第70話/裏切者は誰だ!?/Limited_NAGI
翌日、日が暮れる頃。
事務所の一室に呼ばれたナギ。
ランタンが中心に置かれた丸いテーブルを四人が囲んでいた。
ナギの右と正面にショートツインテール、左にダーガが座る。
「ヤマ、大丈夫?」
ダーガが真正面を見ながら心配そうに切り出した。
「ヤマは私。」
ナギの正面に座っているショートツインテールが指摘する。
「大丈夫。ダーガ君、話して。何?」
ナギの右に座るカミが少し弾んだ声で言った。
「ドミヌスに攻める日を前倒しにしようと思う。だからナギ、もう決めて欲しいんだ。どっちにつくか。」
(攻める日ってたしか五日後だったよね。)
「どれくらい前倒しするの?」
ナギがダーガに顔を向けて尋ねる。
ルーピアは澄んでいた。
「二日後。」
静かな声で告げられた。
「なんで?」
正面のヤマが聞く。
「ドミヌスに多分情報が漏れてるんだ。バシナリーとドミヌスの事務所の周りに人がやたら多い。さっきも見てきたけど、警戒されてると思う。」
双子からの視線がナギに刺さる。
「ナギ君、ドミヌスに仲間がいるって言ってたよね。それっt―――――」
正面のヤマの言葉を遮った。
ここまで抑え続けていた怒気が漏れ出る。
「グローブ・Kに行ってからさ、僕ずっと監視されてるでしょ。どうやって僕が漏らすの?昨日もヤマと一緒に居たよね?僕を疑うのはいいけどさ、教えてよ。僕が情報を漏らしていたんだとしたら僕の敵は誰なの?僕はなんのために今回参加してるの?ただ旅をしているだけの僕の敵って誰?言ってみてよヤマ。」
ヤマは唇を噛んでいた。
「ナギ、落ち着けって。」
たしなめてくるダーガを気にせずヤマを睨みつけるナギ。
問い質す。
「黙るなよヤマ。はやく言ってよ。僕の敵って誰なんだよ。」
テーブルに置いた拳に力が入る。
叩きつけそうだった。
言葉を投げまくる。
「ヤマカミはどうなの?ダーガの所はかなりドミヌスから追い詰められてるけど、ヤマカミはそういうのじゃないでしょ?」
鋭い視線でヤマを見て言った。
「私t―――」
カミが口を開こうとするのを遮るダーガ。
冷静な口調だった。
「ナギ、ヤマカミはウチと繋がりが元々あったんだ。お互いで捌けなくなった仕事振り合ったり、仲間同士で交流もしてた。ここしばらくはウチがこんな状況…売上が下がってたり、他の地域でもいざこざがあったりするからウチもナーバスになっちゃっててあまりそういう機会がなかっただけで。仕事はこっちから依頼する事が多かったんだけど、丁寧なんだ。ヤマカミの仕事は。」
ナギには理解できなかった。
(もうどうでもいいよ。)
理解する気がなかった。
「グローブ・Kじゃないの?」
ナギの右に座るカミがぽつりと言った。
視線が集まる。
言い淀みながら返すダーガ。
「まあ…うん、そうだな。俺のミスだ。話さなければよかった。悪かった。」
テーブルに顔を近づける。
ルーピアが揺れた。
「旧い友人だからってさ、人ってやっぱり変わるから…。」
口を開いたヤマを睨みつけるナギ。
唇から鎖骨の辺りに視線を固定する。
(おまえ達は変わりすぎなんだ!)
「ああ。」
顔を上げたダーガはランタンを見ながら静かに呟いた。
「二日後の情報は、タリフのとこには教えない。俺たちだけで行こう。二日後の日が昇る直前。」
「ねえ、タリフに説明してた時も言ってたけどさ、なんで早朝なの?夜じゃないの?」
ヤマに視線を残しながらダーガにゆっくりと顔を向けて聞く。
目が合った。
「ミトハロは夜の方が賑やかなんだ。普段配達してるけど街にいる奴なんかは遊んでるから。朝方眠る事が多い。」
「ふーん。そうなんだ。僕、夜出歩かないから。」
ランタンを見ながらそう言ったのを最後に全員が少し黙った。
一階から笑い声が聞こえる。
痺れを切らしてダーガがナギに聞く。
「で、どっちから参加するんだよ。」
黙るナギ。
三人からの視線が纏わりつく。
揺れるランタンから正面に視線を移す。
優しい表情のヤマと目が合った。
「ごめんダーガ。僕、ヤマカミから参加するよ。」
見据えたまま言った。
「わかった。理由、聞いてもいいか。」
「アース…。サファに襲われた時に一緒に居た奴ね。仲良いんだ。当日参加するらしいから。」
一度右のカミを向き、ダーガに視線を移動させる。
ランタンを見つめたままのカミ。
ダーガはテーブルに視線を送っていた。
「よろしくね。ナギ君。」
微笑むヤマに反応せずにダーガに向けて話す。
「ヤマカミから参加するだけでチームに入るとは言ってなくない?ドミヌスに攻め込むのは一緒なんだから、同じ事だよね。」
「ああ、そうだな。」
ダーガはナギに顔を向け、力強くそう言った。
少し細目になりながらダーガに小さく頷く。
抗争が一気に現実味を帯びる。
二日後に迫った。
(僕にとっては好都合だ。はやくキューを助けたい。)
ナギは天板の中央で揺れる火を瞳に映しながら唇を噛み締めた。




