19:憎い人
カインサイド◇◆◇
人目を避けるために、葉月ちゃんがいた場所からずいぶん離れた所にある山奥まで来た。
やっと帰れる…。まあそんなに時間はかからなかったけど、かなり疲れた。
魔法使うのって、かなり体力を消耗するんだよね。
ただでさえ、こっちの世界に来るのに物凄い量の力を使うのに、葉月ちゃんの記憶まで呼び起こしたんだから……そりゃ僕でも疲れるはずだよね。
「さっさとこれ(魔法陣)書いて帰ろっと」
そう呟いた直後だった。
「……………えぇ?!なんで?!!! 」
いきなり、この世界に存在するはずのない気配が……。…これは………この冷たい気配は間違いなく『魔王』だ。
どうしてこの世界に…?
しかも、多分だけどさ……今、葉月ちゃんの近くにいる……。
とりあえず、戻ってみないと駄目だな、こりゃ。
あーあ、あと少しで帰れるはずだったのに。
『魔王』に…近づくにつれて、とても人間とは思えない、圧倒的な存在感が肌からひしひしと伝わってくる。
葉月ちゃんの家が見えてきた。やっぱり……そこに…いる。
自分の気配を全部消し、息すらしないようにして、近づく。
声が聞こえてきた。
「………どうして…だ? どうして俺たちばかり…こんな………」
この声が……もしかして…魔王かな…?
窓ガラスが粉々に砕け散っている。急いでその先を見る。
葉月ちゃんは何者かに……いや、男に抱きかかえられている様子だった。
そして………その男の顔が見えた。
ああ、きっとこれが魔王だ。…やっぱり僕の大嫌いな顔によく似ているな……。
「許さない……。こんな世界など、消えてしまえばいい 」
今までより何倍も上回るほどの殺気が辺りを喰らいつくした。
さすが魔王、やっぱり彼の力は膨大だな…って、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
葉月ちゃんが危ない!!
駆け寄ろうとした瞬間、葉月ちゃんの声が聞こえた。
「私、分からない。怖いよ…。嬉しくてたまらないのに、逃げたいよ…。あなたは誰なの? でも知っている気がするよ…… 」
…葉月ちゃんはそのまま頭を抱え込むかのようにして意識を失ってしまったようだった。
間に合わなかった…。
魔王、お前は絶対許さない…。ファイの大切な人を何人も、何人も傷つけて……。
しかも僕が何よりも憎くてたまらない人と瓜二つの存在。
『消したい』と思ってしまうのは、当然だよね。
いつもは冷静に乗り切れるはずなんだけどな……
「魔王、お前葉月ちゃんに何をした! 」
いろんな感情と、なによりファイの(僕も)大切な大切な葉月ちゃんを傷つけたという怒りで我を忘れてしまった。




