ゴールデンウィークと△関係 8話
少し濁った隅田川を船が進む。
ゆらりゆらりと揺れつつもしっかりとエンジンが動いて前へと進んでいく。
「ってアレ、直輝……いない。」
何故か肝心の直輝がいないと思って辺りを探す。
すると……。
「ぐぅ……。」
え、直輝寝てるんだけど……。
しかも今日は気候が暖かいのか、気持ちよさそうだった。
「ちょっとイタズラしようかな。」
「やめなさい。」
「うあっ!?」
すると、どこからか舞衣が現れて気がついたらウチの背後にいた。
もう……たまに怖いのよね、この人。
「それにしても、あなたほんと直輝くんに懐いてるわね。」
「まあねえ〜なんというか、直輝って小魚みたいに愛嬌あるじゃん!歳上なのにたまーに情けないところも可愛いな〜とか思ったり。」
「……あんた、大物になるわね。」
……。
珍しいな、直輝が寝てるとはいえ舞衣と2人っきりになるのは初めてである。
いつも喧嘩してるから反りが合わないはずなのに、意外と2人になるとそうでもない気がする。
いつもの煽り文句すら出てこない。
「……船旅ってのも悪くないわね。」
「でしょ、沖縄だと移動手段ほぼ飛行機か船だからね。」
「へぇ〜、私は電車オンリーだから新鮮よ。」
そういえば、直輝以外の都会の人と話すの初めてかもしれない。
遥香さんは島人だからノーカウントで。
「舞衣ってさ、言動がストーカーじみてるからヤバいやつだと思ったけど……意外と普通なんだね。」
「言い方!ちょっと酷くない?」
「じゃあ、直輝の部屋に何仕掛けてるのよ。」
「全然よ。せいぜいスマホのGPS共有をこっそりしてるのと、部屋には盗聴器と適度に直輝くんの私物をジップロックに詰めてるだけよ。」
「おっけー!じゃあ船降りたら自首しよう!言い逃れできないよ!」
やっぱ普通にやばい人なのかな?
よく直輝はこんな人と付き合えるのか不思議でしょうがない。
「逆に夢華は好きな人とか周りにいい人いないの?直輝くんの事好きなのは分かるけど距離的にほぼロミオとジュリエットみたいなもんじゃない。」
「はあ!?いや……別に好きでもなんでもないし!ただの下僕だし!」
何を言うんだろう。
勝手に行為を持ってとか思わないで欲しい。
でも何故かカッとなってしまったので落ち着いて話をつづける。
「んー……周りの男の子か。いつもギャーギャー騒いでいたりとか、ヤンチャで子供みたいなんだよね。」
「あはは、まあ中学生の頃だとそう感じるよね。」
「まあ……。ママも勉強しろ、安定志向でいけとかうっさいし、周りの人間極端なやつしかいない。」
あ、やばい。
ちょっと喋りすぎた。
コイツに弱み見せたら終わりな気がしたけど、舞衣はにこやかに話を聞いて頷いていた。
表情はバカにする訳でもなく、至極穏やかな表情で。
「なるほど……そう比べると直輝くんって居心地いいよね。」
「まあ……。」
「私も似たようなものよ。親との関係が複雑で仲あんまり良くなくってさ。周りに馴染めずに頑張ってメンタル壊してた時に直輝くんが助けてくれたから。」
うわ、腑抜け話だとおもったけどウチも似たようなものだった。
居場所がなくてイライラしてるところを直輝は認めてくれた。
直輝ってたまにバカみたいに真剣に向き合う時がある。
私は、その瞬間の彼がたまらなく好きだったことに気がついた。
正反対だけど、妙に似てるところがある。
むしろ本質はウチらは似てるのかもしれない。
「なんか……ごめん。ちょっとウチあんたのこと誤解してたかも。」
「うん、私もそんな感じ。意外と話すと分かり合えるものね。」
ゆらりゆらりと川の上を船が進む。
しばらく
日に照らされると、アナウンスが流れてくる。
「間もなく、浜松町に到着します。」
私が決めたこの旅も間もなく終わる。
直輝と話せなかったのは少し残念だったけど、悪くない時間だった。
「直輝ー!そろそろ降りるって!」
「ん……あれ、寝てた?」
直輝は情けない顔をして目をこすっている。
もしかしたら、裏で頑張ってるからかもしれない。
きっとウチが負担をかけてるところもあるのかもしれない。
「もう〜直輝くんは寝坊助ね。写真撮っちゃった……。」
「おま……何回目だよ。」
「うふふ、これも天井に貼り付けよーっと!」
なんだこの狂気じみた会話。
多分突っ込んだら日が暮れそうなので心をおおらかにしてあるがままを受け止めることにした。
「ほら、次は東京タワー行こうよ!」
「ん……東京タワーより……スカイツリーの方が高さが上だぞ?」
「何言ってるの、ウチとしては映画とかドラマで東京タワーみてたから東京タワーの方が好きなの!あの赤色の無骨なデザイン……憧れない?」
「まあでも……俺も登ったことないかも。」
直輝は疲れているかもしれない。
放っておいた方が彼のためになるかもしれない。
それでもウチは精一杯この都会を楽しむことにした。
残された時間、やり残したことをないようにしよう。
「ほらほら!行くって決めたら行くよ!」
「ったく……しょうがないわね。行きましょ、直輝くん!」
「ああ……せっかくだし行ってみるか!」
まだまだ混沌とした一日は続く。
色んなものが見えて楽しくて仕方なかったけど、それと同時にうちの中では妙にネガティブな感情が胸を蝕むようだった。
どうにも、この情けない直輝を自分のものにしたい気持ちと、それが叶わない嫉妬に近いような……そんな気持ちが。




