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2-16 『DAY2と、またしても懐かしい友。』

 先日、新宿アーバンが渋谷へと挨拶に出向いてきた。あくまで挨拶で、後には引きずらない、それだけで完結する単発の出来事だと思っていた。




 少なくともカナデは、そうだと思っていた。




「……」


 本日正午。普段とは違い、事務所ではない、ハチ公前広場を集合場所としたマリエ。早速カナマリ何でも屋の新たな依頼か、そう意気込んで出向くと……待っていた光景は、考えたくもないようなものだった。


「な、なんで……また、みんなが……」


 手を振って自分を呼ぶマリエと、その横で笑顔を見せているカイドウ。そしてさらにその横には、


「というわけで、渋谷with新宿、DAY2よ」

「おう!!デーツーデーツーだぜ!!!あっはっは!!!」

「うえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「か、カナデ君!?だ、大丈夫!?」

「いや、どんな声なのよ、それ」


 不審な笑みを見せるユカリ、とにかくうるさいオウマ、二人の世話見役のワラビ。彼ら新宿との再会は、あまりにも早すぎるものだった。


「いやいや……ただでさえ、マリエさんでも相当濃くて疲れるのに、こんなとんでもない人たちに囲まれたら命持たないって……」

「あら、私たちと会えたのが泣くほど嬉しいのかしら。わざわざ、予定をこじ開けてまで来た甲斐があるわね」

「いや、そのままでいいだろぉぉぉぉぉ……」

「あはは……その、今日もまたお邪魔しちゃうね、カナデ君?」

「カロリー消費分、せめて二週間は空けて欲しかったですよ……」

「よっ、会いたかったぜ、カナデ!!!いずれ本物のヒーローになる俺の姿、今日もその目に焼き付けろよな!!!」

「熱い!朝から熱すぎんだよ、お前は!!」

「お前じゃない、俺はオウマだ!!!」

「分かったよ、オウマ!!」


 鬱陶しがられつつ、さりげなくカナデとの距離を大幅に縮めるオウマ。そのことに全く気づかないカナデは、そのまま近くに立つマリエとカイドウへと視線を向ける。


「マリエさん、カイドウさん、これどういうことですか!?なんで新宿のみんなが、今日もまた渋谷に?」


 助けを求めるような目で尋ねるカナデに、マリエとカイドウは思い出したかのように説明しだす。


「実はね、新宿の他に『もう一組』、私たちに会いたい人たちがいるって言うのよ。だからせっかくだし、新宿もまとめて顔合わせしちゃいましょ、ってことになったの」

「まあ、アーバンの規模は僕たち新宿や、君たち渋谷と同等だから、そんな肩肘張らないで……あっ、来たみたいだ!!」


 その時、自分達の元へと近づいてくる気配にカイドウが気づく。声を上げて、渋谷と新宿の全員の視線を集めて、正面へと向けさせる。

 そこにいたのは、二人の少女と、一人のスーツを着た……とても小さな、女の子?


