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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 雪と温泉とウィンタースポーツ

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月下に灯るメイド長 8話

少し懐かしい景色だった。

私は公園の芝生の木の下でもう記憶にない母親に甘えていた。


「ままー!みて、四葉のクローバー見つけた!」

「……ふふ、ことねは可愛いものがホント好きね。」

「うん!好きー!」


幼少の私は今の私とは思えないほど活発な子だった。

母親の顔は、少しだけモヤがかかっている。

物心が着くまえにこの最愛の母を無くしてるからだ。

そして、もう写真もなにも残っていないのでこの人がどんな顔をしてるのかすら分からなかった。


そして、まだ辛い現実もタバコも知らない私はまるで子犬のように体を吸い寄せていた。


「まま……温かい!」

「……ふふ、ことねは本当に甘えん坊さんね。ゴホッゴホッ……。」

「まま、具合悪そう。ことねが元気になるおまじないかけてあげる!」

「……まあ、ことねは優しいのね。」

「えへへ。」



しかし、突如としてその平和は終わりを向ける。

平和な時代の私と母親はまるで絵本を破ったかのように当然景色ごとバラバラになる。


気がついたら、私の背中に最も殺したい父親になった男がいた。


「お前が悪い、お前が全て壊した。」


そう言って男は私の体を這うように弄り、そう言ってこの幸せの忘却の責任を私に押し付ける。

もう既にどこかへ消え去って無になったはずの憎しみが鮮明に蘇る。


たった一つのシンプルな言葉が私の脳を支配する。


この男を、殺したい。


この男が私の母親と再婚をして、暴力を振るわなければ生きていたかもしれない。

この男が私に欲望を押し付けなければ私はもっと幸せに生きていたかもしれない。


「全部、お前のせいだ。お前は幸せになるべきじゃない。」

「違う!私は!」


そう思った瞬間私は……目が覚めた。


「は……。」


ここは、いつもの仕事場所。

わたしはパソコンを開いたまま机につっ伏して寝ていたことを思い出す。

そして、最も私が思い出したくなかった記憶を思い出し吐きそうだった。


急いで私は1杯の水をのんで、静かにタバコを吸う。

時刻は……夜の3時であった。


「……嫌な夢。」


こんな頑張りたい時に、最も愛おしい記憶と最もつらい記憶。

私が心が壊れる前の人間だった頃の思い出を夢として見るとは思えなかった。

ソファーに横たわり、少しひんやりした店に寝転がるとちょっとずつ体温が下がりながら心も落ち着くようだった。


背中に蒸れた汗が少しずつ外に出ていく感覚がどうにも心地よい。


「…………ダメだ。何もする気が起きない。」


さっきまで店のレイアウトとか、インフルエンサーとのコラボ企画などアイデアが溢れていたのに全てあの憎き男の追憶に持っていかれた気がする。

もうその男も脳梗塞で世の中にいないというのに、なぜ憎しみに溢れてるんだろう。


私は店を飛び出し夜中の街を歩いていた。

人は歩いていない。

ただただ、知らない夜道を歩いていた。


時折車が通って、それでいてビルのすきま風が私の体を冷やしていた。

そんな中、夜空だけは星がよく見えていた。

私は眠いし疲れてるはずなのにとにかく歩いていた。

なにかにすがるように、答えのない答えを探すかのように。


「……東京ってこんなに人がいないものなのね。」


深夜の東京は不気味なほど人がいなかった。

いつもは人で溢れかえる明治通りとか原宿、渋谷と歩いても人1人目に入ることはない。


まるでこの世界に人だけ居なくなって私だけがいる世界のようで私は気がついたらどんどん進んでいた。


たまに人がいない開放感を楽しみ全力ダッシュしたりと、アラサーになって何やってんだろうと思いながら私は少しずつ孤独を楽しんでいる自分がいた。


そんな中、嫌な記憶と今という点と点が繋がる。

私は今父も母もいない世界で私は人を引っ張っている。

小さくだけどついてきてくれる人がいて、しかもそこに来てくれてる人がいる。


私の人生不幸かと言われたらそんなことは無い。

私は幸せだ。


もう顔も知らない母親は星になったと思いその母に似た星に手を向ける。

あれは、オリオン座のシリウス。

白く眩い光を放っている。



挿絵(By みてみん)




「……母さん、見てる?私色々あったけど今こうして頑張っている。もうあなたの顔も思い出せないけど、私は幸せです。これからも……見守っててください。」


そう独り言を言って、私は街を進む。

新宿まで着くと人が居ることに気がついた。

少し、まだまだ朝日が見える様子はない。


私は、眠気と疲労がピークに達してきたので途中で見つけた銭湯に入る事にした。

かなり疲れたけど、そんな時こそ歩くのがいいのかもしれない。


先程までどろりとまるで詰まったシンクのようだった私の心は流れてスッキリとしていた。

今はゆっくりとその疲れを癒すとしよう。


明日も、頑張れるように。




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