ゴールデンウィークと△関係 6話
一方、その頃夢華たちはーーーー
「いっただっきまーす!」
私は下地夢華。
今日は訳あって直輝の家に遊びに来ている。
そして今は、その家主の遥香さんと晩御飯を食べていた。
食卓には麻婆豆腐とスープ、かに玉と今日は中華なラインナップだった。
「美味しい……!」
「あはは、ありがとう。夢華ちゃんはたくさん美味しいって言ってくれるから作りがいがあるわ。」
「いや、本当に美味いんですよ。私のママは料理あんまりしないから……。」
遥香さんは本当に美人である。
同棲の私でも魅力を感じざるを得ない屈託のない笑顔に……気がついたら私は心を開いていた。
「そっか〜翔子未だに料理苦手なんだね。」
「苦手ってもんじゃないですよ!この間もゆで卵作るって言って卵を電子レンジにぶち込もうとしてパパに止められてましたもん!」
「……え?そういえば、あの子昔米の研ぎ方教えようとしたらクレンザー入れてたような……?」
「自分がポンコツなのに、どうしてあんなに塾行かしたりするのか理解できません。」
うちのママは教育ママだ。
とにかく勉強させようとするし、歌を練習してるとそんなの積み上がらないからやめた方が良いとか言うのに肝心のところがポンコツなのが腹立つ。
「それに比べたら、遥香さんのほうが素敵だし……話してて楽しいからな。あーあ、遥香さんがお母さんなら良かったのに。」
「うふふ、なんか……翔子と似てるようで結構違うのね。」
「そういえば……遥香さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「うん、なんでも聞いて!」
私は、実はこの人のある一面を知っていた。
今なら直輝もいないし、切り込んでみようと思う。
むしろ、この人なら受け止めて切れる気がする。
「なんで、AV女優になったんですか?」
「……。」
みんな取り繕ってるけど、SNSなど見てると嫌でも情報は入ってくる。
この人は……元売れっ子AV女優だ。
今この人の名前を検索するとおびただしい数の彼女のあられもない姿が出てくる。
宮古島であった時は気が付かなかったけど調べれば調べるほどこの人の事も気になっていたのだ。
「あちゃー!今の現代っ子って情報収集すごいわね!」
普通の人なら激怒しかねない。
でも、この人の対応は至極軽い雰囲気だった。
「ママから聞きました。本当なら医者になる予定だったことも。でも……貴方はリスクだけを取って全て捨てました。どうして……そんな覚悟が持てるんですか?」
普通なら、そんな選択をするはずがない。
見た感じこの人は過度に性欲が強いという訳でもなかった。
だからこそ、私にとっては未知の世界だった。
「んー、直輝を守るため……かな。気がついたら上京してて、パートやキャバ、ラウンジをしたけどてんでダメ。直輝を養うことができなくて、気がついたらこの業界に居たの。」
「え、じゃあ……後先とかは。」
「考えない、目の前の事に集中してダメだったら次の手段をとる、その繰り返しよ。」
この人は……ただただ行動していただけだった。
でも考えながらダメなものを切り捨てた結果売れっ子AV女優になったのだ。
でも、彼女はたまに理不尽な扱いも受けてきた。
続けるのも苦痛だったのに、やり続けたのだ。
「でも、世間体は?今後の仕事は?その先のリスクとか大変じゃないですか?」
この時ばかりは、私はママの子どもだった。
世間体を気にして、堅実さを重んじるところはママと一緒だと感じていた。
でもそれだけ、やりたいことをやれてる人間の考えが理解出来切れてないのだ。
「めっちゃベターな回答だけどさ、人生って一度きりよ。」
「……。」
「私さ、震災で直輝の父親にあたる人が死ぬところを見たの。実家に帰ったらみんな亡くなってるし、案外世界から見たら命なんて軽いものよ。いつかは私たちにも終わりが来る。」
そして、遥香さんは親指を立ててグーサインで笑っていた。
「もう1回言うわ。人生は一度きりなのよ!死んだら全て土に還る。その中で……AV女優をしちゃいけないなんてルール無くない?やってみたい事をやれる時にやったもん勝ちよ!」
そう笑う遥香さんは、まるで太陽のようだった。
そして、全て合点が行く。
なんで直輝が医者という茨の道に一生懸命になれるのか。
身近にこんな人がいるからだ。
その時、こうでなくちゃいけない、こうあるべきという謎の鉛が全て降りたような……そんな気がした。
「……あ、でも私はこの業界があってたって言うだけだから無理になる必要もないからね!?」
「遥香さん、ウチも夢があります。」
「へ?」
私も、この人のように1歩踏み出そうと思った。
間違ってもいい、否定されてもいい。
自分の事に素直になろうと。
「ウチ、歌手になりたいです!たくさんの人に歌で勇気を与えられるような……そんな歌手に!」
「……いい!めっちゃいいじゃん!私の100倍立派な夢よ!」
そう言って、嬉しそうに遥香さんは笑っていた。
私は気がついたら天野家が大好きになっていた。
直輝も遥香さんも、私に勇気をくれる。
私という私が少しずつわかってくるような、そんな気がした。
だけど、そう思う度に少しだけ悲しくなる。
こんな楽しい非日常も、あと数日で終わってしまうのだから。
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