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ナギとリサの大冒険  作者: あ★い★う★え★お
【桃薔薇の部】第一章
120/132

第111話/初めての快感/Limited_NAGI


胸に布の擦れる感覚。

膝で押さえつけられ、頬の両端が左手で潰されている。

目の前にはババア改め、老婆のブローチ。

卑しく上がった口角。しかしどこか退屈そうな顔つき。

その横で、鋭く尖ったナイフのような右手が光る。


(生きたい生きたい生きたい生きたいじゃなくて!考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!)


手足はばたつかせなかった。意味がない。

〝まぼろし〟かもしれない。しかし、現実かもしれなかった。

腰の辺りにある掌を床に押し付け、その反動で腰を逸らせようと力を入れる。

重すぎて動かない。

スリムな腰つきの老婆の重さではない。そう思いながら、目を閉じて歯を食いしばる。


せめて振りかぶってきている右手は避けようと、肩から上を左右に振る。

その度にブローチもゆらゆらと右手を動かし、狙いを定めてくる。

避けられる気がしない。

優しく微笑むと、老婆から二十代に変化しながら言う。


「おいガキ。前みたいに、抵抗しないのかい?足ばたばたさせてたわよね。あれ、けっこう可愛かったんだけどなあ。」


しゃがれた声があっという間に艶やかな声になる。

白いタンクトップに太めのズボン。金髪がちらりと見える。

溢れかけている大きな胸で表情が見えにくいが、声はどこか弾んでるように聞こえた。


「〝どれ〟で殺されたいの?これ?お兄ちゃん。」


ブローチが満面の笑みの少女になりながら、自分の顔を指差して言った。

肩までの長さの黒髪。真っ黒のワンピース。


(こいつはやると言ったらやる!ミトハロの人間とは全然違う!殺される!考えろ!)


