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第6話/初めての魔法/NAGI.pov


「リサ!やるのね!これ!!いくんだね?!」


大きく広がる快晴の空とは裏腹に、僕たちには後がない。


アルセナ城から少し離れた草むらで、

小さいモグラらしきモンスターを見つけたけど爪が鋭くてリサがビビッていたので逃げた。

そこから林を通った先にある丘で犬にも狼にも見えるモンスターを見つけたけど、

唸っていたのを見てリサが後ずさりしていたので逃げた。

城に戻ってこようとしたら途中の池で、

鴨みたいなモンスターに遭遇してついにリサがラグナロクを抜いて飛び掛かったけど、

よく見たら多分〝ただの優しい目をした鴨〟だったので止めた。


今、目の前にはジェル状の生き物が一体、飛び跳ねている。

かなり大きいサイズだ。食べられちゃいそう。

陽気そうに見えるがおそらくモンスターだろう。

僕達には後がない。


このジェル状のモンスターで逃げるとなると、

僕達はもう〝優しい目をした鴨〟にしか立ち向かえない。

僕達二人が、僕達自身に、そういうレッテルを張ってしまう。

それがきっと初陣というものだ。

しかし戦いたくない。

そんな感じを繰り返して僕たちは追い詰められていた。


モグラも、犬みたいな狼も、モンスターではなかったかもしれない。

だからこそ、明らかに〝モンスターだと言い切れる〟

このジェル状のモンスターを僕達は倒さなくてはならない。

しかし、戦いたくない。

なんで晴れたんだ、今日。


「やろう!ナギ!!これやろう!!いける!いけるよ!!」


リサがラグナロクを抜いて吠える。

自分を奮い立たせているに違いない。

〝高級なフライパン〟を握る手に力が入る。


僕の左にリサがいる。

目の前にジェル状のモンスター。

ぷるぷるきらきらしてる。

気合い入ってるリサの唇がたまにこんな感じ。

すごく似てる。


〝リサの唇〟はぴょんぴょん跳ねている。


戦闘っていつ始まるの?

こっからどうすんの?

堪らず叫ぶ。


「リサ!これもうやっていいの!?どうしたらいいの!?もう始まってるの!?」


叫んだ直後、重量感あるものが草むらに落ちる音がした。

左を見るとリサがラグナロクを捨てて魔法を叫ぶ。


「〝こおれ!!〟」


爆発するかも!

僕はモンスターと距離をとる。

右横に回り込んでやる。


「ナギ!あたし魔法使えた!見て!ほら!見て!」


声がする方を向くと、リサが両手をかざしたまま僕を見ている。

ジェル状のモンスターの上に氷の結晶っぽいものができかけている。

結晶の中心になんか集まってきてる。

かっこいい。


結晶が出来上がる前に〝リサの唇〟がその場で二回跳ね、三回目のジャンプで〝ご主人様〟に突撃していった。


「リサ!前!前!」


叫ぶと同時にジェル状のモンスターが〝ご主人様〟に当たる。

後ろに吹っ飛ぶリサ。

あんなに吹っ飛ぶの?

足がすくむ。

リサが二回目の後転に入ったところでモンスターに視線を移す。

跳ねて間合いをとっているように見える。

〝リサの唇〟はラグナロクに向かっていた。

チャンス!


