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流亡剣士  作者: 宇宙無敵ダークドラゴン大王


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8/21

8 一ヶ月の誓い

ミアが情報を持ち帰った翌日から、レインの生活は一変した。


朝は日が昇る前に起き、夜は日が沈んでからも動く。迷宮に潜り、魔物を狩り、KPを稼ぎ、スキルを磨く。食事と睡眠以外の時間は、すべて戦いに費やした。


「レイン、ちょっと休んだら?」


ミアが、心配そうに声をかける。だが、レインは首を振る。


「休んでる暇はない。一ヶ月しかないんだ」


「分かってるけど……倒れたら元も子もないよ」


ミアの言う通りだ。だが、体が動く限り、止まるわけにはいかない。


リィエルも、レインの隣で弓を鍛えている。彼女は風の魔法をより精密に操れるよう、毎日練習を重ねていた。


「リィエル、お前も無理するなよ」


「あなたに言われたくないわ」


リィエルが、少し笑う。その笑顔に、レインは少しだけ救われた。


---


十日目。


迷宮第三層で、レインはゴブリンの大群と遭遇した。


数は、三十体以上。普通なら、逃げるか、慎重に戦う場面だ。だが、レインは違った。魔素支配を発動し、周囲の魔素を凝縮する。そして——解き放つ。


「——散れ」


魔素の奔流が、ゴブリンたちを薙ぎ払う。十体以上が、一瞬で倒れた。残りも、レインの魔鉄剣が次々と仕留めていく。


《魔物を討伐しました。殺戮ポイントを獲得しました:5 KP × 35》

《ゴブリン討伐数:100体達成。スキル『ゴブリン語Lv3』を獲得しました》

《ゴブリン討伐数:100体達成。スキル『集団指揮Lv1』を獲得しました》


(集団指揮……?)


《スキル『集団指揮Lv1』:ゴブリンを含む、小型の魔物に対して簡単な命令を与えることができます。Lvが上がれば、より複雑な命令が可能になります》


(ゴブリンを、操れるのか)


レインは、近くにいたゴブリンに意識を向けた。すると、ゴブリンが怯えたように震え、その場に跪いた。


「……使えるな。だが、今は必要ないか」


レインは、システムの表示を確認した。


```

【ステータス】

名前:レイン・クロウ

レベル:6

HP:85/85

MP:24/24

STR:29

VIT:33

AGI:30

INT:30

DEX:24

LUK:7

──────────

殺戮ポイント:4,586 KP

スキル:ゴブリン語Lv3、剛力Lv1、怪力Lv1、魔素支配Lv2、集団指揮Lv1、飛行Lv1

```


(レベル6か。順調だ)


だが、まだ足りない。セレスティアを救うには、もっと強くならなければ。


---


十五日目。


迷宮第四層で、レインはリザードマンの群れと戦った。


数は、二十体。以前なら、苦戦しただろう。だが、今は違う。魔素支配でリザードマンの動きを鈍らせ、一匹ずつ確実に仕留めていく。


《リザードマン討伐数:20体達成。スキル『水中適応Lv1』を獲得しました》

《リザードマン討伐数:20体達成。スキル『鱗鎧Lv1』を獲得しました》


《スキル『鱗鎧Lv1』:皮膚の表面に、薄い鱗状の防御膜を形成します。物理攻撃に対する耐性が、わずかに上昇します》


(これは、ありがたいな)