自分は死ねると豪語したが、殺されたくはない。

少年は考える。

ブローチは、きっと死をなんとも思っていない。

さらに、会話なんてする気はないだろう。命乞いも意味がない。

ナギ自身が存在する事で、彼女…彼だろうか。魔女に生じるメリットなんて、到底思い浮かばない。


「おぁ!」


つい叫ぶ。

〝あ!〟そう発したつもりだった。

手に握り潰された頬で、文字の輪郭が歪む。

サファを右手の人差し指で差し、首を出来る限り振る。まん丸くさせた目を向ける。

少年は生きるために、たった一文字を叫んだ。

下品な爆笑が上から聞こえてきたと思うと、しゃがれた声が降ってきた。


「最期がハッタリかい。なあんも起きないねぇ。じゃあさようなら。またどこかでなぁ、ナギィ~。」


老婆のブローチは笑顔で淡々とそう言った。

鋭く変化した右手がぴくりと動いた瞬間、視界の外から乾いた物音が聞こえる。


その音が最後まで聞こえるのが早いか、ブローチが反応するのが早いか。

目の前の老婆は鋭い眼差しをサファに向けていた。

ナギも顔を向ける。

思わず短い声が漏れ、目を剥いた。

動けなくなっている周囲の人間からの視線を感じる中、サファだけを見た。


壁に背中が衝突したのだろう。

壁際に寄っているサファ。

両肩から先が光に包まれ、ゆっくりと生えてきている。

腫れている瞼、潰れている目も元通りだ。

顔にべっとりとついていた血も〝なかった事〟になっている。綺麗さっぱり消えていた。

口が半分開いたままの恐怖で歪んだ表情で、ブローチを見つめている。


ナギがおそるおそる、体に乗っているブローチに顔を戻す。

口角が一瞬上がった横顔が映った瞬間、体から重みが消える。


即座に顔をサファに向ける。

覚悟していたが、ブローチは速かった。

道場を横断している穴の向こう側にいる。

すでにサファの頭を魔法で掴んでいた。


「サファイア?でも傷がないよねえ。」


怪訝な顔つきでぽつりとそう言った。

やがて、徐々に笑みが広がっていく。

ブローチは老婆から十代になり、笑みが顔全体に広がりきると、大笑いし出す。

濁音交じりの下品な笑い出しだった。


「何百年ぶりだろう!サファイア!元気だったかい?やっと会えたなああ!ずっと探してたんだ!元気してた?」


十代のブローチは黒髪のポニーテールを揺らしながらそう言った。

声は若いがたしかに中身はブローチだ。

そう思わせるような威圧感のある無機質な声。


ナギは立ち上がりながらブローチに視線を這わせる。

縫い目が見えない布で出来た、紺色の衣服を着ている。

後頭部から背中の部分にフードが垂れている、鎖骨の辺りから、紐がだらんと二本伸びていた。

独特の衣服だった。

タイトなズボンに柔らかそうな短靴。

動きやすそうだ。

変わった服装を見終わった時、震えたサファが言葉を返す。


「ブローチ、はやく殺してくれ。恥ずかしくて堪らない。」


サファの足が床から離れていく。

ブローチが魔法の帯を高く上げていた。


「自戒呪ね。初めて見た。」


〝じかいじゅ〟たしかにブローチはそう言った。

にたりと笑うと、近くにいるドーゲンとミカが何故か吹き飛んだ。

手を腹の部分にあるポケットに押し込み、顔を上げると、目尻を緩ませて大声で言葉を放つ。


「魔女はなあ!サファイア!生きる事よりも死に方を重んじるものなんだ!下等な人間に紛れて!自分を失ってまで生きる気持ちを教えてくれよ!」


犬の姿をしたゴビポップが、舌をだらしなく口から出しながら跳ね、ブローチに近づいた。

立ち上がるようにして、大笑いしている女の太腿に前足を乗せ、交互に掻いている。

サファに視線を残して笑っていたブローチは、それを片手でいなそうとしていたが、やがて観念するように犬の顔を見る。

一言呟いた。


「〝はがせ〟」


ブローチがため息交じりにそう言うと、犬から言葉が飛び出した。


「ブローチ。<バb…オネーサン!>」


一斉に視線が声の元に集中する。

ブローチの太腿に前足を乗せたまま、ダーガに顔を向けている犬から声がした。


「あいつだ。〝食ってる〟。<アタリ!>」


男とも女とも言えるような、何か複数が混ざっている声。

冷ややかな、背骨を掴まれるような低い声。

喋り終わりには、一言だけ明るい声。

たしかにゴビポップだった。


話しかけられたブローチは老婆に変わっている。

白いシャツ。タイトな黒のスラックス。黒い短靴。

首元に蝶ネクタイをつけている。こんなに足が長かっただろうか。そう思った。

ゴビポップの一言に目を丸くしたブローチは、やがて恍惚とした表情に変わっていき、ナギを見て叫んだ。


「役に立たなそうでも生かしておくもんだなあ!ナギィ!ノードもぶっ壊してくれて、探しているウジ虫も見つかって。サファイアまで見つかるなんてねぇ!千年生きていて今日ほど楽しいと思った事はないかもしれないなあ!」