「——よーし、みんな、準備はいい?って、メグミ、アツミ!動きが固くなってるわよ!!」

「い、いいいい、いや、だって、そ、その……ほ、本当、に、やるん、です、か?初めて、あ、会う人たちの前で……っひぃ!?お、男の子も、い、いるじゅんっぐっ!?」

「メグミちゃん、キョドりすぎだって?でも、あれ恥ずかしいもんね〜。できればアツミちゃんもやりたくないな〜、にゃだにゃだ〜〜ん!」

「おいっ!?なんでこんなとこでグダってんのよ!?ほ、ほら、渋谷と新宿のメンバーが見てるのよ!?や、り、な、さ、いっっっって!」


「……めっちゃゴタついてるけど、大丈夫なのかな、あれ」

「なんかよ、あれこそバカって感じしねえか?」

「だな」

「うっさいわよ、男ども!!ち、ちょっと待ってなさい、ホントに!?」


 遠くから渋谷と新宿の視界に入り込む、謎の三人組の少女達。だが、その姿はピシッと決まりきってるわけではなく、むしろ、ピシッとに憧れてるような節が見える。

 茶化すカナデとオウマに声を荒げると、スーツ姿の幼女は咳払いをして、改めて横の二人を整列させて、自らの寄せ書きを名乗りあげる。


……大衆の面前にて始まる、ショーチックなゲリラ自己紹介。


「んんっ……シャキーン!!この世に蔓延る悪は、必ずアタシたちの手で始末するわ!!」

「ゆ、ゆゆゆ……誘惑っ!!されて、私たちの、えと、あの、そ、の……み、魅力に、くっ、屈服ぅ、しなしゅいっ!!」

「にゃんにゃん!!犯した罪の分、きっちりアツミちゃん達がお仕置きしちゃうよ〜〜〜っ!!!」


花蜜香ハナミツ カオリ!!」

「だ、妄刃愛ダラバ メグミ……ですぅっ!!」

境純美サカイ アツミだにゃ〜〜っ!!」




「「「私たち、花の六本木アーバン!!参上!!!」」」




「「「「「「……」」」」」」




……永遠とも感じられるほどの沈黙が、辺りを占める。当然だ、渋谷アーバンと新宿アーバンだけじゃない、全世界の人々が集う渋谷の中心。そんな場所での奇行の代償など、到底想像できるものではない。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」


 腕をそれぞれ大きく伸ばす、何ともダサいポーズを決めた三人。込み上がる共感性羞恥を堪えつつ、カオリは呆れ果てている渋谷アーバンと新宿アーバンに、思い切り怒鳴りつける。


「ち、ちょっと!!!せめて何か言いなさいよ!!!アタシ達がこーんなに、か、カッコよく立ち回ってるのに、これじゃ台無しよ!!!」

「ねぇ、ちょっとよく分からないんだけど、さんじょうって、惨状って意味かしら?」

「違うから!!って、それわざと言ってんでしょ!!」

「あら、やっぱ自覚あるのね」

「むきーーーーーっ!!!!!」


 出会って最初に交わした会話は、まさかの挑発だった。相変わらずの毒舌をかまされ、反発にその小さな身体をぴょんぴょん跳ねさせるカオリ。

 それに続いて、今度はあまりの恥ずかしさに耐えられないメグミが泣き出してしまった。


「うえぇぇぇぇぇん!!!私、恥ずかしいよ〜〜っ!!!!!」

「あ〜うんうん、よくやりまちゅたね〜♪偉い子でちゅよ〜、大きい大きいメグミ赤ちゃ〜ん♪」

「う〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」

「な、なんなんだ、こりゃ……」

「まさに、カオスって感じだね……」


 泣く等身大の少女メグミをあやす、同じく等身大の少女アツミ。見かねたオウマとワラビが思わずツッコむが、状況は何も変わらない。文字通りのカオスだ。


「……誰か」

「ん?どうかしたのかしら、カナデ君?」


 そうして、側のカナデがポツリと呟いた言葉に、唯一マリエだけが反応する。尋ねようとすると、一気にダムが倒壊するかのようにして、


「誰か、俺を助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 頭がパンクしてしまったカナデは、あまりの情報量に耐えられず、本日二度目の深い慟哭を上げたのだった。


「彼のこれ、お約束なの?」

「ま、まあ、よくあるやつね……」


 ユカリもマリエも疑問符を浮かべながらカナデを見る。普段よりも幾分も多い、大盤振る舞いだ。






「——もっぐもっぐ……じゃ改めて、ちゃんと自己紹介してあげる。アタシは花蜜香ハナミツ カオリ、秘密組織アーバンエッセンシア、『六本木アーバン』のエリアマネージャーを担当してるわ。マリエもカイドウも、私とは昔馴染みの友達でね。こう見えて、同い年、だから」


 渋谷ヒカリエ6Fのレストラン街にて、とても豪華なお子様ランチを頬張りながらそう言うカオリ。

 あの惨状の後、全員はその場から逃げるようにしてヒカリエに入り、ひとまずそこでお昼にすることにしたのだった。


「とてもそうは見えねえけどな……」

「うんうん。最初、私よりも年下の子かな?なんて思っちゃったし。というか、なんでお子様ランチなの?」

「この姿ならではの特権よ。コスプレした小学生ロリだってことにすれば、どんな料理も食べ放題だわ」

「コンプレックスどころか、使いこなしてるじゃない……」


 あの濃い新宿のメンツを抑えるほどに、六本木も負けてはいない。マネージャーのカオリは、その見た目と年齢の大きなギャップを出し惜しみなく発揮していた。


「ん〜〜美味し〜〜っ!!!このウィンナーの乗ったスパゲッティがたまらない……付け合わせのブロッコリーも、この素朴さが何とも癖になるわ……くっふっふ、アンタ達もアタシのお子様ランチが羨ましくなってきたでしょ?」

