表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/26

第12話/初めての反省会/RISA.pov


///ミトハロ宿屋 自室内///



自室に着いてだいぶ経つ。

アルセナよりも部屋は狭い。

どうしても頭にブローチが浮かぶ。

そんなに怖くはなかったけど現実感がなかった。

戦ってる時は驚いたけど。


でも〝姿が変わる存在〟を見て少しだけ安心した。

万が一自分が異形扱いされたとしても、

〝最後は魔女がある〟そう思うとほんのちょっと、本当に少しだけ気が楽になった。

同種殺しはいやだけど。


〝おまえ成長してから体が勝手によく動くだろう、きっと体だけじゃないな〟


ゴビポップの一言を思い出す。

あたしが成長した事を知っていたのは何故だろう。

言われた通り〝体がよく動く〟。

キレ、調子が良いとかではなく。

戦う時の〝間〟だったり〝剣の扱い方〟がなんとなくわかる。

狼型のモンスターと戦った時に感じていたけど、考えないようにしてた。

ゴビポップと戦った時に確信になった。


そもそもあんなに戦いの流れが〝見える〟わけがない。

全然通用しなかったし一発も当たらなかった。

でも体が勝手に動いていた。

次に何をすればいいのかなんてわかんないはずなのに。


あたしが怖いのは〝思考〟。

あたしじゃない誰かがいるみたい。

今までのあたしでは考えつかないような事を言い出したり、

戦いの中で頭が働き出す。

どろついた感情もそう。

自分が怖かった。

あまり戦いたくない。

狼型のモンスターが過ったので振り払うかのように宿から出た。

賑やかな街だ。

建物の壁面や地上を滑ったりする人を見る。

あれはなんなのだろう。

足元はアルセナみたいに石造りではない。

土、砂だ。

建物も木で作られている気がする。

何かをしないと嫌な事を考えそうだったので


あたしは露店でハイビスカスのアクセサリーを人数分買った。

アネットが心配。

少し散歩すると二人に会いたくなった。

宿に戻り、食事に誘う事にした。





///ミトハロ とある食堂///


開放感のある平屋造りの食堂。

宿からは近い。

疲れたので適当に食事を済ませようという事に。


ナギは少しスッキリした顔つき。

アネットはあまり元気がなさそうだった。

大体のミトハロの位置を調べてくれていた。

〝ミトハロ〟は〝ウエスタール大陸〟の南方面。

アルセナがある〝ニルディーノ大陸〟に戻るには大陸を横断するか海を越えないといけない。


「これ、その辺に売ってたのさっき買ったの。頭につけようよ。」


あたしはハイビスカスを配る。

アネットは微笑みながらつけてくれた。

ナギもつけてくれている。意外。


「ナギもつけてくれるの?」


「うん、いいよ。」


いくつか取り留めのない雑談をし、

あたしは椅子とテーブルの距離を調節しながらナギに話かける。


「ナギ、なんであんなに魔女に興味持ってたの?」


「あんなのがたくさんいたら嫌だったから。」


「ふーん、まあたしかにね。」


外を向き、白身魚を頬張りながら答えるナギ。

その隣、あたしの正面に座っているアネットにも聞いてみる。


「アネット、〝真理〟って何?なんか聞いたらいけない事とか重大な情報とかそんな感じ?」


アネットは少し考えこみ、ゆっくりと話す。


「師匠の受け売りで私も勉強中ですが〝普遍的な事実〟といいますか。

〝本質〟って言ったらいいんでしょうか。

私はお魚やお肉が好きとか、そういう個人的な話ではなくて

もう少し俯瞰した〝全体的な話〟です。」


距離を感じる話し方だった。


「僕の質問を止めてくれた時、何が危なかったの?」


ナギがアネットを向いて口を挟む。


「ナギ君の質問はたしか〝魔女の見分け方〟だったと思います。

私あの時取り乱してて…違ってたらごめんね。

ブローチはそれに対して〝問い〟で返してきていましたので、

次のやりとりで〝魔女は魔女なのだ〟とか言われたらもうそれが真理です。」


「いつの時代も〝魔女のあり方〟は変わるかもしれないから、

それが魔女と言われるなら魔女だ。って事だよね。」


ナギは何かを掴んでいるような言い回し。

話、わかってるの?


