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2-19 『謎の脅威と、死のタトゥー。』

「——必殺っっっ!!!!俺のヴォイドソードで、全員無に消えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 一度ドライバーに納刀し、再び抜刀する。手に持つ黒剣、ヴォイドソードには根本から剣先まで炎が宿り、その炎で全てを無に帰す。


「——戦闘に暑苦しさなんていらない。スマートにソートを操り、美しく責務を遂行する。それが優雅なる真の戦士よ」


 機械的な剣をサファイアブレスレットと連動させ、刀身に蒼いオーラを纏わせる。静かに、そして一瞬で敵を絶ち、静と動の調和を図る。


 そう技を構える剣士と戦士へと向かいくる、数体のお尋ね者達。これまでの人間達のように、また突進で胴の骨を砕けば動けなくなるだろう。そう思い、勝負を仕掛ける彼らの身体は……目にも止まらぬ斬撃に裂かれ、即座に溶けて蒸発し、瞬時に粒子の霧と化してしまった。


「……すごい、これがオウマとユカリの能力……てか、ソート?って、やつなのか」


 その横で一体のお尋ね者を棒で倒していたカナデは、その強力な破壊力と爆風に目を丸めていた。

 これが、アーバンエッセンシアのメンバーの持つ能力、生者の『未来を想い浮かべる力』の具現化、正式名称『ソート』。新宿組の二人の勢いに、六本木組の二人も続いていく。


「お〜〜っ!!オウマ君もユカリちゃんもちょ〜〜〜カッコいいっ!!まるで本物のヒーローみたい!!よ〜〜し、私たちも負けてらんないね、メグミちゃんっ!!」

「う、うう、緊張、するけど……私も、全力で街を守って見せるよっ!!」


 迫り来る敵を前に、メグミは普段とは違って、アーバンエッセンシアのメンバーとしての、確かな意地を見せようとしていた。震えていた瞳をピタリと止め、息を整え、そしてその手に発現させたのは、一本の『宝玉の杖』。


「こ、凍れ……厳かなる現世の茨となり、死せし魂達を捕らえよ!!」


 一切のおふざけを取り払った姿は、紛れもなく世界を守る者そのものだった。詠唱と共に光る杖を地面に突き立てると、自身の周囲に無数の氷の蔓が現れ、目の前のお尋ね者達を締め上げて拘束する。


「今だよ、アツミちゃん!!」

「りょーかい!お任せあれにゃ〜ん、メグミちゃん!!」


 そして、動けなくなったお尋ね者達へのトドメとして、アツミは自身のスマホのカメラレンズを向ける。ソートは必ずしも物質に限るわけではない。スマホ内のAR写真アプリ『WONS』を起動し、彼らを画面に映し出すと、


「行くよ〜〜っ……まとめて〜、一気にぼ〜〜〜っ!!!!」


 可愛い絵柄の炎のシールを画面に反映させ、彼らの周囲に設置する。すると、レンズ越しの現実世界でも同じ現象が起こり、お尋ね者達は実際に、本物の業火に焦がされていく。

 溶けない氷に囚われ、消えない炎に燃やされ……派手さに傾倒した新宿とは異なり、華やかと残酷さを兼ね備え持つのが、花の六本木アーバンのメンバー達の戦術だった。


「か、カッコいい……なんか私、周りに比べると、すっごい場違いな感じしてくるなぁ……」

「ひょっとしてワラビのソートって、手に持ってる、そのマイクスタンド?」

「そ、そうなんだ……私は小さい時から、ずっとアイドルのことしかなかったからね。まあ、歌も踊りも苦手だし、殴ることしかできないけど、そこはカナデ君とお揃いだね?」

「な、殴っ?えと、そ、そうなの?って、来た!」


 そうして新宿、六本木が猛攻を繰り出すも、まだまだ敵襲は続く。

 その中で、一人だけ何の尖りもなく、ただ金属の塊で殴り、敵を吹き飛ばしていくのがワラビだった。その様子は、まるで釘バットを持つ脳筋のよう……と、彼女からカナデは新たなアイデアを思い浮かぶ。


「そうだ、棒の先端にこうやって……よしっ!」


 趣味ではないが、前に少し暴力的な漫画に触れた甲斐があった。棒にスプレー缶のノズルを向け、ギザギザを表面に描いて武器を装飾する。試しにこの状態で敵を殴ったところ、通常よりも遥かな傷を負わせることが出来た。


