30:目覚め
悪魔が消え去った後もなお、宙に浮き続ける葉月ちゃん。
何だか、様子が…変だ。
そりゃ…本体ではないにしろ、悪魔を追い払ったっていう神業を披露した訳だし。
おかしいはずなんだけどさ。
……雰囲気が違うっていうか、漂ってくる空気が重いっていうか…。
するといきなり、俯いていた頭が魔王の方を向いた。
その少し怖い笑みを浮かべた顔は葉月ちゃんのはずなのに……まるで別人だ。
「……相変もわらず、お前はクズ以下よの~ 」
声も低くて、本当にこの子は葉月ちゃん!?って思ってしまう。
「カオス!!! 」
思いっきり……そりゃもう魂を一瞬抜かれたような感じで魔王が驚いてる。
ざまあみやがれってんだ。魔王もいい気味~☆
……それより、カオスって誰? かっこいい名前だなぁ。
…………………………………。
カオスって……。
ええぇぇえ!? まさか、あのカオス!??
でも、悪魔も追い払っちゃったし………。
カオスの名前で思いつくの、このお方しかいないし………。
……ええっと、その……『神様』の カオス!?!?
葉月ちゃんが?? 一体どういうこと?? …誰か説明よこせー!!!
「リリスを苦しめる方法しか知らんのか? ふっはっはっは!! ワシが出てこなんだら、またお前はリリスを泣かせるところだった 」
「黙れ 」
よく分からないけど、いいように言われて魔王の怒り爆発って感じだけどさ、相手が神様の『カオス』だったとしたら、いくら魔王でも…敵わない。
それで……もしこの場所で戦闘が始まったらきっともの凄いことになる。
…一瞬でファイ連れて逃げれるようにしとこっと。
「ほぉう、クズが一丁前にこのワシに口答えだと? 笑える、笑えるぞ、ルシファー! 」
高々な笑い声が鼓膜を刺すようで、耳を塞ぎたい。
「…今までリリスの中でのん気に、ただただ暇を持て余していた奴が今頃になって出てきて俺に説教か? それこそ笑える 」
魔王全然顔笑ってないよ…、ってツッコミいれたい。
「ワシがのん気に暇を持て余していた、だと? リリスの体にワシが移しかえられた本当の意味すら知らん奴がよく言う 」
「なん…だと?? 」
「馬鹿もほどほどにしておけよ。あまり度が過ぎると、………殺してやるわ 」
そう言って一瞬で魔王の目の前に現れたカオスに、あわや戦闘開始か!?と思ったのもつかの間、小さな嗚咽が聞こえた。
「…ぅっ………す…けて… 」
一瞬で雰囲気もおそらく元の葉月ちゃんのものだし、重たかった空気もなんとなく軽くなった。
しかもこの気配は絶対……確信はないけど、絶対に葉月ちゃんだ!
今だ……!!
一瞬の隙を見て、僕は迷うことなく移転魔法を発動し、ファイと葉月ちゃんを連れてその場を離れた。




