17:知らないのに…
葉月サイド◇◆◇
頭がすっごく重い。 私、今まで何してたんだっけ?
夕御飯作ろうと思って…それで…リビングで寝ちゃったのかな…。
でも…久しぶりにファイとの夢を見た…ような気がする。お別れする前のホンの僅かな思い出の夢。
それで……
そう! 今まで信じてきた過去とはまったく違う記憶だったんだよね…。
でも何で急に思い出したんだろう?
……何で、その夢が本当の記憶だと信じれる自分がいるのかな……?
何で違う記憶があったんだろう…………。
うーん…、分からない。
寝ちゃってから…自分ではよく理解できないことが、また増えてしまった。
もともと数え出したらキリがないほどあるんだけどね…。
駄目だ……こういうことは深く考えないでおこう。また頭痛が酷くなるのは嫌だし。
私は拾われた直後からの記憶しかない。
だから、昔は……おじいさんが生きているころは、『自分はいったい誰なのか』とか『どこから来たのか』とかよく考えている時期があった。
そして…考えが深くなるたびに頭が割れそうなほどに痛くなり、結局そういうことを考えることをやめるしかなかった。
まあ今までは『考えないようにすること』つまり『忘れること』によって、上手いこと乗り越えてこられたけどさ……。
こんな私って、やっぱりおかしいのかな…。
あぁ…こんなときにおじいさんがいれば、きっと何か助け船を出してくれるだろうにな…。
………………………。
せっかく大好きなファイとの大切な『記憶』を思い出したというのに、1人でに気持ちが沈み込んでしまった、そんな時だった。
メキメキ、メキ……―――…バリン!!!
ピカピカに綺麗にされている窓ガラスが、一瞬のうちに豪快に…すべて割れた。
その先には、一人の青年が立っていた。
私を穴が開いてしまうんじゃないかってほど見ている。
それに表情はかなり焦っている……いや…驚いているのかな…そんな感じ。
急な出来事にかなり驚いた私は逃げようと思うも、腰が抜けたのかな…どうしても体が動かない。
ここから逃げなきゃ!!
そう私は思うのに、心の奥底では青年の存在に…何故か『安心』してしまっている。
「リリス!!!会いたかった……。もう、一生…会えな…… 」
最後の方はあまり聞こえなかったが、そんな風なことを口にして、青年は私の方に走り寄ってきた。
「リリス、リリス―――――………… 」
何度もそう言いながら(誰かの名前かな…?)、彼は腰が抜けて地面に座り込んでいる私を思いっきり抱きしめた。
分からない。この人はいったい誰なの?
知らないよ、私、こんな人……。でも………なんだか、とても――――…
とても悲しくて、苦しくて、そして何より嬉しい感じがするのはどうしてかな…?