僕は走って近づきながらフライパンの柄から周りの縁部分に両手を持ち替えた。

押し潰そうとして飛び掛かる。

気色悪い感触と共に、ラグナロクの柄と僕のフライパンに挟まれたジェル状が飛び散る。

柄の下に石でもあったのか、

柄を押した反動で僕に襲い掛かってくるラグナロクの刀身。


「あぶな!」


飛び掛かった勢いでそのまま転がり避ける。

草の匂いが鼻をつく。

顔にどろりとしたものがつく。

手で掴むと飛び散ったジェル状だった。

たまらず声を上げ後ろに飛びのく。


「うわっわっわわ!きもちっわる!!!ぺっ!」


不快感で口の中に入った錯覚がある。

右にリサ。目の前に飛び散ったジェル状のモンスター。

うねうね動いてなんか集まってる。

僕も使いたくて少し左に飛んでったラグナロクを見ると、

近くにリサの放った〝こおれ〟が結晶になって落ちてるのが目に入る。

僕は急いで結晶に近づきフライパンで粉砕する。


「リサ!石投げて!復活してる!」


「わかった!」


ジェル状のモンスターを挟むようにして僕の直線状にリサがまだいるのだろう。

後ろから声が聞こえた。

砕いた〝こおれ〟の破片が脛に当たって痛さのあまり動けない。

〝リサの唇〟は一か所に集まって元のサイズに戻ろうとしてる。

僕も砕いた結晶を投げつける。

投げても威力がなさそうなので氷の結晶をフライパンで打つと思いのほかジャストミートしてよく飛んだ。

リサに当たりそうになっちゃった。


「危ないから魔法使う時言って!」


リサが怒ってる。

その後、氷の結晶が尽きたので僕も石をしばらく投げつけた。

モンスターは元のサイズになって、

困ったようにぴょんぴょん跳ねてどっかに逃げて行った。


ラグナロクを持ってリサに駆け寄る。


「リサ、大丈夫だった?」


「うん、剣、ありがとう。ナギも魔法使えてよかったね。」


「え?僕、魔法使ってないよ。」


「〝こおれ〟使ってなかった?」


「ああ、あれはリサの魔法が残ってたから、それを投げつけてた。」


「じゃあ、あたしを回復してみて。」


リサはシャツをめくって二の腕にある小さい傷を指さしていた。

ネイルのせいで、知らない人みたいでなんか照れた。

誤魔化すように質問する。


「ジェルのやつの体当たりの時の傷?」


「モグラから逃げてる時にどっかの枝に引っ掛けたんだと思う。

足も少しひりひりするんだけど、まずは腕から回復してみて。」


「うん。わかった。」


今日は戦いに来たくなかったけど、

初めての魔法、いざ使うとなると胸が高鳴る。

僕は距離をとるとリサが叫ぶ。


「離れすぎ!!」


僕も声を張り返す。


「爆発するかもしれないし!」


「しないでしょ!早くかけてみて!」


「はい!」


僕は大きく呼吸をして、両手を前に出す。

目を瞑ってこれ以上ない声で叫ぶ。


「かいふく!」


リサの叫び声で目を開ける。


「魔法の名前を叫ぶんだと思うよ!」


「はい!」


再び息を大きく吸う。

目を瞑り、リサめがけて叫ぶ。


「〝いやすね〟!!」


「ナギ!効いてる!効いてる!」


暗闇からリサの声が聞こえてきた。

よかった。

しばらくそのままで待機する。

リサが何か喋った気がするけど聞こえない。


「もういい!?これどうやったら終わりなの!?」


返事がない。

目を開けると、様子がおかしい。


「ゲッ!ゲホッ!ナギ!!止めて!!・・・・・止めて!!」


まばゆい光につつまれた四つん這いのリサがいた。

リサが光ってる!

失敗した!

僕の両手首もそれなりに光を放っている。

どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。


「リサ!!!!大丈夫!!!???」


いてもたってもいられなく、リサに向かって走り出す。

僕の両手首の光も勢いを少しずつ増す。

しかしそれよりも、リサの方が尋常ではない。

なんかリサが点滅してる気がする!


「リサーーーー!!」


「ウアッババババババアバ!ボッボボ!!オオオ!!ウウウウ!!!!」


リサがモンスターみたいに叫んでる!

どうしようどうしようどうしよう

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。

離れすぎたのか光のせいなのか、リサが遠くに感じる。


「ガガガッグギッ!!グガガガガボボッ!!オエッ!」


リサはまばゆい光に包まれてガクガク揺れている。

聞いたことのない声を出している。

こわいこわいこわいこわいこわい。

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。


僕はリサの隣で膝をつく。

前に出している僕の手首も一層光る。


どうしたらいいのどうしたらいいのどうしたらいいの

どうしたらいいのどうしたらいいの

どうしたらいいのどうしたらいいのどうしたらいいの。


頭も視界も真っ白になっていく。

その瞬間、リサの体と僕の手首から〝羽の生えた人〟がたくさん現れて苦しんでいた。


「リサ!!敵がきた敵がきた敵がきた敵がいる!!!!!モンスターアアアア!!!!がいる!!!!」


叫んだ直後、羽の生えた人型のモンスターは全員悲鳴を上げて次々に爆ぜた。


倒した倒した倒した

よかったよかった

失敗した失敗した失敗した。


モンスターが爆ぜたと同時に、

頭が捩じ切れるかと思うほどの痛みに襲われて口から体液が出た。

感覚もなく嘔吐した事に驚いていたら地面が迫ってくる。

ぶつかった瞬間に意識が途切れた。




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