俺の彼女が重すぎる件について 8話
「ただいまー。」
家に帰ると、母ちゃんが料理をしていた。
家にはカレーの匂いが漂っていて、さっきドーナツ食ったのにもうお腹がすいたような気がする。
「おかえり〜……って今日は舞衣ちゃんいないのね。」
「ああ、彼女もメイド喫茶で忙しいらしい。」
「そっか!もうご飯にする?」
「うん……お願い。」
俺は母ちゃんと向かい合ってカレーを食べる。
我が家のカレーはポークカレーだ。
野菜がゴロゴロしていて、食べごたえがある感じがより食欲をそそる見た目をしている。
「美味い。」
「お!良かった、最近舞衣ちゃんの料理美味しいから比較でまずいと言われたらどうしようかと思った!」
母ちゃんが頬杖を着いてにこやかに笑う。
そんなはずはない。
確かに舞衣は器用だけど、年季が違うのだから。
「なんか、ぶっちゃけ人と暮らすって難しいな。自分の時間がない気がして、それでも気遣わなきゃ行けない。」
「そんなもんよ。同棲はしたことないけど……違う人生をそれぞれ歩んできたのだから生活リズムが違うし、色んな違いを対面すると思う。」
「そうか……。」
何故だろう。
俺は舞衣のことを好きなはずなのに、今は彼女のことを考えると気が沈んでしまう。
彩奈のヤマアラシのジレンマとは言い得て妙である。
「なあ、母ちゃん。俺はどうすればいいのだろうか。」
「というと?」
「なんというか、受験勉強するだけでもかなりメンタルに来るのに……今は彼女と一緒に暮らす気力がない。でも、それが彼女を傷つけるのではないかと思ってるんだ。」
「………。」
しかし、母ちゃんは何も言わなかった。
いつとならズバッと正解を導き出してくれたのに今回ばかりは何も言ってくれない。
「……きいてる?」
「聞いてるよ。でも……今回ばかりは何も言えないかも。」
「いや、相談してるから母ちゃんなりの意見くれよ。」
こんな母ちゃんは、初めてだった。
少し、苛立ちさえも感じてしまう。
こちらは時間が刻々とすぎていく恐怖と、どう彼女に向き合うかでキャパオーバーなのに何故母ちゃんは冷たいんだろう。
「もういい、勉強するからお休み。」
「あ……。」
俺は痺れを切らして自室に籠り勉強をしていた。
少しだけ、自分の居場所がないように感じた。
自分が望んだ道のはずなのに、今は誰とも上手くいかない感じがする。
こんなつもりじゃ……なかったのに。
俺は寝る前に2時間勉強していた。
さっき彩奈と話した時はとてもよく進んだのに、妙にモヤモヤして結局この時解いた問題はここ最近で最も酷い点数だった。
☆☆
翌日の朝だった。
日差しが妙に眩しくて……時刻が昼になっているのに気が付く。
今日は舞衣もいない、目覚ましもとっくに鳴っていた。
俺は急いで立ち上がろうとすると、ガクッと力が抜けるようだった。
なんだ……?どうした俺?
勉強しなきゃ行けないのに、時間は刻一刻と迫ってるのに。
自分は医学部になるって決めたのに……なんなんだこのザマは。
3年生になったのに、俺は学校を無断で休んでしまった。
焦りを覚えながらも動かないからだを必死にもがいて動かそうとする。
結局、俺が何とか起きることができたのは13時過ぎだった。
リビングに何とか辿り付く。
母ちゃんはいない。何やら朝から外出した形跡があった。
「……辞めた。」
学校に行こうとするけど、何もする気が起きない。
俺は気がついたらゲームを開いていた。
なんて事ないアクションゲームを淡々とやっていた。
そして、自室でサブスクのアニメを見て……明らかに廃人のような生活をしている。
でも、学校も勉強も出来なかったのにゲームだけはしていた。
勉強とは違ってすぐ上達する感覚がどうにも快感に感じた。
去年はずっとこのぬるま湯に浸かっていたような……何も生み出さない孤独な時間に幸せを感じていた。
ゲームをクリアして、一息ついた頃には6時間も俺はゲームをしていた。
勉強だってこんなに長続きしなかったのに、何故ここまで没頭できたのだろう。
最初は無気力だったのに、気がついたら俺は爽快感と気力で溢れていた。
ピンポーン……
すると、自分家に誰かインターホンを鳴らす。
そして、足音が聞こえてきて誰か入ってきた。
いや、誰かは検討は着くのだけど。
「直輝くん……入るよ。」
そこに居たのは、舞衣だった。
制服を着ていて明らかに心配そうな顔をしていた。
その瞬間、先程の快感がまるでロウソクの炎が消えるかのように意気消沈してしまう。
「今日……学校来なかったね。服もパジャマのまま……。」
「ごめん……。」
そう、俺は今日は現実を投げ出してここにいることを思い知らされる。
何してるんだ俺と罪悪感を感じるけど、そこからひとつの確信が出てきたのだ。
「どうして、何も言ってくれないの?私じゃ役不足なのかな?」
「…………。」
少し躊躇ったけど、彼女に今の本心を伝えようと思う。
俺は流されてばかりで、なあなあで彼女に接するのは良くないと思ったから。
「なあ、俺は舞衣のことが好きだよ。一緒にいて君のいい所も沢山あることもわかった。だけど……この同棲は今このタイミングじゃない気がする。もう……辞めないか?」
言った。
言ってしまった。
少しだけ頭が真っ白になる。
言ってはいけないような事を言った気がして頭がカッとなるようなそんな気がした。
「なんで……なんでよ!!何が不満なの!?」
「不満とかじゃ……無い。」
すると、俺は舞衣に押し倒される。
その先には布団があって視界は舞衣だけになる。
「私なら……直輝くんを満足させてあげられるよ?まだ足りない?じゃあ……こうすればいい?」
舞衣は俺に抱きしめてキスをして体を刺激する。
しかし、気力が少なく俺は彼女に対して興奮をすることが出来なく……舞衣はそれに気がつくと俺の胸の上で無言になっていた。
彼女の長い髪が、俺の上半身でまばらに乱れる。
「なんで……勃たないの。私そんなに醜い?」
「違う……違うんだ。これは距離感とか、精神的な問題が俺にあって。」
「分かった……ごめん。」
舞衣は少し服装を整えて、お互い無言の時間が続いた。
ただ距離が近すぎて疲れるから、しばらく距離を置こうってだけなのに……それを伝えるのは本当に難しいもんだ。
「ごめん、こんな時間も……負担になってるんだよね。私……帰るから。」
「ちょ……待ってくれ!」
俺の制止も虚しく彼女はドタドタと俺の家の玄関を開けて去っていく。
少し回復した身体がまた消耗して俺はまたベッドに転がっていた。
「……最低だ、俺って。」
結局……今日は母ちゃんは帰ってこなかった。
孤独と無力感だけが俺を支配していて、何をするべきかもわからず惰眠を貪る。
少し散らかって、埃っぽい部屋の中俺はゆっくりと眠りにつくのだった。
何もしてないのに、身体は酷く疲れていた。
俺は一体……どうすればいいのだろう。
最後まで見ていただいてありがとうございます。
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