俺の彼女が重すぎる件について 7話
キーンコーンカーンコーン……
「今日はここまでだ!各自気をつけて下校するように!」
授業が終わると……いつもみたいに舞衣が来るかと思ったら今日はテキパキと荷物をまとめていた。
そして、俺の前に来ると両手をパンと合わせている。
「ごめん!直輝くん……今日バイトだから一緒にいられない!」
「そ……そうか。」
「じゃあね。」
…………。
なんだろう、1人になれて気楽になった気持ちと妙に寂しい気持ちが合わさったような気持ちだ。
とはいえ、最近1人になる時間がなかった気がする。
「まあ……時間も限られてるし勉強しなきゃよな。」
俺はそう言ってため息を着いて図書室へと向かう。
仲のいい友人たちはみんな各々の人間関係で忙しそうだったのでとにかくひとりで勉強を進めていた。
図書室はこうも勉強するのに向いている。
家や教室みたいに雑念が無いのもいい所だろう。
「んーと……、この図形の証明の問題は……。」
とにかく試験で間違えたところを強化していた。
時間はどんどん過ぎ去っていく。
しばらくすると、1人だけ入ってくる音がした。
「あれ……図書委員の人いない。って直輝くんじゃん!」
「彩奈?」
この子は川崎彩奈。
悪友の1人である。
いつもの金髪とピンク色のメッシュと典型的なギャルの見た目をしているけど、手元にはライトノベルを持っている程にはオタクだった。
「へー!最近見ないなと思ったらこんなとこで……!前いい?」
「ああ、構わないよ。」
すると、彩奈はテーブルの向かいに座る。
それと同時に証明の問題も無事終えたので次は英単語をやる単調な問題に切り替えていた。
「直輝くん医学部志望だったよね。うわー、私バカだから英語しかわかんないな〜。」
「彩奈は進路どうすんの?」
「んー、国際関係の仕事はしたいのよね。帰国子女だからギリバイリンガルだし〜。」
そう、彩奈は帰国子女である。
アメリカに住んでいた時期もあったので英語はクラスでもダントツの成績を収めている。
将来はやはり英語を活かした仕事をしたいらしい。
「そうか、現代文はどれくらいできるの?」
「え、1桁だよ?」
「そ……そうか。」
本人もなかなか苦労してるのかもしれない。
「読むのはできるんだけど、そこから言葉にするのが難しいんだよね。」
「そうなんだ。」
「実は直輝くんを見かけた時も頭の中でなんで直輝くん図書室にいるんだろうって英語で考えてた!」
そうか、人には少なからずメインの言語というのがあってそれを変換してるだけなのだ。
一見ただのコミュニケーションなのにかなりの芸当だと思う。
「なあ、この問題わかる?」
「あー、これね!直輝くんは文法が苦手かもね。単語覚える時は接続詞も合わせてやった方がいいよ。すると……ほれ。」
彩奈は問題をさらりと解いていくとあっという間に医学部の問題でも解いてしまった。
「すげぇ……俺これ解けなかったよ。」
「まあ、一つや二つは長所がないとね。」
「なあ……これは?」
「あー!これは実は引っ掛け問題で……。」
その後も彩奈は俺の質問にいくらでも答えてくれた。
何一つ嫌な顔せずに淡々と教えてくれて、気がついたら時間はあっという間に過ぎていった。
「これをこうすればいいのか?」
「そう!慣れてきたら単語じゃなくて一通りのフレーズごと覚えるとすごい楽よ!大分文法は覚えてきてるから!」
ガララ……
「なんだ、まだ居たのか。そろそろ図書館も閉じるから早く帰れよー。」
「やべ……すぐ出ます。」
「はーい。」
気がついたら俺は少し英語が楽しくなり2時間も勉強をしていた。
勉強というのは少しずつ解けると妙に頭がスッキリする。
小さな成功体験が積み重なると休み無しでいくらでも頑張れそうだった。
俺たちは並んで下校をする。
やはり夏に近づいてるのか18時をすぎても明るくて、まだまだ足が軽く感じるようでもあった。
「ほんっと……ありがとね。なんとお礼を言っていいやら。」