ブローチが口を開くたびに皮膚がびりびりとする。


「おめでとさん。クソガキ。今日はあんたの勝ちみたいだねぇ。」


ヒッヒッヒと笑って、そう言い加えた。

その言葉を聞いた瞬間だった。


びりびりとしたものが皮膚から体の中心を駆け巡る。

後頭部と頭のてっぺんを往復したかと思うと、背骨、股の間。

時折足先にびりっと痛みが伝わった。

体のどこかから、羽が生えるかと思う程の違和感。

さっきまであれほど煩かった目の前の人間が黙っている。

その様子を目にする度、びりびりとしたものが強くなる。


胸が何か軽いもので満たされていき、宙に浮きそうだった。

足から力が抜ける。

堪らず両膝をついた。

目の前の人間達を見ているはずなのに、自分がどこから見ているのかわからない。

肘を床につき、俯く。

上下の唇を押し隠す。そうでもしないとにやけてしまいそうだった。

しかし見たい。目の前の人間達を見たい。

だが見たくない。

びりびりとしたものを抑えられない。

呼吸が荒くなる。目を瞑る。

時折何かを確かめるように目の前の人間達に視線をやった。

ゴビポップがダーガの近くへにじり寄るのが見えた。

ブローチはサファに話しかけている。


「おまえ、人間になってもこんな事してんのかい。」


「殺してくれブローチ。頼む。もう無理だ。恥ずかしい。」


諦めた表情で、顔を赤らめてそう言った。

腕はだらんと垂れ下がり、視線は床に漂っている。時折唇が歪んでいた。


「名前、言ってみな。そしたら、ひと思いにやってやる。」


「イヤー・サルファ・アミラだ。知ってるだろ。」


サファの口調が全く違う。

しかし、それどころではなかった。

体を這うびりびりとしたものが収まらない。


「ところで、何が恥ずかしいんだい。ミラ。」


長身の老婆が何か囁くと、サファの両腕が爆ぜた。

赤と青の飛沫が舞う。

周囲の人間達の唇がぱくぱく動いているのが視界に入る。

サファは喚かなかった。

苦悶の声を少し出し、口を開く。


「人間に、負けた事、だよ。そこにいる、ガキに全部やられた。〝ゼロ〟だ。そいつは。」


老婆が十代になる。黒髪のショートカット。

ゼロなんて、懐かしい言葉だね。ぽつりとそう言うと、手を叩いて笑い出す。


「あーはっはっ!ミラ!恥ずかしい恥ずかしいって言うけど、アンタは元々そういう奴だぞ!弱いし!卑怯だ!ルビーの時だってそうだったじゃないか!覚えてないの?」


両方の掌を天井に向け、身体の前に出して言った。

サファの目と唇が歪む。

ブローチが空いた穴を飛び越え、膝をつくナギに少し寄った。

何か囁いたと同時に、リサの腰にあるラグナロクが鞘から抜ける。

ブローチの掌に飛び込んだ。

キャッチした勢いで肘を伸ばす。

風の音がびゅっと聞こえた。

剣先が床に向く。

十代のまま微笑み、刀身を眺めながら声を張る。


「やっちゃった!?ミラ!言っちゃった!?みんなでミトハロを守るのだー!ってやっちゃった?うわはは!」


肘を曲げ、ラグナロクを肩に担いでいる。

びりびりとした感触が落ち着いてきた。

ナギは立ち上がると、ブローチから少し距離を取る。


「何が、セグイドからミトハロを守るのだー!だよ!」


片手を腰に当て、ラグナロクを高く突き上げて叫ぶ。

楽しそうな顔。

天井に伸びる剣先。


「ぎぃゃははは!せめてウィキアークくらいになれよ!ミトハロて!」


剣の柄から手を離したのか、剣先がぐるんと回転しながら落ちる。

ブローチの真横の床に刺さった。


「おまえはな、ミラ。別に魔女の時からそんな感じだろ?そんなもんなんだおまえは。人間になった自分を見て恥ずかしいって思ってんだろうけど。あんま変わんないよ。」


くすくす笑うと、床に開いた穴を飛び越えてサファに近づくブローチ。

魔法の帯で宙に浮くサファ。

その目の前に立つ頃には、ブローチは長身の老婆になっていた。髪が長い。


「内容は。」


感情が抜け落ちたしゃがれた声でそう言った。

サファは目を細めている。


「おまえの自戒呪だよ。ミラ。内容は。」


サファは眉を上げ、少し頷きながら話し出す。


「敵から攻撃されると入れ替わり、男の時は最強になるが魔法が使えない。女の時は最弱になるが魔法を使える。それぞれ、特有の言葉遣いしかできない。今はもう解けている。なぜそうなったのか、なぜ解けているのか、その辺の理由はわからない。」


