10:恐ろしい爺さんだ。
それから葉月の家に案内された。
こちらの世界のことはよく知らないが、この家はそこそこ…というか、かなり立派なほうだと思われる。
「葉月の、おじいさん、なの」
紹介されたのは、なんというか…迫力のある爺さんだ。
とりあえず挨拶しないと、だな。
「名をファイ・デルタという。その…… 」
その……。何を言えばいいのか分からない。
『異世界から来ました』とかか?いやいや、それは駄目だ。信じてもらえるはずがない。
じゃあ、『葉月と友達になったので遊びに来ました』とか?それも駄目に決まっている。
いったい…なんて言えばいいのだろうか……。
「お前さん珍しい名前じゃのう 」
いきなり喋り出したので、ビックリして後ずさってしまった。
「まあまあ、そんな硬くならずに、ゆっくりしていけばよい 」
そう言いながら、…少しずつ近づいているような気が…する。
こんなことを口に出したら、男が廃るとか言われそうなのだが…、なんだかこの爺さん…物凄く怖い。
「れ、礼を言う 」
「なぁに、気にするでないわ。ああ、そうじゃ。おいしいりんごを食わせてやろう。葉月、取ってきてくれんかの? 」
「はーい 」
葉月は僕に手を振ると、走って部屋を出て行ってしまった。
ということは、だ。
2人きりだと!? 耐えられん。絶対無理だ。(←何が)
「なんじゃ?わしの顔に何か付いておるのか? 」
その言葉で、爺さんの顔を凝視してしまっていたことに気付く。
「…………… 」
2人の間に、異様な空気が流れる。
どちらも何も話そうとしない。そうして数十秒だか、数分が経ったとき、爺さんはまたもや唐突に喋り出した。
「それはそうと、お前さん、葉月を連れて帰るつもりかいのぉ? 」
「……?どういう意味だ? 」
「いやな、お前さん、この世界の人間ではなかろう? だからな、葉月のことを迎えに来たのかと思うてな… 」
………………?!こいつ、いったい何者だ?
いったいどんな根拠があってそんなことを…。
普通『異世界から来た』と言って、信じる者などいないので気にすることはないのだが、信じてしまうようなら話は別である。
そうなれば、この世界の人間に、あまり僕の素性を明かすべきではないのだ。
探るように言う。
「何故そう思うのです? 」
「顔に『異世界から来ました』ゆうて、書いておったわ。それにな、葉月がわし以外の人に懐くなんて考えられんのじゃ。お前さんと知り合いか、もしくは友人か、と思ってな 」
洞察力がありすぎる…。
いや、まさか、さっきの心の声が聞こえていたのではないだろうな……。
……分からん。
まったく恐ろしい爺さんだ。