「はい。近いです。もう少し細かく言うと〝魔女にあるべき姿はない〟って感じです。

目の前で消えたら魔女じゃないとか、世界に一人だけになった魔女は魔女と呼ばないみたいな。

そういう事ではないですよね。

ある程度、ざっくりした定義…条件みたいのはもちろんありますけど。」


言葉を選んでアネットは続ける。


「本来の〝真理〟ってもう少し意味が広いんです。

〝世の中に変わらないものはない、常に変わっていくものだ〟とかはよく聞きます。

新しいものが発見されたりしたら世界のルールって更新されるじゃないですか。

それが〝修正されずに残り続けている記録〟…認識って言ったら分かりやすいかもしれません。」


「〝あたりまえの事〟って感じ?」


あたしも会話に参加する。


「そうです。ただ、受け取り方が人によって全然違うのが怖いところなんです。

仮に〝人生とは挑戦そのものだ〟っていうのが真理だったとします。

〝人生とは何か?〟というテーマを探している人がその真理に辿り着いたら…

〝腑に落ちたら〟って言ったらいいんですかね。感涙ものです。

でもナギ君はどう?仮に〝人生は挑戦そのものだ〟っていうのが真理だったとしたら?どう思う?」


「あたりまえに嫌です。」


アネットが少し微笑む。


「今の〝聞きたくもない真理〟で片腕がふっとんじゃうかも。」


ご飯中にすいませんとアネットが補足した。


「どうしてそんな難しい事知ってるの?」


ナギはテーマを追いかける。

あたしはチーズを口に運ぶ。


「魔法って〝心の在り方勝負〟ですので、その兼ね合いで師匠から少しだけ教わりました。

人はなんでも〝勝手に意味づけてしまう〟から、

色々な事に囚われるなよって感じで

真理っていうキーワードを師匠の口から聞いた事があるんです。」


アネットは手元のサラダに視線を向けて続けた。


「心がブレたらすんごく弱いんですよ。魔法って。フラットでいないといけない。

執着を〝自分から強化・補強している状態〟は最弱です。

もう二度と強くなれないかもしれないくらい弱くなる。

もしかしたら強くなりたいなんて状態に戻ってこれないかも。

〝真理〟って心をフラットにする目印のようなものでもあると思います。」


「執着?補強?」


あたしは座り直しながら聞く。


「それを〝失うと自分が自分じゃなくなる〟っていう見方をしてしまう事が執着です。」


「そんな当たり前の事、見失わなくない?別に大丈夫じゃない?」


自分を見失うという状態がよくわからない。

あたしがおかしいって考えてるあたしはあたしじゃないの?

見失うわけなくない?


「それが、心の状況によって難易度が変わるんです。俯瞰している内は簡単です。ハマると気付けません。」


「どうして?」


「自分自身で言い聞かせるからです。

これが〝執着の強化・補強〟と言われていて厄介なんです。

これは執着じゃない。絶対にこれは自分は悪くない。って感じで言い聞かせます。

言い聞かせてる時は、執着という単語すら頭に浮かびません。

ひたすら自己正当化が始まります。自分は悪くない。って。

〝自分には何ができたか?〟っていう考えに絶対に至らないんです。ひたすら責任転嫁が始まる。」


「僕それ、しょっちゅうだよ。」


冷めた目でナギがオレンジジュースを口にする。

アネットが優しく微笑んだ。


「すぐに振り返って素直に受け入れられるのは問題ないよ。

反省出来る状態なら問題ない。

〝補強が弱い〟分、すぐ戻ってこれる。

周りにもしっかり関わっていけるの。」


ナギ君正直だね。

そう優しく声を掛け言葉を重ねるアネット。

なんかこの二人急に仲良くない?

