26:森の中
葉月サイド◇◆◇
ここは異世界……彼が言うには『私の故郷』…だそうだ。
そんなはずはないと、思いつつ………。
今、私は知り合ったばかり(じゃないかも?)の青年、ルシファーに手を引かれながら、森の中をスローペースで歩いている。
はじめ彼は歩けそうもない私を見て、抱いていく(つまりお姫様だっこ…)、と言った。
もちろん恥ずかしいし、重いし、その他もろもろで断固拒否。
それで、心配させるのは良くないと思い、1人で歩けるって言ったんだけど……。
無理だけはしないでくれ…。…せめて…頼む……。と深刻そうな顔で言われ、手を差し伸べてきたルシファーを断ることなど出来ず、結局手を繋いでいる。
そういえば手を繋いだのって、何年ぶり!? …………以外に緊張してしまっている私…である。
おかげで先ほどから変な汗が噴き出てくるし、会話すらない妙な空気が漂っている。
違うこと考えて、気を紛らわそう!
うーん……異世界なんて言われて簡単に信じてしまっているけど、今まで見た景色の中に『異世界』を強調する物はなく、なんら私のいた世界と変わりない。
『ここは異世界だ』って証明できるものがなければ、本当は信じられないはずなんだけど、ね…。
『ファイがいる異世界』が頭の中を過る。
そうだ! もしかしたらこの世界がファイのいる世界かもしれない。
もしここがその世界だとして、ファイは一国の王子様なのだから、ルシファーが知ってる可能性高いよね…。
そう思い、言葉にした。
「ねえ、ルシファー……ファイって人知ってる? 」
ルシファーは少し間が開いてから答えた。
「…………知ってる。確か……最近即位した王の名だろ……。でも……なぜリリスがそんなこと知っている? 」
手を握る力が強くなったので、顔を覗き込んで見る。……豪快に眉間にしわが寄って、…もしかして……物凄く怒ってらっしゃるのかも………。
「…えっと、ね。ファイは私の大……お友達、だからかな…… 」
なんとなく……ルシファーの前で『大切な人』とは言えなかった。
「………………… 」
……何も話さない。
深い殺気の様なものが、繋いだ手から伝わってくる。
………人を殺気で殺せるなら、私はもう死んでる…よね…。
…こんなルシファーは…怖い…な…。
今までに彼に対して幾度か感じた『怖い』。でも毎回、決して離れたくはない……。
傍にいてあげなきゃいけない気がするの。
もしかしたら…私は…本当にこの人を…………知っている…………?




