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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 雪と温泉とウィンタースポーツ

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ゴールデンウィークと△関係 10話

夜の新宿は、相変わらず人で溢れかえっていた。

浜松町から電車で30分弱、気がついたら新宿に到着していた。


夜風が少し冷たく、それでいて排気ガスの匂いで溢れかえっていた。

雨音のように聞こえるこのノイズのような音が足音だと気がつくのは、少し後だった。


「夢華!そこに行くと東口にいくわよ!」

「え……つか、ここどこ?」

「ここは西よ。」

「わかんねー!みんなこんなダンジョンをよく歩けるよ。」


夢華と舞衣はだいぶ仲良くなっていた。

だけど、俺だけは少し違っていた。


「でさー〇〇が。」

「いや〇〇〇しな〇。」


やばい、ふたりの会話が聞き取れない。

気がついたら背中は冷や汗びっしょりで景色が酷く揺らぎ、常に何かが喉につかえていたような感じがした。


……どうしちまったんだ。

少し気が抜けると、俺は足の力が抜けて音がどんどん遠くなっていった。


景色が遠のく、足の感覚が無くなる。体が麻痺するような……そんな感覚だった。


「ん?直輝!?大丈夫!?」

「直輝くん!直輝くん!しっかりして!」


ザワザワ……


周りが少しだけざわつく。

だけど、それすらも音が妙に遠い気がして……気がついたらプツリと何も聞こえなく、何も見えなくなっていった。



☆☆


…………。

あれ、俺はどうしたんだっけ?


少し記憶が曖昧だ。

確か、そう……俺は東京タワーに行ったのは覚えてる。

そこからはどうなったのかは思い出せないぼんやりと今自分はどこにいるか……それすらも考えられずにいた。


ここは……見覚えはあるんだけど、どこだったっけ?


「あー!もじゃもじゃ直輝だ!」

「はっ!?」


そうだ……ここは小学校の校舎だ。

そして、声の主は……。


「お前なんでもじゃもじゃなの?つか、顔クマだらけで汚ねえな。俺が洗ってやろうか。」

「や……やめろ!」


こいつはけいご。俺をいじめてた主犯だ。

サッカー部で、いつもこうやって俺の事を小馬鹿にしていた。

それも……何人も人を囲んで。



「ほら、みんなでこいつ服脱がそうぜー!直輝シャワーの浴び方とか知らなそうだから水道のみずぶっかけてやろうぜ。」


そういって、取り巻きのいじめっ子二人が俺の服をぬがし半裸になった俺は校庭の水道の水をジャバジャバとかけられていた。


「いーじゃん!」

「はは!男は清潔感大事だからな!」


そうだ、俺は元々弱くて独りだった。

毎日半泣きで帰ってたっけ。


すごく……嫌な夢だ。

どうして人は少し違う人間を爪弾きにするのだろう。

少し天然パーマだった、睡眠不足だった……それだけの違いで俺は差別されるのだから。


「おー、天野……どうした?」


先生がいた。

当時の担任で……年齢は30程度だろうか。


「先生!助けてください!」


大人なら助けてくれる。

そう思っていた。

だって、普通にわかるだろう。俺が半裸で水をかけられてるのだから、リンチもいいところだ。


「なんだ!お前ら……程々にな。先生残業したくないからさっさと帰るぞ。」

「え……。」


何言ってんだろう。

こいつもグルみたいなもんだ。

結局、俺は教科書まで水浸しで家に帰ることになった。

家にいても、もちろん母ちゃんはいない。


あるのは、コンビニ弁当だけだった。


夢も希望もないそんな毎日。

孤独で、自分の場所がないと思ってたっけ。

そういえば、この眠くて気持ち悪い気持ちは……当時は自傷行為のようなものだった。


それからは、いつも自分の部屋にいた。

朝から晩までゲーム三昧。

そして、具合が悪くなったら惰眠を繰り返す。

外に出たらモンスター扱いされるのが怖かった。


それを察してか、その辺から母ちゃんがAV女優をやめて一緒の時間を増やしてくれたんだっけ。


俺がこうなったのは、アイツらのせいだ。

俺は悪くない。

悪いのはこうさせる社会が悪いんだ!


