表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/78

第56話/卑しいアネット(2)/Limited_ Annette



アネットは横たわる人間達を見下ろしていた。

所々に血だまりが出来ていた。

横たわったまま動かなくなった男のポーチを平然と漁る。


(色々と頭の中で講釈垂れちゃったけど。殺人に限った話じゃなくて、相手が悲しむ事を無闇にするって位相ブレるよね。逆に不安定だから率先してそういう事するとも言えちゃうね。)


一枚の小さな薄い板を手に取った。


(やっぱドミヌスだよね。)


配達する際の手続きの証拠、証明だろうか。

有事の際の身元証明かもしれない。

薄い板には名前と所属が書いてあった。


(この人達、もう無差別に襲わずにはいられない精神状態だよねきっと。自分は世界に影響力があるはず。ってずっと不安なんだよね。目の前でそういう事を起こさないと、無力感や劣等感で頭がおかしくなっちゃいそうなんだよね。そういう思考と行動の積み重ねで自分を制御できなくなっちゃってるから躊躇いなく襲ってるんだろうけど。)


ミトハロに到着直後の日々の断片を思い出す。

男の頭の近くに板を放り投げ、魔法で燃やした。


(どうせ世界と関れるなら誰も悲しまずに相手が喜ぶ事をすればいいのに。怖いんだよね。拒絶されるかもしれないもんね。相手が本心から喜んでるって確認が出来ないから不安になっちゃうんだよね。怯えとか恐怖を感じさせる行動はそうはならない。だってこの人達自身がそれを日頃感じてるから。だから相手もそうなるはずだって想像がし易いだけ。自分が感じたものは信じられるのかな。自分が感じたものしか信じられない?歪んでますねえ。)


足に〝つよくなれ〟をかける。

男の頭に足を何回か踏み落とす。

動かなくなったそれから命乞いをされた気がした。


(私、襲ってきた相手の頭はできる限り潰す事にしてるの。貴方の親族や仲間が悲しむ機会すら与えない。それすら成立させたくない。死者への敬意って考え方すごく大切だと思うけど、じゃあ生者への敬意は?って思っちゃう。私、とっても卑しいからさ。)


少し笑う。

髪を掴んだ女、胸を揉んできた男。

開戦の合図となった人間達が横たわっていた。

近くに屈み、ポーチを漁る。

薄く小さい板を頭部に投げ置くと同様に燃やす。

しばらく燃える死体を見下ろし、女の頭に勢いよく足を踏み下ろした。


(私を殺す気はなかったんだからここまでするなって思ってる?私が大人しく裸になって貴方達を受け入れたら命まではとらなかったって言い訳したい?なんで自分が命を取られそうになった時だけしかそういう事言えないの?襲う以外にも手段は色々あるでしょ?仲良くなって自分をアピールして〝そういう仲〟になってからたくさんすればいいじゃん。でもそれが出来ないんでしょ?断られるのが怖いから。断られた時の自分を見つめる度胸すらないから〝大体勝てるでしょって自分が思える人数〟でわざわざ来てこういう事するんでしょ?大体勝てるでしょって自分が思える人数が揃わないと〝もう〟世界と関われないんでしょ?関われないなら引きこもってなよ!でも一人で引きこもる勇気すらないんでしょ!?刺激で恐怖から目を逸らしたいんでしょ!?なんなら出来んのよ!じゃあそれをされた私の恐怖はどうすればいい!?私そういうの他人にぶつける習慣ないの!どうすればいい!?結局自分達が恐怖に〝すら〟向き合えない弱い心だからって、感情を相手に押し付けてるだけでしょ!?こんなの!)


気づけば女の頭は赤いジャムになっていた。

呼吸が荒いまま男の方へ向かう。

手を翳して〝もえろ〟を声にする。

発火部分に薄い板を投げる。


(私がどこまで拒否したら諦めて引き下がってくれるの!?「やめて下さい」って言葉で言っても伝わらないじゃない!突き飛ばしてもわからないじゃない!一発顔殴っても向ってくるじゃない!それを見て私は「命までは取らない」って言葉をどうやって信じればいいの!?頭おかしいんじゃないの!?世界に関わりたがろうとする癖にあんた達の世界にはなんでいつもあんた達しかいないの!?ほぼ全滅して一人になった時にやっと引いてくれるじゃん!一人にならないと逃げる事すらできないんでしょ!?周りが負けたから自分が逃げても仕方ない!って。言い訳から始まらないと自分を確定する事も出来ない癖に!逃げるなら初っ端でしょ!魔法が発動する速さで大体わかるでしょ!相手の強さなんて!なんであんなにあんた達は弱いの!?なんでそんなに弱くて向かって来れるの!?〝つかむ〟じゃなくて〝なでる〟じゃない!なでたいの!?私を!そんなに私とそういう事がしたいの!?〝もえろ〟じゃなくて〝あたためろ〟じゃない!暖めてくれるの!?じゃあ四の五の言わずに黙って抱き締めてよ!その隙に殺すから!)


男の肩までが爆散したように無くなった。

脇腹を思いきり蹴飛ばす。

四人目の女の元へ向かう。

頭が冷えた。

思考のバランスをとるようにアネットは考える。


(あースッキリした。私は命そのものに向き合うってとても大事だと思う。命は大事。でも同じくらい相手の感情にも向き合いたい。死んだから可哀そうとか生きてるから大丈夫って命で線を引き過ぎちゃうと、素直に悲しんだり落ち込んだり〝出来る〟目の前の仲間に手を差し出せなくなっちゃう。あいつは死ぬべきだとか生きるべきだって勝手に頭の中に判断が湧いてくるのもイヤなの。)


面倒なので動かなくなった五人目の男の元に〝はなれて〟で女を飛ばした。

ポーチからネームプレートを投げ、纏めて燃やす。

感情なく頭に足を何度か踏み落とした。


(私、勘違いしてたかも。レイルを楽しんでたり、配達をしてるから魔法が弱いんじゃない。多分、貴方達はこういう事を常習的にやってるから魔法が弱い。きっとレイルを心の底から楽しんでたり、熱心に配達をしてる人達の魔法は強い。かなり特化型だとは思うけど。その特化は多分私よりも断然強い。気をつけないと。)


体の一部がジャムのようになったそれらのポーチを漁る。

地面に落ちているナイフが目に入った。


(あ、このナイフもらうね。)


逃げて行った一人の男を思い出す。


(報復あるよね。〝返り討ちにあった〟じゃなくて〝一方的に襲われた〟って報告するよね。〝死体を偶々見た〟かな?自分が可愛いもんね~。私も卑しいから自分が可愛い。わかるわかる。)


ポーチには一人三〇〇から七〇〇エンテが入っていた。


(きっとお金は追撃部隊が持ってきてくれる。回復の奴だけちょっともらおう。)


マナリーフを数枚口に入れる。

立ち上がり前に進む事にした。


胸を揉んできた男の体が視界に入る。

顔が歪む。

両膝の部分を燃やし、力いっぱい踏みつけた。

侮蔑表現いっぱいの言葉を叫びながらオーバースローで男の膝から先を空中に投げる。

空中のそれに〝はなれて〟を何回か当て、魔法の練習に使用した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