俺の彼女が重すぎる件について 9話
私は佐倉舞衣、17歳の高校生だ。
今私はすごく怒っている。
良かれと思って直輝くんと半同棲を初めて数日が経った。
最初は楽しかった。
私に本当の家族ができたような……そんな気持ちだったのに彼に拒まれてしまった。
私は、そんなに負担なのだろうか?
直輝くんのことを考えると……やっぱり胸が締め付けられるようだ。
私は気がついたら頭に少し血が登ったような状態で家に帰っていた。
本当は……帰りたくないのに。
「……ただいま。」
「あ!舞衣ちゃん……おかえりなさい!何日も帰らなかったから心配だったのよ!」
「……。」
この人はアサミさん。
私の父親の……交際相手である。
切れ長の目に整った茶髪……そして、露出は控えめの慎ましい見た目が特徴の大人の女性だ。
そう、我が家は今再婚の直面にいたのだった。
知らない人が家にいる。
そして、私が父親と称している人間も……血が繋がっていない。
そんな環境から出る気持ちは孤独以外の何者でもなかった。
「あ、今日親子丼作ったんだ!お腹すいてるよね?」
「……らないです。」
「え……?」
「いらないです!!私はもうおなかいっぱいなんですよ!」
「ご……ごめんなさい。そうよね、勝手に作って余計なお世話だったかも。」
私は……また怒鳴ってしまった。
いい人なのは分かる。
でも、それが私の気持ちを逆撫でするようでもあった。
「おい、舞衣……アサミさんに失礼だろ。」
「失礼とか意味わかんない!もう40近くなのに女なんか作りやがって!!そこまでして私の事追い詰めたいの!?もう無理!!」
「お……おい、待ちなさい!!」
私は父親を顧みず自分の部屋に閉じこもる。
正直……気持ち悪い。
私の居場所がどんどんなくなってきそうでそれが何よりも怖かった。
私は……焦っていた。
直輝くんが忙しいのはわかる。
最初はそれに合わせようとしていたけど、直輝くんは優しいから気がついたら色んな人が周りにいる。
それが私の居場所さえも知らない人が取ってしまいそうで怖かった。
「私……何してるんだろう。」
モヤモヤしながら、直輝くんの声が聞きたくなって直輝くんの部屋の盗聴器の音を起動する。
直輝くん……今何してるのかな。
すると、聞き慣れた声が少しずつノイズ混じりに聞こえてきてクリアになってくる。
いけない事をしてるのだけど、これをしてる時は直輝くんを近くに感じられるような気がした。
壊れた気持ちから、まるで水を注がれた植物のように心が満たされていく。
「ああ……何やってるんだ。」
直輝くんは、落ち込んでいた。
それだけで直輝くんは私のことを考えてるような気がする。
「あんなに素敵な子なのに……俺はいつも上手くいかない。」
「はぁ……はぁ……直輝くん、可愛い。」
正直、私の事でモヤモヤしてる直輝くんの声を聞くだけで脳のドーパミンは青天井だった。
布団にくるまりながら、直輝くんの声を聞いて少し自分の身体を慰める。
「決めた、明日きちんと話してみよう!あの子はこんなに尽くしてくれてるんだし!俺も、やっぱり好きだから。」
「私も……直輝くんのこと……!」
本能的な刺激がエスカレートしていく。
そして、身体がビクッと痙攣しかけた時にコンコンとノックの音が聞こえた。
私は……咄嗟に音声を切って布団から出る。
「アサミです。……舞衣ちゃん、ちょっといい!?」
「……なんですか。」
妙に息が上がっている。
全身が汗だくになっていて、自分の致した行動を察されないように取り繕う。
「ごめん……寝るところだったかな?」
「受験勉強で忙しいんですけど。」
「そうよね!ごめんなさい……受験のストレスもあるよね。」
言えない……彼氏の部屋の音声を盗聴して気持ちよくなっていたなんて。
私は、内心心臓ばくばくだった。
こんな綺麗な人は私みたいな気持ちの悪いことなんてしなそうである。
「舞衣ちゃん……私のせいで居心地悪い?」
「いえ……そんなことはないですけど。」
実際、アサミさんは家事を全てしてくれている。
優しいし、ご飯も美味しい。
見た目もアナウンサーのように綺麗な人だから、私の存在価値を奪ってしまうかのような嫉妬から来ている。
「私も……少し気持ちわかるな。」
「ちょ、入ってこないでください。」
「私も……片親だったからさ。」
その言葉に少し固まる。
こんなに幸せそうな人でも……そんな事あるんだな。
「両親が離婚して……お母さんと暮らしたけどお母さんも病気でね、私の20代はほとんど介護だったから。」
正直、重かった。
でも……今の私にはどうでもいい。
私だって……母親と間男の娘で母親は私だけを置いて行ってしまったのだから。
血が繋がってるだけこの人の方が幸せだ。
そうに違いない。
彼女の幸せエピソードなんか聞きたくない。
私が惨めになるだけだから。
「そうですか……じゃあ私寝るので。」
「その母さんも、先日亡くなったの。」
もう聞きたくなった。
なのに……止まってしまった。
「離婚した父も薬物で拘留状態、天涯孤独なの。だからあなたの気持ちもわかるの……。それに、あなたの父さんもいつもあなたのことを気にかけてるわ。だから……。」
「すみません、疲れてるので。」
「……そう。何かあったら私にも相談してね!私は……舞衣ちゃんの味方だから。」
私は何も答えずドアを閉めた。
私は……泣いていた。
やっぱりアサミさんは苦手だ。
いい人すぎる。
話せば話すほど私が嫌になっていた。
「直輝くん……。」
私は、気持ちが耐えられずカッターで手首を傷つけた。
久しぶりだった。
衝動的に身体を傷つけることで少し安心感を感じる。
切れ目から血が流れて少しずつ鮮血が見えてくる。
でも、そのせいか少し血圧が低くなったせいで少しだけストレスが和らぐようでもあった。
舞衣はどうなるのか?
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