妙に……憎悪と懐かしさが共存していく。

だけど、そこからまた景色がぼやけてくる。


☆☆


「……ここは。」

「あ!直輝くん!……よかった、よかった!」


舞衣がそこにいた。

髪からはフローラルの香りが自分を包み込んで心地よく、どうにかなりそうだった。


「あんた、急に倒れるからびっくりしたわよ。後で救急車代請求するからね!」

「夢華も……。」


まだ、頭がズキズキする。

少し楽になったけど、まだ体幹が安定せずフラフラしていた。


「直輝、ウチは怒ってるんだけど。」

「なんで?」

「あのさ!今日具合悪かったの……早く言ってよね!」

「そうよ!船で寝てたし、ぼーっとしてたから具合悪いの丸わかりだったよ。むしろしんどいって言ってすらくれなかった方が悲しかったよ!」

「……ごめん。」


そう、今日俺はぶっちゃけ勉強のし過ぎと、2人を楽しませようと無理をしていた。

普通の男ならそれをやってのけるのだろうけど、俺には少し無理な世界だった。


深海魚が浅瀬に上がると目玉が飛び出るように、慣れないことはあまりするものでは無い。

そんな教訓がどこか刻まれる。


挿絵(By みてみん)


「ちょっと……昔の夢見てた。俺小学校のころ虐められて、それで引きこもりになる夢。」


何言ってるんだろうと思ったけど、2人なら話してもいいと思った。


「天パをバカにされてさ、不潔扱い。いじめっ子に水道の水かけられて先生には見捨てられて、母ちゃんは家にいなかった。」


嫌な記憶ってなんでこうも深く鮮明に覚えてるんだろう。

あの頃のけいごのバカにした顔が思い出す。

殴りたい、この笑顔。


「俺、それがきっかけで自分が嫌いになった。無理をしないと、誰かと繋がれないと思っていた。怖かったんだよ……また1人になるのが。」


そう、俺はあまりに一人の時間が10代にしては長すぎた。

他の人なら、友達ができて色んなことを分かち合って言ったのだろう。

俺はこの空白が怖いから、努力をして……少し無茶をしていたのだった。


2人を恐る恐る見る。

俺を軽蔑してないか、離れないかと疑心暗鬼にすらなっていた。

本当に、情けない。


「直輝……。」


すると、夢華が近づいてパシンと思いっきりビンタされた。

え、ちょ……乾いた音と鈍い痛みが状況の理解を酷く遅らせる。

すると、少し不機嫌そうに夢華は腕を組んでいた。


「え……痛い。なんで引っぱたくの。」

「目ぇ覚ましなさいよ!昔は昔!今は今!うちらは今の直輝が大好きなのに……なんで嫌いになると思ってんの!」

「……ごめん。」


どうやら、夢華なりの愛のビンタだったようだ。


「直輝くん、心配しなくていいし……無理しなくていいからね。」


そう言って、舞衣は俺の手を握る。

その手は細くて滑らかで、それでいて少し体温が低くて心地が良かった。


「私はありのままの直輝くんが好きだよ。私だって虐められてたし……でも、その弱い立場がわかる直輝くんだからこんなに優しいと思うと、もっと好きになった。」

「舞衣……。」

「もっと、ウチらを頼ってよね!あんたはいっつも一人で戦おうとするんだから。もっと自分に正直に生きてもお釣りが出るよ!」

「夢華まで……!」


そうだ、虐められていたのは過去に過ぎない。

時折理不尽な事もあるし、傷つくことだってあるだろう。

でも、それでいいんだ。

今の俺にとって彼女らは居場所のようなものなのだから。

気がついたら……けいごの幻影は何処かへと消えていき、妙に肩の荷が降りた。


「ありがとう……二人とも。」


俺は今日、少し無茶をした。

だけど、その先で2人と話して……初めて自分はここにいいいと思えるようになった。


そうだ、今を踏み出すんだ。

過去なんてどうでもいい。

今何ができるかにこだわろう。


そう思うと、手に力が入ってきた。


病院の無機質な空気は妙に暖かい。

こうして小さなハプニングはあったけど雨降って地固まるとはまさにこの事だった。


楽しい、だけどこの時間がもっと続けばと思うほど、残りの時間が少なくも思えてしまった。


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