両手を腰に当て、背伸びしながらブローチが言う。


「最強に?負けたんだろ?あのガキに。〝ゼロ〟だなんて言っても、〝ゼロ〟は強さに関係ねえだろう。バカだね。」


しゃがれた声が腹に響く。

真綿で締め付けるような圧を感じる声。

言い終わりに、ナギの方を見て顎をしゃくった。


ブローチからサファに伸びた魔法の帯が全く消えない事に気づくナギ。

ノードを吸収した自分であっても、もう切れているだろう。そう思っていると、サファが口を開いた。


「いいや。たしかに最強だ。しかし攻撃が出来ない。」


サファにしては、低く冷静な声だった。

ブローチから笑いが漏れる。

伸ばした背が腰から前に折れていた。

十代〝で〟噴き出した。

黒髪ポニーテール。

タンクトップにズボン。ラフな格好だ。

弾んだ声で言う。


「あんたね、それ最強って言わないよ!使えない力持ってて最強っていうのあんただけだって!それ、最弱って言うんだよ!ほんと変わってないね!伴ってないのに〝言う〟!ひとつひとつの事実だけを積み重ねて、関係性を無視して事実のみ大げさに言う。たしかにアンタはミラだ!サファイアだ!どっちでもいいか!ははは。」


諦めたような顔つきで言葉を返すサファ。


「もうわかった。さっさと殺してくれ。疲れた。自戒呪なんて使わずにあのまま死んでおけばよかった。記憶が戻った今は、人間の頃の全ての言動が痛々しい。鳥肌が立つ。気持ち悪すぎる。記憶が戻るなんて聞いていない。」


サファは道場を横断している穴を顎でしゃくって続ける。


「その、そこにある線みたいに開いた床の穴よりも〝コッチ側〟にいる自分が我慢ならない。はやく殺してくれ、ブローチ。」


「まあそう言うなよ。」


いつの間にか老婆になっているブローチが言う。

にやりと笑う横顔が見えた。


「ミラ。アタシゃね。アンタの事、買ってんだ。アタシも自戒呪なんて初めて見たしねえ。」


眉を上げるサファに背中を向けるブローチ。


「ルビーの命を懸けたからとは言え、もうとっくに最強になってたアタシから逃げて。今日まで生き延びたんだ。どんだけ無様だったとしてもね。生きる事は蔑まれるべきじゃない。立派な事だよ。」


