ゴールデンウィークと△関係 7話
ゴールデンウィークの浅草は脅威なまで人に溢れていた。
外国人に溢れて、スーツケースを引く音や英語系、中国系……その他諸々の言語も飛び交っている。
歩く音もそれぞれで浅草がそれだけ賑わった土地なのが伝わってきた。
「えへへ、直輝……ウチのいちご飴美味しいよ!」
「ちょ!それは私の役目なんだから!はい、直輝くん!私のチョコバナナ食べて!」
そんな人溜りの中、俺は舞衣と夢華に振り回されて少し疲れていた。
どうして、俺は今この混沌とした三角関係の中で浅草にいるのだろう。
☆☆
遡ること、10時間前。
俺は目が覚める。
そして、気がついたらまた勉強をしていた。
まだ問題を完璧に解けるわけじゃないけど、少し何かを掴めてきた気がする。
今まで未知の呪文に見えていた問題文が実は論点が2つ3つ重なってるだけだと気がついて、落ち着いて対応すれば解けると言うことがわかってきた。
俺も夢華たちに負けてない気がする。
今までの努力は無駄じゃない気がした。
すると、突然大きな声が聞こえる。
「ねえ!今日くらいは直輝くんとデートさせてよ!」
「い・や・だ!彼氏だから毎日会うじゃん!」
何やら、夢華と舞衣が口論していた。
やば……気づかれないように隠れないと。
「あ!直輝〜、おはよ!今日はウチ東京タワー行こうよ!」
「ダメよ!今日は直輝くんと湘南行くんだから!!」
どうやら、取り合いをされてるみたいだった。
「すまん、今日は一日中勉強したいんだけど……。」
「「……。」」
すると、夢華に手首を関節技で捻られて、舞衣にはアイアンクローをされる。
とてつもない激痛が俺を襲っていた。
「ねえ、舞衣……ウチ決めた。今日直輝をわからせる日だって。」
「うん、そうね。直輝くんは鈍感すぎてたまには分からせた方がいいかも。」
「ぎゃああああ!!ギブ、ギブだ!!なんでこんな時に2人とも息ぴったりなんだよ!!!」
どうやら、夢華は頭脳派だけど時としてパワー系みたいだった。
「全く……直輝!ウチがいるのになんで勉強優先なの!」
「ホントよ!出来れば24時間××して欲しいくらいなんだから。」
「受験生だからだよ!そして……約1名問題発言やめなさい!」
俺は引きこもり時代、こういった三角関係に憧れていた時があった。
ラブコメならめちゃくちゃよくあるシチュエーション。
王道ながら二律背反を背負うというこのジレンマが好きだったけど……意外とリアルだとめんどくさいもんだ。
「直輝、せっかくだし行ってあげたら?」
「母ちゃんまで!?」
「受験も大事だけど……この17歳の時間と人間関係も同じくらい大事だと思うよ。」
確かに……ぐうの音も出ない。
俺は最近は勉強ばかりだ。
人間関係も若干希薄な中でこうして2人は好意を持って接してくれている。
何より、2人にも時間があるのを無下にするのも良くないかもしれない。
「私は……10代と20代をAV女優に費やしたから、意外と友達少ないし……あはは……。」
「うん、2人とも今すぐ行こう。」
母ちゃんの自虐と言うか、時折感じる哀愁には重みがあり過ぎる。
「直輝くん、遥香さんには従順なのよね。」
「実はマザコンなの?ちょっとキモイかも……。」
母の言葉に素直な俺に対して若干2人は引いている。
「よ……よーし!とりあえず行こうぜ!今日は浅草とかいいかも!」
こうして、何もプランは決まらないまま俺たちは3人で浅草に来てしまった。
「……。」
いや、バカか俺。
明らかに一触即発じゃないか?
明らかに集団行動が嫌いなふたりを繋ぎ止めてなんで浅草なんか来てるんだろう。
「みて、直輝!あそこに金色のウンコがあるよー!近くで見てみよ!」
すると、夢華が金色のオブジェをみて喜んでいる。
公衆の面前でうんことか言わないで欲しいんだけど……。
「……ふふ、まだまだお子ちゃまね。あれはビールの泡を表現してるのよ。あーあ、これだから中坊は。」
「あ?いや、あれどう見てもうんこじゃん。目腐ってるんじゃないの?あ……視覚腐ってるから盗聴器仕掛けてるんだっけ。」
2人とも見た目はきちんとした女性なのに口論が小学生だ。
というか、盗聴器また仕掛けられてるの?
そのあとも、2人の摩擦は続いた。
「ねえ、直輝くん!合羽橋ってところ良さそう!なんか珍しい調理器具とかあるんだって!」
「へぇ……母ちゃん喜ぶかな。」
「いや!そんなとこよりウチと遊覧船行こーよ!船乗りたい!」
「「……!!」」
「あ、あの……2人とも?順番に回ろうよ。」
やべー、本当に仲悪いな。明らかに鬱陶しそうにしている。
どうにかして、雰囲気を持ち直さないと。
「な……なあ、あっち向いてホイとかどうだ?それで勝った方の希望に添う感じにしよう。」
ヤバい、さすがに幼稚すぎたか?
いや、でも橋の上でうんこって言ってるよりはマシかもしれん。
「まあ、直輝が言うならいいよ。」
「ええ、私も同意。」
良かった、そこは素直に従ってくれた。
「じゃあ……やるわよ。」
「ふん、ウチは強いよ〜!」
二人の中でしばらく戦慄が走ると2人は呼吸を合わせて掛け声をする。
「「ジャンケン……ポン!」」
舞衣はグー、夢華はパーだ。
ふむ、まあこんな感じかな。
「あっち向いて……ほい!」
すると、夢華は右を指す。
対する舞衣は……。
「……嘘……でしょ……?」
右を向いていた。
瞬殺だった。
「ぷっ!あんだけウチのことお子ちゃま扱いして……ダサ、プークスクス。」
「ちょ!3回戦マッチ!あと2回あるから!」
「え、大人気なーい。まあウチの方が大人だから聞いてあげるわよ。」
「ムキー!!ムカつく、その乳地に伏せてあげるわ!!」
結局、舞衣は3回戦すべて一発で負けて夢華の圧勝となった。
「ったく……お前らときたら。」
こうして、俺たちは浜松町行きの船に乗り隅田川を下ることとなる。
しかし、この後もカオスな状況になることをまだ知らなかった。




