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月の瞬き  作者: 幸紀涅
11/43

11:りんご



こうなったら、変に隠すより真実を言ってしまったほうがいいだろう。


決心した僕は、ゆっくり息を吸った。


「……僕は確かに異世界から来たのだが、葉月とはさっき知り合ったばかりだ。過去、一切関わりはない 」


「そうか。それを聞いて安心したわい。 ……葉月はな、2年前にこの近くの林に置き去りにされておったんじゃ。こんな山奥に子供を捨て置くなんてことは、決して許してはならんこと。わしは親を探しだすことにしたんじゃ。じゃが、いくら探したって親は見つからんし、それどころか身内すら見つからん。これはおかしいと思ったわしは、『異世界』という可能性を信じてみることにしたんじゃ 」


おおよそ察しのつく話だ。葉月は何者かによってこちらに送られてきたのだろう。


その『異世界に送られた理由』というのは見当もつかないが。


それと、もう一つ疑問に思うことがある。


「異世界から来たという可能性を信じる、といことは葉月が『異世界から来た』と言ったからか? 」


そうだ。そうでなければ『異世界から来た』など信じられるはずがない。


「いいや、違う。葉月自身、何も覚えとらんようでな…、言葉すら忘れておって… 」


「だからあんなに片言なのか……って、じゃあ、どうして異世界なんて信じようと思ったのだ? 」


「勘じゃよ、勘 」


「そんなことで、信じられるはずが…… 」


「静かに! 」


今まで普通に話をしていた奴、それもこの爺さんに、いきなり大声出されてビックリしないはずがない。


一瞬心臓が止まったかと思った。


この爺さんは、なんでこう唐突なんだ…。なんだって急に…?


爺さんの顔を睨んでやると、不気味に笑ってドアのほうを指さした。


それと同時にドアが開く。


葉月が木のかごにりんごを山ほど摘んで帰って来たのだ。



……上手い事、はぐらかされたような気がする…。




葉月はゆっくり僕のほうに歩いてきた。


「ファイ」


何か聞きたそうな顔をしている。


「おかえり。どうした? 」


「ファイ、りんご、好き? 」


「ああ、大好きだ 」


「よかった。じゃあね、そこに、座って 」


「?…ああ 」


言われたとおりにしてやると、葉月は僕の隣に座って、


「このりんご、さっき、洗ったから。食べて? 」


と、特別真っ赤に染まった、おいしそうなりんごを渡してきた。


すぐに一口かじってみる。甘くて水々しく、これはお世辞抜きで旨い。


「すごく旨いよ。わざわざ取ってきてくれてありがとう、葉月 」


こんな言葉、誰かに言ったことなどなかった。


僕に物を贈るという行為など、下心がない奴がするはずもなかったから…な。



もうすでに、この時から……僕は…葉月をどうしようもなく好きになっていたのかもしれない。




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