しゃがれているが圧が抜け落ちた声。

老婆の優しい声。

サファの表情が解ける。


「組もうじゃないか。組もうって言ってもアタシが一方的に使役する事になるだろうけどね。人間を滅ぼそうか。むかついてるんだろう?おまえも。」


表情なくナギを見るブローチと目が合った。

掌を翳すと、床に刺さっているラグナロクが飛び込んでいった。

顔も向けずに掴んでいる。

サファは顔をはっとさせ、みるみる内に表情が華やいでいった。

ナギを見て嬉しそうに声を張る。


「ああ!いいぞ!ブローチ!やろう!〝恥ずかしい私〟とは言え、そいつにされた数々の行いは仕返すべきだ!生きるよりも苦しい!そういう類の苦痛を味わわせよう!」


ヒヒヒと笑うブローチ。

ナギは精悍な顔つきで、カランビットナイフをカバーから抜く。

鼓動が速くなる。

大きく呼吸をした。

来るなら来い。そう思った。

自分の膝が震えている事にも気づかない。

それを見ながら、目を丸くしたブローチが続ける。


「そうしようミラ。セグイドもウィキアークも、調子に乗ってる奴らばかり。この際だ。あんたがウエスタールを見るといいよ。」


ふと笑みが零れたかと思うと、サファの帯がふわふわと下がっていくのが見えた。

回転させてくる。そう予想した。脹脛に力を入れる。


「おお…!そうしよう!人間を支配しよう!ノッた!やるぞブローチ!使役だろうがなんだろうが構わない!」


鼻息荒くサファが言った。

〝つかむ〟の帯はさらに下がり、床に膝をついていた。

気づいてないのか、力なく膝を折っている。

今にもサファを掴んでいる帯を回転させ、当ててきそうだった。

ナギの頭に〝はなれて〟がちらついた瞬間。


赤い髪の少女の後ろ姿。

サファの顔面に拳を振り抜いている。

剣がサファの腹に刺さっていた。


目の色が困惑で満ちるサファ。

言葉ではない何かを叫び始める。

様々な母音が、途切れ途切れに飛び出していた。

拳を振り抜いたのではない。下顎を捥ぎ取ったのだと気づく。

赤い髪のおかっぱ頭の少女が、手に持っている顎を床に捨て、声を出さずに手を叩いて爆笑している。

サファの途切れ途切れの母音だけが、道場に不気味に響いていた。

やがて落ち着くとブローチが話し始める。

笑い終わりでひぃひぃ言っていた。


「アンタ、ほんと変わらないね。ミラ。あんまりにも、変わって、ないから、なんか嬉しくなっちゃった。嬉しいんだけど。ルビーが不憫でたまらないよ。」


サファに背を向けてブローチがそう言った。

腕を体の横に伸ばす。

サファの腹に刺さっていたラグナロクが、掌へ勢いよく飛び込んだ。

背中から飛んできていたが、目も向けずに柄を握るブローチ。


掴むと同時に、器用に肘から先を使い、剣先をくるくると回している。

村を訪れていた行商人の見世物のようだった。

しかし、それとは違い、ブローチに集中している様子がない。

そういう扱いに慣れているのかもしれない。生きているような動きをする剣先に見惚れながら、ナギはそう思った。

青と赤が交じり合った液体が、少女の頬に飛び散っている。

白のワンピースが真っ黒なドレスにぱっと変わる。

母音だけを叫ぶサファの悲痛な声が道場に響いていた。

頬を涙がつたっているのが見えた。


「はぜろ」


目も向けず言い放った少女の後ろでサファの上半身が飛び散った。

赤と青の液体が腰の辺りから噴き出している。

下半身がだらりと床に倒れ込んだ。

即座にゴビポップが跳んで近寄り、犬の状態で大きく口を開ける。

サファの下半身を飲み込んでいた。


悲鳴と驚きが混ざった短い声が道場に響く。

〝だまれ〟ブローチは辺りを見回しながら、再びそう声にした。


ナギは表情を変えずに、カランビットナイフを静かにカバーにしまう。

ブローチは目を細め、その様子を訝しげに見つめていた。


やがて目を切ると、ラグナロクの柄を掌に立てる。

器用にバランスを取りながらダーガに近づいた。

動くなよ。動くなよ。揺れる刀身を見ながらそう言っていた。

ダーガの表情が一瞬曇る。

倒れかけた剣を二の腕の上でくるっと回し、肘で跳ね上げて空中で回転させた。

ぶんどるように柄を握ると、少女のままで、悪戯に笑いながら口を開く。


「おじさん。それ、コントロールできないでしょ。気づいたら来てるよね多分。どこで知ったのかわかんないけどね、コントロールするもんじゃないよ。それ」


なんの事を話しているのか全くわからない。

少女は目尻を緩め、くすくすと笑っていた。

ダーガはブローチを睨んでいる。

落ち着いてるな。ナギはそう思った。


「ま、後で殺すとして。」


言いながら振り向くブローチと目が合った。

両方の掌を腰まで上げ、数歩後ずさるナギ。

困惑を浮かべたリサと精悍な顔つきのナギを交互に見ると、ブローチはにたりと笑ったのだった。

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