29:悪魔と魔王
カインサイド◇◆◇
葉月ちゃんが苦しそうにしているのを見兼ね、ファイは急速に間合いを詰めて、魔王に掴みかかろうとした時。
魔王の急激な力の波動の増大に、魔力の解放(つまりもの凄い攻撃をされる前触れ)を察知した僕はあわてて声を出した。
「ファイ!! 離れて!! 」
が…、少し遅かった。
―――…バキバキバキッ!!!!
地面が裂ける音とともに、突如僕たちに向かって来るようにしてできた亀裂から、黒く透明がかった手が何本も伸びてきて、ファイに巻きついている。
………これは……。
この魔法は『悪魔』とある契約を結ばなければ、使えない禁忌の召喚魔法だ……。
こいつは……魔王は、悪魔に心でも売ったのだろうか。
そうでなければ、こんな魔法、使えるはずがない…。
…いやいや!! 今はそんなこと考えてる場合じゃない!!
…って、もうすでに自分の足にも薄気味悪い手が何本か巻きついてるんですけど!
「………消えろ…… 」
魔王の鋭い目つきと共に、微かに聞こえたその言葉。
それを合図にするかのように、僕もファイもズルズルと亀裂の方へ引きずられていく。
亀裂の奥深くにはきっと…悪魔がいる。このままだと、かなりまずい。
…一か八か、あの魔法を使ってみるか。
僕はこの世とはおさらばになっちゃうけど…まあ、ファイと葉月ちゃんさえ助かればいいんだし。
…魔王にもひと泡吹かせたいし、な…。
そう決意し、その魔法を発動させようとした、その時だった。
抱きかかえられていたはずの葉月ちゃんが魔王の腕の中から消え、一瞬のうちに空中に姿を現す。
すると僕たちに巻きついていた手たちがブルブルと震え始め、
『ぎゃああぁぁぁ――――… 』
という悲鳴とともに、亀裂へと帰っていく。
さすがっ葉月ちゃん、じゃなくて!!
…なんで? どうして? 悪魔は神様しか追い払うことはできないのに。