まあアネットが元気ならいいけど。


「よく師匠が言ってたのは〝好きな人〟について。

好きだから離れられないんじゃなくて、

離れた瞬間に〝自分の形が崩れるから離れられない〟のが執着。

ってよく例えで言ってましたね。」


アネットは涙声になる。


「えっ、大丈夫?」


リサは布を出す。


「ごめんなさい、大丈夫です。」


「ブローチに言われた事がスルスルわかる気がする。ありがとう。アネット僕のパン少し食べる?」


ナギには理解できたようだ。


「ううんいらない。」


笑いながら目尻を布で抑えていた。

少年がぽつりと呟く。


「ブローチが言ってた揺らぎって、ブローチからの目線って事?」


「そう、揺らぎ。思考や感情の状態が固定されずにふわふわ動いちゃう事。

それが一番魔法では弱い。ブローチが一番好きな状態。

本人は揺らいでないって言ってる状態でも

周りから見たら…揺らぎを知ってるブローチからしたら違うって事。

私も師匠からそれはよく言われた事があります。」


勇者の剣の時とは違って

ナギはすごくブローチの話を聞いていた。

それを理解しようとしている。

こんなに話すとは思わなかった。

何があったんだろう。

あたしには何を話してるのかあんまりわからない。


「あ、じゃあ揺らぎって認めちゃえば揺らぎじゃなくなる?」


顔が腫れた少年は止まらない。


「そう、すごいね。

揺らいでるって素直に認めるって事はその状態を認識する、

ある意味自分から固定する事だから、本来の揺らぎって意味からは少し離れるね。」


「ふーん。」


話している事があまり理解できなかった。

ナギはたしかにわかってるみたい。

済んだ食器を下げてもらいあたしは深呼吸した。

アネットと話すタイミングが被る。


「あっごめん、アネットからどうぞ。」


アネットに譲る。


「二人とも、なんかこの街で予定ある?お金とか大丈夫?」


「特にないけど…どうしたの?お金もあの宿泊費なら大丈夫だと思う。」


あたしはナギを向き、当てにする。

食べにくそうに腫れた顔で咀嚼してる。


「ちょっと考えたい事があって。時間がほしくって。」


アネットがそう言うとナギは大きく頷いていた。

おまえは休みたいだけだろう。


「うん、全然いいよ。ブローチはきついよね。反則だよあんなの。」


あたしはアネットと顔を見合わせた。


「ね。ありがとう。次はリサの番、どうしたの?」


口を挟む間もなくアネットが聞き返す。


「あの…大きな声では言えないんだけど、あたし、実は回復したら体が成長しちゃったんだよね。」


アネットが眉間に皺を寄せる。

ポニーテールが揺れた。


「成長?」


「実は今、十四歳なんだけど、十七歳とか十八歳とかくらいになっちゃってて。」


ナギが肩をぴくりとさせる。

何か言いたいことあんの?


「回復って魔法でって事だよね?」


アネットが掘り下げてきた。

ほっとした。


「うん、ナギに〝いやすね〟してもらったら成長しちゃってて。

すんごく光って吐いたりして大変だった。」


ポニーテールの揺れが止まる。

ナギは気まずそうな顔。


「隠してたわけじゃないんだけど、昨日はさすがに言いにくくて。なんか知ってる?」


「うーん、全然わからない。ナギ君は平気なの?」


アネットがナギを向く。

頷く少年。


「手を翳し続けたのが問題なんじゃない?って話をナギとしてたんだけど。わからなくて。」


「翳し続けたらずっと発動するわけでもないと思うなあ。」


アネットは視線を上げる。


「ブローチにかけた時は、発動が止まってた。

体調不良になったから魔力は切れたと思う。」


ナギが口を開いた。


「あ、だからブローチに〝いやすね〟を使ってたの。

間違えちゃったのかと思ってた。そういう事だったんだ。」


あたしがゴビポップと戦っていた時の事だろう。

アネットはわたしに視線を戻して続ける。


「リサ、それから体は大丈夫?痛みとか、動かしにくいとか。」


「逆に動きすぎちゃうくらいかな。」


唸り何かを考えるアネット。


「今から試しにやってみる?」


ポニーテールが揺れる。

外に視線を移していた。


すぐやりたい。

身を乗りだして伝える。

三人で足早に店を出た。

宝石のタトゥーをした何人かの人達とすれ違った。



///ミトハロビーチ///


すぐさまテストがはじまった。


ナギが傷のないアネットの腕に〝いやすね〟を唱えるが無反応。

自分の頬にかけると一応ぼんやりと反応はしている。

光はすぐ消えた。


ナギが〝こおれ〟を唱えるとそんなに大きくない氷が目の前に出来る。

無表情で見るアネット。


「特におかしいところはないね。」


即座に座礁する〝成長問題〟。


「リサにかけるのは怖いよね?」


ナギは首を縦に振っている。

たしかにそれはあたしも怖い。


「じゃあ試しに私がかけてみるね。」


アネットは手を翳しあたしの脚に〝つよくなれ〟を唱える。


「なんかあたしのよりも強い気がする…。」


砂の上を跳ねたり走ったりしてみせるが

特に劇的な違いがわかるわけではない。


「そうなんだよね~。

魔法って本心と一緒で自分にしかわからないんだよね。

私がリサよりも〝つよくなれ〟を使い慣れている可能性があるし。

相対的に確認しにくいんだよ。」


たしかに。

うまく出来てる。


〝もしかしたらあたしの体がかかりやすい体質〟という可能性で終わった。

その時の想いの強さやエーテルゾーン(エーテルライン・魔脈)次第で効果が上下ブレする時はあるが

〝魔法がかかりすぎちゃう〟といった例は一切聞いた事がないらしく、

アネットも悩んでいた。


ただ、何やら冷静だったので気は楽になった。

もっと一大事的なリアクションを取られると思ったのだ。

気を使われているだけかもしれないけど。


再現性と原因が曖昧だと言われて、

今後のナギからのあたしへの使用は止められた。

あたしはアイテムか自分で回復せねばならない。

ナギは何も話さなかった。


一通り説明を受けて宿に戻る。

その日はベッドに横になってからの

記憶がなく泥のように眠りについた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