつくようでもあった。




