15:キスをした。
ぎゅっと、抱きしめる力を強くする。
「僕は葉月に…だな、その……僕のお姫様になってほしい 」
今更だが……。
葉月が理解できるようにと思っていたら、今まで考えたこともないような…かなり恥ずかしい言葉が出てきてしまった。
「ファイの、お姫様…? 」
……それでもやはり理解してくれていないようだが…。
「ひとまずそのことは後回し、だ。……あのな、葉月。僕は今から葉月の知らない世界に帰らなくてはならない 」
僕の服を握りしめて、言う。
「やっぱり、ファイ、帰る、んだね… 」
抱き合っているから伝わってくる………葉月の体や声が震えているのが。
僕の首筋に葉月の涙の滴が落ちた。
「そう…だ。僕は……帰ってどうしてもやらなくてはいけないことがある 」
やらなくてはいけないこと、それはガラム王国を再建すること、だ。
魔王によって塵となってしまった世界の半分を、何としても元通りにしなくてはならない。
必ず………王の血を受け継ぐこの僕が、なんとしても……。
葉月の嗚咽が聞こえてくる。
……僕がいなくなることをこんなにも悲しんでくれている。
それが悔しくて、逆に…思ってはいけないと心に言い聞かせているのだが……嬉しくもある。
自分は葉月に必要とされているのではないか、と。
もしかしたら葉月も僕と同じ気持なのではないか、と。
でも今は駄目なのだ。
多くのガラム王国の民たちが苦しんでいる中、僕が恋だのなんだの言っていてはいけない。
「でも、必ず葉月を迎えに来る。必ず、だ 」
「ファイ、迎え、に、来る…… 」
「それから…ずっと一緒にいられる 」
「……ずっと、一緒? ホント!!? 」
『ずっと一緒』という言葉のおかげか、一瞬で驚くほど元気が出てきた。それを感じ取った僕は、話を続ける。
「けれど…だ。葉月がお姫様にならないと、一緒にはいられない…… 」
「イヤ!! ファイと一緒に、いれない、の、ヤだよ… 」
「……葉月は僕のお姫様になってくれるか? 」
葉月が僕の腕を解いてこちらを見た。涙の跡はあるが、もう笑顔だ。
一緒にいた数日間、葉月のいろんな表情を見てきたが、やっぱり笑顔が一番可愛い。
「うん!葉月、ファイの、お姫様に、なる…なりたい 」
「葉月……………愛している 」
「ん? ファイ、今何て、言っ…―― 」
葉月が喋っている途中だというのにもかかわらず……
僕は何より愛しい人に、キスをした。