「いや、全く」

「ええ、全くね」

「ちょっ!!カナデもユカリも、なんでそんなに冷たいのよっ!!」

「くっ……俺、は……お子様ランチなんか、ち、ちょ、っとしか興味なんて、ねぇ……ぐぁぁっ!!!」

「え、何を葛藤してるの、オウマ君!?」


 どんな人間も大人になれば食べれなくなる。そんな避けられない運命を退けられる喜びを思うと、心が微かに持っていかれそうになる。

 そんなことはさておき、カイドウは話を次に進めようと、カオリの横の少女に目を向け始める。


「ほらほら、カオリ。順番が詰まってるんだから、そろそろ」

「そうよ、ちゃんとメンバーの子達に譲ってあげなさいよ、カオリ」

「もう、カイドウにマリエまで……久々の再会なんだから、なんかこう、もう少し優しくしてくれてもいいんじゃない?一応、招かれたお客様なんだし?」

「あらら〜?貴方はずーっとバカにしてたこの私に、お客様扱いされたいのかしら?やだわ〜、私もこ〜んなに頼れる、お姉さん、になっちゃったなんてね〜?」

「ちょーしのんなし!!一緒の同期でも、活動実績はアタシの方が、う、え、よっ!!!」


 完全に自分たちの世界に入っている。これでは、いつまで経っても埒が明かない。


「はい、次の方どうぞー」

「「ちょ!!」」


 呆れて、同期のマリエとカオリを強引に遮るカイドウ。その目線の先には、肩を酷く震えさせ、今にも倒れそうなほど過呼吸になったメグミがいた。

 カイドウが優しく微笑むも、メグミは変わらずに声を引きつらせ、落ち着きなく言葉を口に出していく。


「ひぎぃっ!?え、えとと……私は、妄刃愛ダラバ メグミですっ!!あの、ひ、ひひひ、人前で話すのは、その、あまり、得意じゃ、なっ、なくて……しゅ、趣味は、えと、あの、まだ考えて、ないので、今、から、考えます……」

「今考えるって、ど、どんな自己紹介……?」

「ああっ!す、すみませ……んっ!?」


 思わずツッコんでしまったカナデと目を合わせるメグミ。いつもの癖で謝ろうとするが、その時、途端に彼女の目が変わり……封印されし禁忌の姿が、解き放たれる。

 それは、内気な彼女からは、誰も想像もつかないものだった。




「趣味は、『おかず』探しです!!!!!」




「「「「「「「「……へ?」」」」」」」」




 彼女が大声で叫ぶと同時に、店内の客のフォークが、一斉に音を立てた。真正面からメグミに一点凝視されたカナデは、この時、一瞬この世から生きるという感覚を喪失した。

前回と今回で、一気にキャラが七人も増えてしまいました。少しだけ補足を入れると、増えたキャラは新宿組がカイドウ、オウマ、ワラビ、ユカリの四人で、六本木組がカオリ、メグミ、アツミの三人です。


カナデとマリエも含めた判別のコツとして、『オラオラ系男子オウマ』は基本的に『思春期真っ只中カナデ』や『インテリ風な人カイドウ』よりも口調が荒々しいです。

『割と無難そうなワラビ』はこの中で最も普通の口調で、次に『上部はふにゃふにゃしてるアツミ』、次に『ツンロリっ子カオリ』、次に『漫画と酒と全裸のマリエ』、次に『クールツンツン女子ユカリ』、最後に『究極のコミュ障のヤバい奴アツミ』の順で分かりやすくなっていきます。


メンバーはメンバー同士、マネージャーはマネージャー同士で会話する場面が比較的多いので、困ったら見返してみてください。

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