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第6話/初めての魔法/RISA.pov


「リサ!やるのね!これ!!いくんだね?!」


ナギが叫んでる。

目の前にはジェル状のモンスター。

跳ねてるけど、サイズとしては脛の半分くらいの高さ。

小さい方なんだろう。


かなり城から離れてしまった。

あまり時間はかけたくない。


さっき遭遇したモグラのモンスターも、

狼みたいな犬のモンスターも。

ナギは絶対に距離を詰めない。

鴨のモンスターに限っては何故か止めてきた。


あたしがやらなくちゃ。

リュックサックを適当に投げ下ろす。


「やろう!ナギ!!これやろう!!いける!いけるよ!!」


ナギを鼓舞するようにラグナロクを抜く。

足首ほどの長さの草むらだからきっと見失う事もない。

右側にナギがいる。

フライパンを構えてる。

ほんとにそれでやるの?


「リサ!これもうやっていいの!?どうしたらいいの!?もう始まってるの!?」


ナギが意味不明な事叫んでる。

混乱してる、モンスターの魔法かも。

やっぱりあたしがやらなくちゃ。

そうだ、魔法。

あたしはラグナロクを地面に突き刺し、両手をジェル状のモンスターにかざして力いっぱい叫ぶ。

突き刺せてなかったのか剣は向こう側に倒れた。


「〝こおれ!!〟」


なぜかナギが逃げていくのが視界の端に見える。

モンスターの上に冷たそうな物体が出来る。

あたし、魔法使えてる!


「ナギ!あたし魔法使えた!見て!ほら!見て!」


自慢げに逃走中の勇者につい目をやる。


「リサ!前!前!」


前を向くと、ジェル状のモンスターが目の前に迫っていた。

避けられない。

当たりながら後ろに跳んだ。

恐怖は全くない。

あたしいける。

女神様にぶっとばされておいてよかった。


視界が空と土でぐるぐるして、草が頬に刺さる。

うつ伏せで止まったんだ。

口の中が少しじゃりじゃりする。

ネイルは無事。


「うわっわっわわ!きもちっわる!!!ぺっ!」


ナギの叫んでる声が聞こえる。

あたしはゆっくりと立ち上がる。

どこも怪我してないみたい。

よかった。


「リサ!石投げて!復活してる!」


復活って何?

あたしの魔法が効いたのかも。


「わかった!」


モンスターを挟んで直線状にナギ。

なんかあたしの出した魔法と戦ってる。

まだ混乱してるんだ。

ジェル状のモンスターが分裂してうねうねしてる。

きもちわる。

目につく石をひたすら投げつけた。


あたしのすぐ横をナギが放った〝こおれ〟が通過する。

敵の混乱魔法が厄介だった。

ナギの斜線から少しずれる。


「危ないから魔法使う時言って!」


一応叫ぶが返事がない。

その後、しばらく二人で石とか枝とかを投げつけていたらモンスターは逃げて行った。

混乱魔法強すぎない?


リュックサックを手元に置いていると

ナギがラグナロクを持ってきてくれた。


「リサ、大丈夫だった?」


「うん、剣、ありがとう。ナギも魔法使えてよかったね。」


「え?僕、魔法使ってないよ。」


「〝こおれ〟使ってなかった?」


「ああ、あれはリサの魔法が残ってたから、それを投げつけてた。」


全部物理攻撃だったんだ。

魔法、使いなよ。


「じゃあ、あたしを回復してみて。」


ブラウスをめくって二の腕の擦り傷を見せる。

ナギの耳が少し赤い。

初めての魔法で緊張してるのかも。


「ジェルのやつの体当たりの時の傷?」


「モグラから逃げてる時にどっかの枝に引っ掛けたんだと思う。

足も少しひりひりするんだけど、まずは腕から回復してみて。」


「うん。わかった。」


そう言うとナギはかなり遠くに下がっていく。

なんで?

たまらず声を張る。


「離れすぎ!!」


「爆発するかもしれないし!」


耳を疑った。

〝こおれ〟を唱える気?


「しないでしょ!早くかけてみて!」


「はい!」


ナギは両手をあたしに向ける。


「かいふく!」


何も起こらない。


「魔法の名前を叫ぶんだと思うよ!」


「はい!」


なんであいつ返事いいの。

あたしは二の腕を出して待つ。

あんなに遠くからピンポイントで当たるのか疑問。


「〝いやすね〟!!」


ナギが叫ぶと、あたしの腕がぼんやり光る。

なんか暖かい。

傷が塞がっていく。


「ナギ!効いてる!効いてる!」


みるみる傷が塞がり、触っても痛みがない。

成功したようだ。

ナギも魔法が使えた事に安堵していると、足のひりひりする痛みも消えた。

その瞬間、二の腕のあたりを包んでいた朧げな光が全身を包む。

力が(みなぎ)ってくる。

すごい。

回復魔法ってこんなすごいの?

ナギが何か叫んでいる。


関心した矢先、光が強くなり何も見えなくなる。

眩しい。

急に吐き気がしてきて頭がふらふらする。

胃から何か酸っぱいものがこみ上げてきた。

たまらず、膝と手をつき四つん這いで嘔吐する。


「ゲッ!ゲホッ!ナギ!!止めて!!・・・・・止めて!!」


四つん這いも維持できない。

つらい。体調悪い。

そのままぐるんと仰向けに寝る。

苦しい。

光が少し弱くなり視界が戻ってきたかと思うと

体が大きく揺れだす。


「ウアッババババババアバ!ボッボボ!!オオオ!!ウウウウ!!!!」


声を出したくて出しているわけじゃない。

揺れる体に出させられている。

気持ち悪い。

空が青い。

まだ吐きそう。

ナギが何か叫んでいる。

耳もよく聞こえない。

手をかざしながらボサボサ頭がこちらに走ってくるのが見えた。


(おまえ…その手を…下げれば…止まるんじゃないか…)


落ち着いたと思った光が急激に勢いを取り戻す。

まばゆい光に包まれ、再び何も見えなくなる。


「ガガガッグギッ!!グガガガガボボッ!!オエッ!」


嘔吐する。

声も止まらない。

真っ白な世界で、〝羽を生やした人〟が

数匹あたしの体から現れて金切り声を上げているのが見えた。

それらは青白く発光している。

天使だ、お迎えだ。

全身が熱すぎて感覚がなくなる。

もはや体は震えではなく揺れだ。


「リサ!!敵がきた敵がきた敵がきた敵がいる!!!!!モンスターアアアア!!!!がいる!!!!」


近くからナギの叫び声がするが言語として認識できない。

天使たちが耳をつんざくような悲鳴をあげ、バツンと爆ぜる。

一気に吐き気が強くなる。

体が跳ねる。

光が弱まったり強くなったりしている気がする。

体の感覚がなく、何が起きているのかわからない。

頭痛とも認識できないくらいに頭の方が痛い。気持ち悪い。苦しい。


光量の変化に合わせて戻る視界を頼りに声の出所を見ると、

光っている両腕をこちらに向けるナギが

両膝をついて泣き叫んでいるのがぼんやりと見えた。


(だから…その手を…下げ…おぇっはきそ…きっつ…)


気持ち悪い、吐きそう、内臓が全部出そう。

体が出てきそう。

吐きそう。

つらい。

頭痛い。

吐きそう。

全部出そう。

体は口に入らない苦しい。

まわらない頭まわらない頭痛い。


ぼんやりと見えるナギは、パシャリと嘔吐してその場につっぷした。

おまえが吐くんかい。

それがあたしの記憶にある最後の思考だった。



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