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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第24章 雪と温泉とウィンタースポーツ

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月下に灯るメイド長 7話

オープンまで2ヶ月を切った。

季節はまだまだ厳しい冷え込みがあり、外に出るだけでも少し億劫な感じがする。

今日の天気は大雪で東京でも雪がつもりかけていた。


私はオープンの準備をしながらも、既存でレンタルキッチンでメイド喫茶の継続はしていて、採用した子も研修という名目で働いていた。


その結果……。


「ことねさん!4名様がお待ちです!」

「……まだかかりそうね。舞衣ちゃん!テーブルチェックかけるから、20分後の案内でも大丈夫か聞いてちょうだい。」

「了解です!」

「すごい人気だね、ことねさん。もう4時間も客足が途絶えない。」


動画は大バズり。

メアちゃん、くるみちゃん、そしてすずのちゃんのキャラがYouTubeで大反響。

勝手に切り抜きも作られて私たちは瞬く間に人気は急上昇だった。


「お……お帰りなさいませ!私わたあめの国から降りてきたメアって言います!」

「メアちゃん!動画みました!自分変えて顔変えて……めちゃくちゃ勇気貰えました!」

「え、嬉しい!私頑張りますね!」


メアちゃんは整形や努力などで若い女性のファンが多い。

多分1番チェキのオプションが売れているエースだった。それに初々しさや健気さもあって私としても応援したい。


「……ひ、ひぃ……もう飲めないよ。」

「え〜、お兄さんが私とテキーラ勝負しようってなったんでしょ?まだまだ私バンバン飲めるんだけど?」

「いやすごいわ……俺の負けだよ、シャンパンも降ろすわ。」

「あざーっす!何にしよっかな〜アルマンドにしよっかな〜。」

「あはは、くるみちゃんには敵わないな。」

「あ、あとこれ!」

「ん?これは……デカチェキ?」

「もうことねさんには交渉して置いたよ!今日の私との記念日……大切にしたいからね!」

「く……くるみちゃん!」


くるみちゃんは……正直問題児である。

でも相手の表情や動機などを読み取るのが異様に上手い。

今の客なんかは弱音を吐いてるように見えるけど、あれは生粋のドMだし、飲める子に飲ましたいタイプだから彼女はドンピシャにそれを演じている。


ぶっちゃけキャバ嬢の方が良いのでは?と感じるけど売上は彼女がたたき出していた。


そして……


「さーて!すずののミニライブ始めるで〜!」

「よっしゃー!行くぞ!タイガー!ファイヤー!」


すずのちゃんは持ち前のダンスやパフォーマンスの高さでちょっとしたライブを作っていた。この狭い箱でも10人がペンライトを回している。

ある意味カリスマ性すら感じた。

(私が今ミニライブしたら多分半分くらいの盛り上がりなんだけど)


