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月の瞬き  作者: 幸紀涅
24/43

24:これだから、嫌いだ。



ファイサイド◇◆◇



山積みにされたガラム国各地の報告書。


それによれば、ほとんどの村や町が復興できていることが分かる。


この短期間でこれほど復帰できたのは、ひとえに人々の心が一つになったからこそなし得たことである。


しかし…魔王の力が発動された場所の近くは未だ人が寄りつこうとしない。


あの場所を見れば、思い出してしまう……からだろうな。


多くの人が一瞬のうちにして消えてしまったことを。


ここに住むすべての人間は、魔王を許しはしない。絶対に……。



………………。


そんなことを考えていても、前に進まない…な。



一度、心を無にして別のことを考えてみる。



……そういえばカインはどこへ行ったのだ? 


カインは……何処かへ行かなければならない用事などがある時は、必ず僕に言ってから出かけるはずなのだが。


もう半日ほど顔を見ていない……。


あの『王の虐殺』があってから、カインはより一層僕の身辺警護を増やすようになった。


僕は必要ないと言ったのだが……。


『葉月ちゃんに会う前に死にたいの?』とかなんとか言われてしまえば、聞きいれる他なかった。


それからというもの…就寝時には、ドアの外にカインがいるのは当たり前のようになり、僕が一人で出かけることなど断固阻止されたのだった…。


そんな奴がいきなり、それがたとえ半日とはいえ、いなくなるということは気味が悪い。


探しに行ってみるか……。


そう思いつつ、ドアノブに手をかけると、


「もう、ファイ様も立派な成人。一刻も早く結婚していただかねばなりません…… 」


「…今まですべての縁談を断っていられるが、このままだとお世継ぎが…… 」


そんな会話が聞こえてきた。


近頃、周りの者どもが早く婚約しろ、だの世継ぎが…だの、うるさい。


確かに、王となり実務をこなすだけではいけないのだ…。


『次の世代』に繋げていかなければならないのも分かっている…。


だが、僕が愛しているのは葉月だけ、だ。


それは、きっと何が起きても変わることはないだろう…。


葉月と別れたばかりの頃は、時が立てば、このつらい気持ち…『会いたい』と願う気持ちも、少しは和らぐかと思ったのだが……。


日に日に、その気持ちは増して……最近は…会いたくて、会いたくて仕方がない。


『完全にこの国を立て直す』ことはまだできてはいないが、もう迎えに行ってもいいのだろうか……。




すると、別の声が聞こえてくる。


「ファイは、もうすぐ結婚するからご心配なく 」


この声…喋り方は間違いなくカインだ。


「ファイ様を呼び捨てにするなど、お前はつくづく恩知らずの無礼者め! 」


「そうじゃ! ここはお前などが本来いることもかなわぬ場所。それを許すファイ様になんという仕打ち…… 」


僕の口から大きなため息がでる。これだから頭の固い連中は嫌いだ。


…ファイもああいう奴は、放っておけばいいのだが………。


間もなく、僕は部屋を飛びだした。


「お前たち、人の部屋の前で喚くな。うるさい 」


「ファイ様! 申し訳ございません 」


じいさん二人が深々と僕に頭を下げる。


カインは…その二人の後ろで……僕に手を振っている…。


………少しは、場を弁えろ!と言いたい。


「この者は私の友人でもあるから、名を呼び捨てにすることなど、当り前であろう? 」


「……………しかし… 」


少し顔を上げた奴が言う。


「僕には…王には一人の友人もいらぬと申すか? 」


「申し訳ございません 」


「………さがれ 」


二人はもう一度頭を下げると、そそくさとその場から立ち去った。



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