レインは、腕を撫でてみた。触れると、微かにざらつく感触がある。これが鱗鎧か。見た目は変わらないが、防御力は上がっているはずだ。


その夜、宿に戻ると、ミアが待っていた。


「レイン、ちょっと話があるの」


「どうした?」


「……あたし、明日から別行動を取ろうと思う」


レインは、眉をひそめた。


「どういう意味だ?」


「あたしが一緒にいると、足手まといになることが増えてきた。今日の戦い、あたしはほとんど何もできなかった」


ミアの声は、沈んでいた。確かに、最近のレインの成長は著しい。ミアの短剣では、Bランクの魔物には通用しにくくなっていた。


「……そんなことはない。お前の情報収集には、何度も助けられている」


「ありがとう。でも、戦闘では役に立ててない。だから——」


ミアは、顔を上げた。


「あたし、盗賊として、もっと強くなる。レインの足を引っ張らないように。それまで、別々に行動したいの」


レインは、しばらく黙った。ミアの決意は、固い。止めても無駄だろう。


「……分かった。だが、一つだけ条件がある」


「何?」


「死ぬな。危なくなったら、すぐに戻れ」


ミアは、にこりと笑った。


「当たり前でしょ。あたしは、しぶといんだから」


---


二十日目。


レインとリィエルの二人で、迷宮第五層に挑んだ。


目標は、ワイバーンの巣。前回一体を倒したが、今回は複数いることが分かっている。リィエルが、風の魔法で探知した。


「三体。巣の奥に、卵もある」


「分かった。まずは、一体ずつ誘き出す」


レインは、魔素支配でワイバーンの注意を引き、一対一の状況を作り出した。リィエルが、風の矢で翼を傷つけ、レインが止めを刺す。この連携で、二体を倒した。


《ワイバーン討伐数:3/5》


だが、最後の一体が、予想外の動きを見せた。巣の奥から、卵を守るように立ち塞がったのだ。


「卵を守ってる……!」


「ええ。親の本能ね。でも——」


リィエルの目が、鋭くなる。


「守るものがある相手は、強い。気を抜かないで」


レインは頷き、剣を構えた。最後のワイバーンは、激しく抵抗した。炎のブレス、尾の一振り、鋭い爪。だが、レインとリィエルの連携の前に、徐々に追い詰められていく。


そして——


《魔物を討伐しました。殺戮ポイントを獲得しました:1,500 KP》

《ワイバーン討伐数:5体達成。スキル『飛行Lv2』を獲得しました》

《クエスト:ワイバーンを5体討伐せよ——達成》


《スキル『飛行Lv2』:空中を、短時間飛行することができます。連続使用時間は、約十秒です。Lv3以上で、より長時間の飛行が可能になります》


(飛べる……!)


レインは、試しにスキルを発動してみた。体が、ふわりと浮く。十秒ほどで地面に降りたが、確かに飛べた。


「これなら、王城への侵入にも使えるかもしれない」


「そうね。でも、十秒じゃ短いわ。もっと練習が必要よ」


リィエルが、冷静に言う。その通りだ。だが、可能性が見えた。


---


二十五日目。


レインは、迷宮第六層に足を踏み入れていた。


第五層までの魔物とは、比べ物にならない強さの魔物が棲息する。だが、レインはもっと強くなりたかった。セレスティアを救うために。


第六層は、迷宮の中でも特に危険な場所だ。これまで、多くの冒険者が挑み、帰らぬ人となっている。


《警告:迷宮第六層。魔素濃度:高。推定脅威度:Aランク》

《推奨:レベル10以上、かつ複数人での探索》


(レベル10以上、か。今は6だ)


分が悪い。だが、レインは進んだ。リィエルが、後ろからついてくる。


「レイン、本当に行くの?」


「ああ。ここで、強くならなきゃ」


第六層は、異様な空間だった。壁も天井も、すべてが黒い石で覆われている。光はなく、松明の炎だけが頼りだ。空気は、ひどく冷たい。


《警告:強力な魔物の気配を感知》

《推定脅威度:Aランク》


前方から、何かが現れた。デーモン——人型の魔物だが、その肌は赤黒く、頭部には角がある。背中には、蝙蝠のような翼。手には、炎を纏った大剣。その目は、知性を感じさせる光を宿していた。


「……人間が、ここまで来るとはな」


デーモンが、言葉を発した。レインは、息を呑んだ。喋る魔物——Aランクともなれば、知性を持つのか。


「引き返すなら、見逃してやる。だが、進むなら——殺す」


「……退くわけにはいかない」


レインは、剣を構えた。デーモンが、笑う。


「愚かだな。だが、その愚かさは嫌いじゃない」


デーモンが、動いた。速い——レインの目では、追いきれない。気づいた時には、大剣が目の前に迫っていた。


「——っ!」


レインは、とっさに鱗鎧を発動した。大剣が、肩に食い込む。鱗鎧がなければ、腕ごと落ちていただろう。


「ほう。防いだか」


デーモンが、感心したように言う。レインは、痛みに耐えながら、魔素支配を発動した。周囲の魔素を凝縮し、デーモンにぶつける。だが、デーモンはそれを片手で払った。


「魔素を操るか。面白い。だが——」


デーモンの目が、冷酷に光る。


「その程度で、俺に勝てると思うな」


デーモンが、再び動く。レインは、必死に剣を振るう。だが、攻撃が届かない。一方的に、打ち込まれる。リィエルが風の矢で援護するが、デーモンは気にした様子もない。


(強い……! まるで、相手にならない)


このままでは、死ぬ。レインは、歯を食いしばった。その時だった。


《クエストを提示します》

《クエスト:デーモンを討伐せよ》

《報酬:殺戮ポイント10,000 KP、スキル『魔族言語Lv1』、スキル『炎耐性Lv1』》

《期限:なし》

《拒否:可能》


(10,000 KP……!)