それに、踊れる曲のレパートリーが多いので急にリクエストされても踊れてしまうのだ。


こんな感じに、私たちの新人さんは大きく盛り上げていて、売上はこの日でいつもの10倍近く売り上げていた。

メイド喫茶はピープルビジネス、良い子が入ればそれだけ売上が上がるという教訓がこれでもかと具現化された瞬間だった。


「あ〜酔った酔った。」

「くるみさん……大丈夫ですか?」

「いや〜飲みすぎちゃったわ。」

「……くるみちゃんお疲れ様。これ差し入れよ。」

「ええ!?ことねさん、ポカリくれるとか優しいですね!いただきます!」


くるみちゃんは控え室でずっとぶっ続けで飲んでいたのでかなり笑い上戸だった。

さやかと比べて暴動は起きてないところもギャップを感じてとても好感的だった。


「……ちょっとあなたを誤解してたかもしれないわ。ごめんなさいね。」

「いえいえ〜、結構自由奔放にやってしまいすいませんね。」

「……貴方は人の心を掴むのが長けてるから、むしろ勉強になるわ。」


新人は彼女を除くと未成年しかいないから飲める彼女は本当に貴重だった。最初は仮面を被っていたけど、時折他の子のドリンクを率先して作ってくれたりしている。

まだ、心の距離を感じるけどゆっくり時間をかけようと思う。


そして、私は営業にもどる。

「初めまして!巫女の世界から来ました!ことねです!」

「あ、動画のオーナーの人じゃん!」

「動画では怖い感じだったけど、優しそう。」


最初の頃に比べて本当にたくさんの人が来るようになった。

私目的の人が減ってしまって少し寂しい気もしたけど、それでいい。それこそが私の仕事が成長してる証なのだから。


☆☆


「……それじゃあ今日はお疲れ様でした。」

「はーい、お疲れ様です!」

「……ごめんなさいね、すずのちゃん。途中までくるみちゃんに送って貰って、一応領収書くれたらお金渡すからね。」

「かまへんかまへん〜!うちに任せとき!ほな、くるみさんいこか〜!」


そう言って、くるみちゃんとすずのちゃんはお店を出る。

私はここからが本番だ。

彼女らの給料計算とか、他にも備品の発注とかその他もろもろを進めようとパソコンを立ち上げる。

しかし、ふとある違和感に感じてしまった。


「……メアちゃん?」

「あ、すみません!邪魔でしたよね、私も帰ります!」


メアちゃんだけ、少し様子がおかしかった。

ちょっと暗いような、疲れてるようなそんな感じだった。


「いや、ちょっと待って。」

「あ、は……はい。」


私はPCを閉じて彼女を正面に座らせる。

やはり自信が無さそう。

今にも泣き出しそうな感じで弱々しかった。

何か聞いてあげた方が良いだろう。


「……大丈夫?顔暗いけど。」

「あ、え〜っと……大丈夫ですよ!」


うん、これはダメな大丈夫だ。

多分しんどい時に大丈夫って言っちゃうタイプなのかもしれない。




挿絵(By みてみん)




「……本当に?なんというか、辛そうに見えるわ。もし話せるなら話してもいいわよ。一緒に働く仲間なんだから。」

「……うぐっ、ひぐ!」


そういうと彼女は零れるように泣いてしまった。

まるで水の入った風船に針を刺したら水が溢れるかのような、それほどに溜め込まれたものを感じた。


「私……1週間働いたんですけど、くるみちゃんやすずのちゃんが凄すぎて、私ここにいて良いのかな?なんて思ってしまいました。」


確かに、彼女は他のふたりに比べると控えめである。

応援はされやすいけど2人に個性としてのブレイク力に欠けてるだろう。


「時折、虐めを受けたせいか視線が怖く感じて。あの子いる?みたいな……そんな感じで見てて、本当は私はただのブスで場違いなんじゃないかなって思うと……怖くて、怖くて。」


彼女はそう言って静かに堪えるように泣いていた。

メアちゃんはいじめの経験もある。

そのために顔を変えて注目されたけど、今はそれが足枷になってると感じてるのかもしれない。


そして、そんな背景は彼女から見た世界を歪めていると思うと私は静かに聞いていた。


「……分かるわ、あの2人すごいもんね。昔は私もあれくらい人気だったのに今日の私モブだな〜なんて思っちゃったわよ。」

「私は……ここにいていいんでしょうか?くるみちゃん程売上は出せないし、すずのちゃんみたいに踊れる訳でもないんですよ。」


そう言って、彼女は退職願の封筒をぶるぶると震わせながら持っていた。きっと彼女はすぐに出したりしない辺りまだ迷ってる気がした。


「……メアちゃんは、どうしたい?今すごく悩んでると思うけど、どうしてこのここに来たんだっけ?」

「自分を、変えるために。」

「……メアちゃん、確か空手で黒帯だったわね。どれくらいで取れたの?」

「3年掛かりました。」


やっぱりこの子は努力家だ。

その努力が土俵の違う人間に埋もれた。

それで自分の努力家が通じないと感じたのかもしれない。

でも、私には彼女が輝いて見えた。


「……じゃあ、もう一度空手をやり直すとして一週間で黒帯なんて取れるのかしら?」

「いやいや!そんなの無理ですよ!まずは蹴りをできるために体幹を鍛えたり、ストレッチをして柔軟性をしたりとか、色んなことが出来ないとダメなんです!」

「……じゃあ、貴方が白帯の中、周りは黒帯ばっかの道場に居たら才能無いってことになるのかしら。」

「それはならない……あ。」


私は彼女に今の状況を空手で置き換えさせたら彼女はすんなりと入ったようで表情がスッキリとしていた。


「私、まだまだここでは白帯だったんですね。」

「……うん、そういうことよ。」

「あははは!私……視野狭すぎ。」


そういうと……メアちゃんは退職願を自分でビリビリと破りゴミ箱に捨てていた。


「……メアちゃん、あなたの過去も受け止めるし、これからも貴方が変われるヒントを一緒に考えるから、ゆっくりでもいいから頑張ってみない?」


そう言うと、メアちゃんは差し出したコーヒーを一気飲みすると立ち上がった。


「すみません、ありがとうございます。私また辛くなったらことねさんに相談します。」

「ええ、貴方はとにかく誰よりも失敗しなさい。その失敗の数があなたを強くするから。」

「はい!今日は、ありがとうございました!また明日もお願いします!」


そう言って、メアちゃんは店を出て私は1人になる。

今日はあきらさんは居ないので小さな照明の下で私はまたPCを開いてから大きく伸びをした。


「……さーてと、やりますか!」


まだまだオープンまでは不安や問題は山積みである。

私はそれを一つ一つ解決して進もうと思った。


肩の疲れと目の疲れが疲労MAXだったけど、私はできる限りの事を尽くして作業に明け暮れていた。

しかし、ふと疲れがピークに達したのか私は作業の最中で少し疲れてしまい仮眠を取ることにした。


そして、机に突っ伏していくと深く深くと眠りに入っていく感覚があった。


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