「うおっ、結構いい感じかも、このトゲトゲ棒」

「わっ、カナデ君もすごいね!この前の空の道といい、そのスプレー缶って自由に物を生み出せるの?」

「まあ、赤いインクを使って、色々と物を作れるのが俺の能力で……って、危ないワラビ!!」


 だが、戦闘中に気を抜いてはならない。ワラビの背後に回り込んでいた一体が、無防備な彼女へと迫り来ようとしていた。

 咄嗟にスプレー缶を投げようとするが……その直前に大剣がねじ込まれ、迫っていた一体を一刀両断する。相棒の窮地は、絶対に自分が救い出すと、そう決めていたのだ。


「ふっ!……全く、よそ見は禁物よ、ワラビ」

「ユカリっ!ご、ごめん……ありがとう」

「礼なら、言葉じゃなくて結果で返せばいいわ。ほら、次が来るわよ」

「う、うん……分かった……」


 ユカリは、あくまでユカリなりにワラビを鼓舞する。ワラビは元から、そこまで戦闘が得意ではない。圧倒的にユカリとオウマとは戦力面の差があるが、ワラビはワラビなりにでも、努力を重ねていかなければならない。まだまだ足りない、自分自身のための、努力を。




 こうして、各アーバンメンバー六人が次々とソートを繰り出し戦う中……




 裏側のエリアマネージャー達も、同じく襲撃を退けようと奮闘していた。


「ふっ!!おりゃぁぁぁっ!!!はぁ、はぁ、いきなり何なのかしら、こいつらは?」


 カナデ達とは違い、渋谷警察署近くの首都高上。ちょうど高層ビルの一つである渋谷ストリームから直結している、渋谷スクランブルスクエアへと繋がる屋外通路の上。

 マリエ、カイドウ、カオリも同窓会終わりに、ここであの世からのお尋ね者達の襲撃に出くわしていたのだ。


「重いハルバードをそんな風に振り回してたら、自分からジリ貧になるだけだ、マリエ!体力を温存する所は、ちゃんと見極めないと!」

「アンタも知ってるでしょ、カイドウ!私は攻めるしか脳の無い、昔からドが付くほどの脳筋野郎なのよっ!!」

「自分で言ってどうすんのよ、マリエ!もう、経験豊富なアタシとカイドウの動き、よく見てなさい?」


 カナデ達と同じく戦闘に入り、マリエが無策にハルバードを振り回す中で、カイドウは『月弦の弓』、カオリは『マジカルリボン』を駆使し、効率を重視した動きを成す。


「打ち抜けっ!!」

「絡まりなさい!!」


 最近まで一切の経験がなかったマリエと違い、ある程度、戦闘面の動きが様になっているカイドウとカオリ。目の前の一体だけと戦うのではなく、初めに複数体を一点に集めるよう誘導の時間を設け、何体もの敵が自身の射程範囲内に収まった、その瞬間に。


「——魂を積み上げろ、パレスレイン!!!」

「——華に溺れるといいわ!!ワンダ〜……スピ〜〜ン!!くるくるくる〜っ!!」


 巨大な弓より高速で何本もの矢を天に射出し、串刺しの雨を降らせるカイドウ。新体操リボンを縦横無尽に伸縮させ、強烈な連続はたき攻撃を繰り出すカオリ。

 苦戦どころか、効率を求めるほどに余裕を見せた表情は、マリエに自身の実力を見つめ直すキッカケを授けることとなった。


「ほら、見たことかしら、マリエ?私のワンダ〜スピ〜〜ン!マネしてもいいのよ?」

「誰がするかっ!ふん、私だって、負けてなんからんないし!カナデ君にカッコ悪いとこなんか、見せられないから!!」

「なら、ちゃんと頑張るしかないな、マリエ!僕らを見返すだけの力量、期待してるぞ!!」


 同期とはいえども、マリエと二人の間には、数ヶ月分の明確な差がある。カナデと出会うまで飲んで遊んでを繰り返していた分、渋谷という平和ボケな地の特性上、当然マリエとは場数が違う。

