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月の瞬き  作者: 幸紀涅
15/43

15:キスをした。



ぎゅっと、抱きしめる力を強くする。


「僕は葉月に…だな、その……僕のお姫様になってほしい 」




今更だが……。


葉月が理解できるようにと思っていたら、今まで考えたこともないような…かなり恥ずかしい言葉が出てきてしまった。


「ファイの、お姫様…? 」


……それでもやはり理解してくれていないようだが…。


「ひとまずそのことは後回し、だ。……あのな、葉月。僕は今から葉月の知らない世界に帰らなくてはならない 」



僕の服を握りしめて、言う。


「やっぱり、ファイ、帰る、んだね… 」


抱き合っているから伝わってくる………葉月の体や声が震えているのが。


僕の首筋に葉月の涙の滴が落ちた。


「そう…だ。僕は……帰ってどうしてもやらなくてはいけないことがある 」


やらなくてはいけないこと、それはガラム王国を再建すること、だ。


魔王によって塵となってしまった世界の半分を、何としても元通りにしなくてはならない。


必ず………王の血を受け継ぐこの僕が、なんとしても……。



葉月の嗚咽が聞こえてくる。


……僕がいなくなることをこんなにも悲しんでくれている。


それが悔しくて、逆に…思ってはいけないと心に言い聞かせているのだが……嬉しくもある。


自分は葉月に必要とされているのではないか、と。


もしかしたら葉月も僕と同じ気持なのではないか、と。


でも今は駄目なのだ。


多くのガラム王国の民たちが苦しんでいる中、僕が恋だのなんだの言っていてはいけない。



「でも、必ず葉月を迎えに来る。必ず、だ 」


「ファイ、迎え、に、来る…… 」


「それから…ずっと一緒にいられる 」


「……ずっと、一緒? ホント!!? 」


『ずっと一緒』という言葉のおかげか、一瞬で驚くほど元気が出てきた。それを感じ取った僕は、話を続ける。


「けれど…だ。葉月がお姫様にならないと、一緒にはいられない…… 」


「イヤ!! ファイと一緒に、いれない、の、ヤだよ… 」


「……葉月は僕のお姫様になってくれるか? 」


葉月が僕の腕を解いてこちらを見た。涙の跡はあるが、もう笑顔だ。


一緒にいた数日間、葉月のいろんな表情を見てきたが、やっぱり笑顔が一番可愛い。


「うん!葉月、ファイの、お姫様に、なる…なりたい 」


「葉月……………愛している 」


「ん? ファイ、今何て、言っ…―― 」


葉月が喋っている途中だというのにもかかわらず……






僕は何より愛しい人に、キスをした。



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