12:一緒にいたい
その後、どこにも行く当てのなかった僕を爺さんは気前よく何日も泊めてくれた。
あちらが落ち着くまではこの世界にいなければならないので、その好意はありがたかったし、一人でいれば気が沈んでしまうだろうこの時を、葉月と一緒にいられることが何より助けになった。
しかも、爺さんは僕が異世界から来たということを信じている(知っている)訳だし、なんの苦もなくここに留まることができた。
「ファイ!こっち、こっち 」
太陽の光がさんさんと降り注ぐ中、散歩がてらに先日食べたりんごの木を葉月と二人で見に来ている。
それより今日は葉月がおかしい。
いつも以上にぴったりくっついていたり、甘えてきたり、しまいにはトイレまでついてこようとしたり…。
一瞬たりとも僕から目を離そうとしない。
そんな葉月もかなり愛おしいが、やけに妙だ。
今だって、はしゃいで僕の前を走り出したのだが、体は僕の方を向いている。
「葉月、前向いて歩かないとこけるぞ 」
「でも、ファイが… 」
急に立ち止まった。その時吹いた、のどかなそよ風に葉月の長い髪がふわりと揺れる。
「ん? 」
「いなくなるの、嫌だ 」
肩を落としてこちらに歩いてきた。真剣な顔をして、僕の前に立つ。
「ファイ、かがん、で? 」
言う通りに葉月と同じ視線になるよう、かがんでやる。
「ほら、かがんだぞ。いったいどう………… 」
どうしたのだ?という言葉は、葉月が抱きついてきたという行為によって、かき消されてしまった。
葉月は何も知らないはずだが、もうそろそろ僕があちら側に帰らなくてはならないということを、ここ数日、なにかしら感じ取っている様子ではあった。
しかし、今日はすべてを知ってしまったかのような感じだ。
「私ね、昨日、見ちゃった、の」
僕の首に巻き付いている腕の力が強くなる。
「ファイと、おじいさん、が、お話、してるのを…… 」
そのまま、黙り込んでしまった葉月。
昨日、虹の鳥…つまりカインから、『事の次第は治まったので帰ってきても大丈夫だ』という連絡が届いた。
それを聞いた後、長い間泊めてくれたお礼と、あちらの世界に帰るということを爺さんに言いに行ったのだった。
葉月はきっとその時の会話を聞いてしまったのだろう。
こんな時どうすればいいのか、何を言葉にすればいいのか分からない…。
でも決して葉月を不安にはさせたくはない。
『僕も葉月とずっと一緒にいたい』という気持ちを込めてその体にそっと腕を回した。
思う。
あちらの世界に帰る前に、
この子には真実を話そう、と。
……すべて話そう、と。




