14:僕だけの、
ファイサイド◇◆◇
『僕も葉月とずっと一緒にいたい』という気持ちを込めてその体にそっと腕を回した。
思う。
この子には、真実を話そう、と。……すべて話そう、と。
僕はゆっくり話し始める。
「葉月、異世界というのは分かるか? 」
「異、世界? 」
少し戸惑っているのが感じ取れた。
『異世界』の意味はまだ知らないようだったので、分かりやすいように言い直す。
「そう。ここにはない世界 」
「ここには、ない、世界……。うん、分かる。分かる、よ 」
「僕はそこからここへ来た 」
「ファイは、そこから、来た。ファイは、私の、知らない、ところから、来たんだね 」
「そうだ。それじゃあ、王子というのは分かるか? 」
「うん!王子様、私が、読んだ本に、でてくるよ 」
「信じてもらえないかもしれないが… 」
言葉に詰まってしまった。
すべてを話すつもり…だが、葉月が信じてくれなかったらどうすればいい?
もし立場が逆だったら……。僕が知りあって間もない他人に『異世界から来た』と言われたら……。
おそらく信じることができないだろう。
自分が異世界に移動できる手段を知っていたとしても、だ。
僕は他人を何の疑いもなく信じれるような…そんな心が澄んだ人間ではないからな……。
…いろんな不安が渦巻いて言葉が出てこない。
すると、葉月が抱きついていたその手を離して、僕の目を見た。
そしてまるで僕の心の内を聞いていたかのように話し始めた。
「葉月ね…ファイの、言うことは、みーんな、信じるよ。だから、何でも、お話して? 」
衝撃的だった。
今し方、葉月が信じてくれないかもしれない、と思った自分が堪らなく嫌になった。
この子は……葉月は、本当に心が…存在が澄んでいるのだな。
「ありがとう。僕は………僕は葉月の知らない世界の王子だ 」
「すごい!ファイ、王子様、だったんだ、ね 」
「そこで……なのだが… 」
「なぁに? 」
ん?と首をかしげる葉月、不意にそれが可愛すぎて、愛しすぎて。
今まで17年間生きてきて、こんな感情が湧きあがってきたことはない。
この子を僕だけのものにしたい。この子の視線を僕だけのものにしたい。
今度は僕から抱きついた。
「葉月はお姫様になりたいか? 」
「お姫、様…?うん、なりたい! 」
ぎゅっと、抱きしめる力を強くする。
「僕は葉月に…だな、その……僕のお姫様になってほしい 」




