23:意識のない間に…
『まだ離したくない』とか言うと思ったんだけどな……。
………って、何考えてんのよ、自分!
そんなだったら、私が名残惜しそうな感じになっちゃうよ…。
…顔が急に熱くなってきた。
それを隠すために、すっと立ち上がって私の顔が見えないように上を向く。
……………別のこと考えよう。別のこと……別の……。
そうだ! これからお友達になるなら、私も彼に頼みたいことがある。
話しかけようと思い、彼を見る。
「…あの…せめて、ね……私のこと『葉月』って呼んでほしいな? 」
「……どうしても、そう呼ばないと、駄目か…? 」
私を見上げる彼……ルシファーの灰色の透き通った瞳の中に、悲しみのような苦痛のようなものを感じた。
そんな目をしている人に、私は『どうしても嫌だ』と言うことなんてできない…。
「………………分かった。別にリリスって呼んでもいいよ。…でも私の名前、忘れないでね…? 」
「…ああ、忘れない 」
その時、ルシファーが一瞬複雑な顔をしたのを、私は見逃すことができなかった…。
やっぱり『葉月』って名前、嫌いなのかな…。
私が思ったことに感づいたのか…ルシファーはそれを誤魔化すかのように、立ちあがった。
今度は私が彼を見上げる。
そのさきに、美しい星空がまた見えた。
こんなに綺麗に見えるんだから、きっと私の家の近くではないよ…ね。
因みに…回りは大きな木々に囲まれている。山奥かな…。
…かなり…不思議に思ったので…聞いてみる。
「そう言えば……ねえ、ここ何処なの? 」
「ここは……ガラム王国だ。…って言っても分かんないよな… 」
ルシファーは私から視線を逸らした。
「……なんか、聞いたことあるような…ないような感じ… 」
独り言のように呟く。
「…………。………リリスが『自分の故郷』に来たら、何か思い出すような気がしてな……。逃げるついでに連れて来た 」
思い出す…か…。過去がない、ということで私がもし、万が一『リリスさん』であったとして、そういとも簡単に思い出すことができるだろうか。
今まで何年も…何年も思い出さなかった記憶を……。
「私が、リリスさんじゃなかったらどうするのよ…。しかも連れてきた…ってことは、時間的に考えて……ここは日本国内なの? 」
……。長い沈黙が…流れた。
「………違う。異世界だ 」
「い……い…異世界?? 」
…………異世界って、なにか、聞いたことある…よね…。