 友として、仲間として、ライバルとして。別エリアのマネージャーと出会って改めて、カナデが心から頼れる先輩へとなるための、その道のりの遠さを実感したのだった。


「っ、カナデ君……待ってなさい、すぐそっちに行くからね!!」




 新たな出会いにより、カナデやマリエも戦いのヒントを得て、そうして生者と死者、互いの対峙も終局を迎える頃合いとなった。




「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

「ふっ!!」


——無に帰す斬撃と、シンプルイズベストな冷酷一閃。


「凍えろ……命よ!!」

「燃えろ〜っ、そんで、萌えろ〜っ!!」


——絡みつく氷の蔓と、次元を超越するデコレーションシール。


「とりぁぁぁぁっ!!!!」

「うりゃぁぁぁっ!!!!」


——そして、ベコベコに凹んだ鉄くずと、赤く染まった凶悪なトゲ棍棒。


 生の力を前にして、最後の一体が粒子を吹き出し倒れ込む。六人の世界を守る者達を前にして、お尋ね者達は、この世界への侵攻を失敗に終える結果となったのだった。


「はぁ、はぁ……こいつら、ひょっとして、また前みたいに群れのリーダー格が……ん?」


 この時、前回の三度の襲撃との共通点を睨んだカナデは、即座にその個体の元へと駆け寄る。棍棒で吹き飛ばされ、粒子が流れ始め、姿は既に消失しつつあった。

 通常時の外見は、ウヨウヨとはいえ、それは主に脚部の外見を指した俗称であり、頭部、腕部は案外輪郭があったりする。白い靄が部分的にかかり、目も鼻も口も髪も、意思疎通の図れるものは何もない、まさに生者と袂を分かつ存在……

 だが、その時カナデは、右腕の辺りに気になる何かを見つけた。


「なんだ、これ……何かの、印?」


 個体の腕には謎の印、いわゆる『タトゥー』が刻まれていた。緑色の、ウサギ耳を付けた少女の似顔絵……らしきマークだけが、これまでのお尋ね者達と異なる特徴だった。


「ん?何か見つけたの、カナデ君?」

「う、うん、ワラビ。よく分からないけど、今まで見たことない印を付けた奴が……」

「あ、あれっ!?これ、もしかして先輩のサインじゃない!?」


 すると、同じくそのタトゥーを見たワラビが、全員を集めて声を上げる。


「ほら、ユカリ!見て見て、これって……!!」

「なるほど……確かに先輩のサイン……例の豆打悶堕のもの、そのものね」


 確かに見覚えがある。そう言い、ユカリもワラビと同じ反応を示した。そのタトゥーのイラストはいわゆるサインであり、例の先輩、豆打悶堕が使用しているものだったのだ。

 そんな人気アイドルのサインが、何故死者の身体に?


「そういえばお尋ね者って、『あの世からの』って言うんだし、死んだ人、なんだよね?死んだ人もタトゥーとかするの?」

「いや、私もコイツらの趣味趣向は知らないけれど……でも言う通り、お尋ね者は本来『この世界で死んで、あの世に向かうはずだった魂が逆流してきた存在』、

存在するだけで世界の均衡を乱す害悪、だから消さないといけないのよ」

「えっ、存在するだけで?」


 純粋な疑問をぶつけるカナデに、ユカリが答え、さらにアツミが情報を付け足していく。


「満杯になったお風呂みたいなもんだよ、カナデ君。その中にさらに水を入れても、すっぽんぽんのマリエさんを入れても、どちらにせよお湯は溢れちゃうでしょ?

この世界の命も同じ。多すぎて溢れちゃダメで、バランスを保つために、一度世界の外に出た命は、ちゃんと別の場所に移さなきゃってことなの。それが、私たちの言うあの世なんだよ」

「へぇ、し、知らなかった……今初めて聞いたよ」

「今初めてって……お前それでよくアーバンエッセンシアのメンバーって名乗れてたな」

「お、お風呂……す、すっぽん、ぽんの、女の、人の、はははははは、裸……っひぃぃぃっ!!?」

「メグミちゃん!?今はストップ!ストップだから!!」


 ソート、あの世からのお尋ね者、現世とあの世。何も知識がなかったマリエの元にいたカナデは、今日、多くの事実を知ることとなった。

 同時に謎も生まれたが、現時点では何も掘り下げることが出来ない。


「……とにかく、今はマリエさん達と合流しよう」


 いくつもの情報を整理する前に、まずは互いの安否を確認すべきだ。カナデ達は改めて、元の姿に再生したセンター街を駆け抜け、マリエ達との合流地点へと急いだ。

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