3:執事さんとかお城とか。
10年というものは早いものだ。私がおじいさんに拾われたのが、
昨日のことのように思い出せる。言葉も理解できなかった私を、
ちゃんと物事の道理が分かるように、と育ててくれたおじいちゃんは只者ではないと思う。
三蔵おじいさん、ありがとう。
そんな思いを胸に秘め、私はおじいさんが用意してくれたマンションへとたどり着いた。
おじいさんが用意してくれる『私の家』なのだから、
きっと高級マンションなのだろうなというのはある程度予想していたが、
その…これってちょっと派手…。
見た目は、ずばり、ヨーロッパ風のお城。噴水があって、入口の門がやったら大きい。
今までがずっと豪勢な生活だったので、たまに感覚が狂っていると言われることがあったが、おじいさんの『金などに頼らん』かつ『普通の常識を忘れてはならん』とかいう教育方針のおかげで私はずっと普通の家におじいさんと2人で住んでいたし(わざわざおじいさんが普通の一軒家を購入)、いたって『普通の生活』を送っていた…はず。
気合いを入れなおし、中へと踏み込んだ。
天井がかなり高くて、巨大シャンデリアが光り輝いている。
ぼーっと辺りを観察していると、いきなり声が響いた。
「おかえりなさいませ、ご主人様 」
メイド喫茶の男バージョンか、と突っ込みを入れたくなるのを抑えつつ、
「あの…すみません。私、音野瀬葉月と申します 」
一応、雰囲気的にお嬢様を気取ってみた。
すぐに返事が返ってくる。
「話は伺っております。葉月お嬢様、おかえりなさいませ。葉月お嬢様のお部屋は最上階とな
っております。ご案内いたしますので私に付いてきてくださいませ 」
この扱いは…駄目だ。なんだか気味が悪い。
さっそく言ってみよう。
「あの、すみません 」
「なんでしょうか? 」
「そのお嬢様っていうの、やめてください。普通に呼び捨てでいいです 」
「しかし………… 」
むっとした顔を作って、少しだけ睨んでみながら、
「お願いします 」
というと、
「では、せめて葉月様、と呼ばせてください 」
様か…。まあお嬢様よりマシだよね。
そうこうしているうちに部屋へとたどり着いた。
「葉月様。こちらがお部屋になります。音野瀬様から、生活に必要なものは全部揃えるようにと伺っておりましたので、揃えさせていただきました。何か不都合がありましたら、何なりとお申し付けください」
「…えぇっと、ありがとうございます 」
「それから、音野瀬様から葉月様に、5億円、預かっております 」
おじいさん、5億は多すぎるよ!!
「なんですと?! 」
さっきまでのお嬢様気取りが台無しな一言。それを気にすることもなく笑顔で話を進める執事さんっぽい人(実際、執事です)。
「この部屋にある金庫に一部入っております。残りはあなた様通帳に入っているとのことです。くれぐれも無駄遣いのないように、と、1日3000円までだ、とのお言葉を頂戴しておりますので、なにとぞお耳に止めゆくよう、よろしくお願いいたします 」
「は…い 」
そして私にカードキーを渡すと、執事さんは帰ってしまった。




