24:これだから、嫌いだ。
ファイサイド◇◆◇
山積みにされたガラム国各地の報告書。
それによれば、ほとんどの村や町が復興できていることが分かる。
この短期間でこれほど復帰できたのは、ひとえに人々の心が一つになったからこそなし得たことである。
しかし…魔王の力が発動された場所の近くは未だ人が寄りつこうとしない。
あの場所を見れば、思い出してしまう……からだろうな。
多くの人が一瞬のうちにして消えてしまったことを。
ここに住むすべての人間は、魔王を許しはしない。絶対に……。
………………。
そんなことを考えていても、前に進まない…な。
一度、心を無にして別のことを考えてみる。
……そういえばカインはどこへ行ったのだ?
カインは……何処かへ行かなければならない用事などがある時は、必ず僕に言ってから出かけるはずなのだが。
もう半日ほど顔を見ていない……。
あの『王の虐殺』があってから、カインはより一層僕の身辺警護を増やすようになった。
僕は必要ないと言ったのだが……。
『葉月ちゃんに会う前に死にたいの?』とかなんとか言われてしまえば、聞きいれる他なかった。
それからというもの…就寝時には、ドアの外にカインがいるのは当たり前のようになり、僕が一人で出かけることなど断固阻止されたのだった…。
そんな奴がいきなり、それがたとえ半日とはいえ、いなくなるということは気味が悪い。
探しに行ってみるか……。
そう思いつつ、ドアノブに手をかけると、
「もう、ファイ様も立派な成人。一刻も早く結婚していただかねばなりません…… 」
「…今まですべての縁談を断っていられるが、このままだとお世継ぎが…… 」
そんな会話が聞こえてきた。
近頃、周りの者どもが早く婚約しろ、だの世継ぎが…だの、うるさい。
確かに、王となり実務をこなすだけではいけないのだ…。
『次の世代』に繋げていかなければならないのも分かっている…。
だが、僕が愛しているのは葉月だけ、だ。
それは、きっと何が起きても変わることはないだろう…。
葉月と別れたばかりの頃は、時が立てば、このつらい気持ち…『会いたい』と願う気持ちも、少しは和らぐかと思ったのだが……。
日に日に、その気持ちは増して……最近は…会いたくて、会いたくて仕方がない。
『完全にこの国を立て直す』ことはまだできてはいないが、もう迎えに行ってもいいのだろうか……。
すると、別の声が聞こえてくる。
「ファイは、もうすぐ結婚するからご心配なく 」
この声…喋り方は間違いなくカインだ。
「ファイ様を呼び捨てにするなど、お前はつくづく恩知らずの無礼者め! 」
「そうじゃ! ここはお前などが本来いることもかなわぬ場所。それを許すファイ様になんという仕打ち…… 」
僕の口から大きなため息がでる。これだから頭の固い連中は嫌いだ。
…ファイもああいう奴は、放っておけばいいのだが………。
間もなく、僕は部屋を飛びだした。
「お前たち、人の部屋の前で喚くな。うるさい 」
「ファイ様! 申し訳ございません 」
じいさん二人が深々と僕に頭を下げる。
カインは…その二人の後ろで……僕に手を振っている…。
………少しは、場を弁えろ!と言いたい。
「この者は私の友人でもあるから、名を呼び捨てにすることなど、当り前であろう? 」
「……………しかし… 」
少し顔を上げた奴が言う。
「僕には…王には一人の友人もいらぬと申すか? 」
「申し訳ございません 」
「………さがれ 」
二人はもう一度頭を下げると、そそくさとその場から立ち去った。




