11:りんご
こうなったら、変に隠すより真実を言ってしまったほうがいいだろう。
決心した僕は、ゆっくり息を吸った。
「……僕は確かに異世界から来たのだが、葉月とはさっき知り合ったばかりだ。過去、一切関わりはない 」
「そうか。それを聞いて安心したわい。 ……葉月はな、2年前にこの近くの林に置き去りにされておったんじゃ。こんな山奥に子供を捨て置くなんてことは、決して許してはならんこと。わしは親を探しだすことにしたんじゃ。じゃが、いくら探したって親は見つからんし、それどころか身内すら見つからん。これはおかしいと思ったわしは、『異世界』という可能性を信じてみることにしたんじゃ 」
おおよそ察しのつく話だ。葉月は何者かによってこちらに送られてきたのだろう。
その『異世界に送られた理由』というのは見当もつかないが。
それと、もう一つ疑問に思うことがある。
「異世界から来たという可能性を信じる、といことは葉月が『異世界から来た』と言ったからか? 」
そうだ。そうでなければ『異世界から来た』など信じられるはずがない。
「いいや、違う。葉月自身、何も覚えとらんようでな…、言葉すら忘れておって… 」
「だからあんなに片言なのか……って、じゃあ、どうして異世界なんて信じようと思ったのだ? 」
「勘じゃよ、勘 」
「そんなことで、信じられるはずが…… 」
「静かに! 」
今まで普通に話をしていた奴、それもこの爺さんに、いきなり大声出されてビックリしないはずがない。
一瞬心臓が止まったかと思った。
この爺さんは、なんでこう唐突なんだ…。なんだって急に…?
爺さんの顔を睨んでやると、不気味に笑ってドアのほうを指さした。
それと同時にドアが開く。
葉月が木のかごにりんごを山ほど摘んで帰って来たのだ。
……上手い事、はぐらかされたような気がする…。
葉月はゆっくり僕のほうに歩いてきた。
「ファイ」
何か聞きたそうな顔をしている。
「おかえり。どうした? 」
「ファイ、りんご、好き? 」
「ああ、大好きだ 」
「よかった。じゃあね、そこに、座って 」
「?…ああ 」
言われたとおりにしてやると、葉月は僕の隣に座って、
「このりんご、さっき、洗ったから。食べて? 」
と、特別真っ赤に染まった、おいしそうなりんごを渡してきた。
すぐに一口かじってみる。甘くて水々しく、これはお世辞抜きで旨い。
「すごく旨いよ。わざわざ取ってきてくれてありがとう、葉月 」
こんな言葉、誰かに言ったことなどなかった。
僕に物を贈るという行為など、下心がない奴がするはずもなかったから…な。
もうすでに、この時から……僕は…葉月をどうしようもなく好きになっていたのかもしれない。