「んー、じゃあ……あの店でドーナツでも食べない?」
彩奈はミス〇ードーナツを指さす。
そういえば最近何年も行ってなかった気がする。
「直輝くんの奢りで!」
そう言って彩奈はニヤリと笑う。
ほかの女の子とは違って少しだけ含みのある笑顔が彼女のミステリアスな雰囲気と相まって少しだけ見とれてしまった。
俺たちはミス〇ードーナツに入店して並んであるドーナツをトレイに乗せる。
彩奈はポンデリング、オールドファッションなどオーソドックスなやつにしていた。
「直輝くんはゴールデンか!」
「……なんか、昔から好きで気がついたらこれなんだよね。」
「変化を嫌うタイプなのかな?じゃあもう1個は私が選んであげるよ。」
そう言って、彩奈はポンデリングの黒糖味を乗せる。
そして、俺たちは向かい合ってドーナツを食べていた。
実はポンデリング食べたこと無かったけど、その美味しさに驚いてしまった。
1個1個の生地がモチモチしている。
ほんのり来る甘さは疲れた身体を癒すようだった。
「美味い……!これこんなに美味かったんだ。」
「でしょ〜!一口もーらい!」
そう言って彩奈は1個俺のやつをちぎって食べる。
そして、美味しさのあまり「んー!」と喜ぶ様子は少しだけ幼く感じるようだった。
なんか、こういうのもいいな。
「最近、大丈夫?」
「え?」
「なんか、直輝くん無理してる感じだったから。勉強もあるんだろうけど舞衣に束縛されまくりで疲れてるのかなって。」
「い……いや、そんなことは。」
「いーや、また目の下のクマ復活してたよ!」
そう言われて俺はスマホで自分の顔を見ると、確かにやつれていた。
昨日寝られなかったからかもしれない。
「実は……今舞衣と半分一緒に暮らしていて、朝も一緒で寝る時も一緒の布団なんだ。」
「……想像以上ね、あんたら。」
「舞衣は……すごく尽くしてくれる。俺も好きだし、でも……近づく度に消耗する感覚があって。」
俺は言葉を止めてしまう。
一歩間違えたら彼女を否定しかねないからだ。
それを言ってしまったら、それを感じて明日も過ごさなきゃ行けない。
「あのね、直輝くん。」
「ん?」
「なにも、一緒にいることが愛じゃないよ。」
「え……。」
彩奈からの言葉は、意外なものだった。
どうやら今やってる事は違って見えるらしい。
「ヤマアラシのジレンマって知ってる?」
「それ……エヴァンゲ〇オンだよな?」
「そうだけど!でも、ヤマアラシは身体を温め合う距離感だと自身の針で傷つけるじゃない。今のあなた達と何が違うの?」
「あ……。」
そうだった。
俺もそうだけど、舞衣も無理をしていた。
あんなに朝早く起きて、メイクをバッチリにしていて……。
俺たちは無意識に傷つけあっていた。
「それに……直輝くんは基本ぼっちなのが自然体だから一人の時間を作ったら?」
「おい、ぼっちは余計だぞ。」
「ごめんごめん……舞衣に正直に話してみ?そっちの方が、私は誠実に感じるよ。」
そう言われて、妙に霧が晴れたような感覚があった。
いや、むしろ当たり前の事実を教えてくれていた。
こんな身近な友人に今日は沢山のことを教わった。
「ごめん……彩奈。」
「いやいや、なんで謝るし!」
「もっと視野を広く持てば良かったんだ。お互い受験で忙しいだろうけど、またちょいちょいみんなで遊んで色んなことを教えて欲しい。」
そう、最近は限られた人間関係に絞って受験勉強に集中しようとしていたけど、時には身近な人を頼る大切さを知った。
ポンデリングをまた食べると、とても甘くモチモチとしていた。
さっきよりもスッキリしたのか……より衝撃的な美味しさを感じる。
もっと周りを大事にしよう。
人と人は繋がってるんだ。
この丸い、ドーナツのように。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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