だが、今の実力では、勝てない。レインは、撤退を決断した。


「リィエル、逃げるぞ!」


「ええ!」


レインは、閃光弾を投げた。デーモンが、一瞬だけ怯む。その隙に、レインとリィエルは走った。


「逃がすか!」


デーモンの大剣が、背後から迫る。レインは、リィエルを庇うようにして、前に飛んだ。大剣が、レインの背中をかすめる。激痛。だが、生きている。


《飛行Lv2 発動》


レインは、リィエルを抱え、短時間だけ飛行した。十秒。だが、それで十分だった。デーモンとの距離が、開く。


「……覚えておけ。次は、逃げられないぞ」


デーモンの声が、背後から聞こえた。レインは、迷宮の出口を目指して走り続けた。


---


宿に戻ったのは、夜遅くだった。


レインは、ベッドに倒れ込んだ。背中の傷が、痛む。リィエルが、ポーションを飲ませてくれた。


「無茶しすぎよ、本当に」


「……分かってる」


レインは、天井を見つめた。デーモンとの戦い——まるで、相手にならなかった。これが、Aランクの力か。


(まだ、足りない。もっと、強くならなきゃ)


だが、一ヶ月は、あと五日。婚約式まで、もう時間がない。


「レイン」


リィエルが、静かに言った。


「あなたの力、システム——それを使えば、もっと強くなれるかもしれない。でも、その代償は、何かしら」


「……分からない」


「私は、エルフの伝承を思い出してた。傍観者は、器に力を与える。だが、器が大きくなりすぎると——」


リィエルは、少し迷って、言った。


「——器そのものが、割れることがある」


「……割れる?」


「つまり、死ぬってこと。力に耐えられなくなって、魂が砕ける」


レインは、黙った。観測者が、自分をどう見ているのか。ただの器なのか。それとも——


「だから、無茶はしないで。あなたが死んだら、セレスティアさんを助けられないでしょう」


「……ああ。分かってる」


レインは、目を閉じた。眠れば、少しは回復する。明日も、戦わなければ。


(セレスティア。待っていてくれ。あと少しで——)


---


二十八日目。


ミアが、戻ってきた。


「レイン、ただいま」


「ミア……! 無事だったか」


「もちろん。あたし、強くなったよ」


ミアは、以前より引き締まった体つきで、新しい装備を身につけていた。腰には、魔鉄製の短剣。そして、手には——


「これ、何だ?」


「魔法具。スラムの友達が、作ってくれたの。これで、遠くの敵も攻撃できる」


ミアが、手に持った小さな筒を見せる。魔素を込めると、光の弾が飛ぶ仕組みらしい。


「これで、あたしも戦える」


「……ああ。頼りにしてる」


ミアは、にこりと笑った。その笑顔で、レインは少しだけ、肩の力が抜けるのを感じた。


---


二十九日目。


婚約式まで、あと二日。


レインは、最後の準備をしていた。装備を整え、ポーションを買い足し、作戦を確認する。


作戦は、こうだ。


婚約式の当日、セレスティアは王城の大広間に連れてこられる。貴族たちの前で、バルドと婚約の誓いを立てる——それが、表向きの式次第だ。


だが、ミアの情報によれば、セレスティアが誓いを拒否した場合、その場で処刑される。バルドは、それすらも計算している。セレスティアが拒否すれば、バルドの権威は傷つく。だから、拒否した瞬間に、公開処刑にするつもりなのだ。


「王城の警備は、厳しい。正面から行くのは、無理」


ミアが、地図を広げながら言う。城の見取り図には、警備の配置が書き込まれている。


「だが、ここ——城の東側に、使われていない用水路がある。ここからなら、地下牢に直接アクセスできる」


「地下牢から、セレスティアを救出。そして、王城を脱出する」


「そう。脱出経路は、これ」


ミアが指差したのは、城の北側にある、崩れかけた外壁だ。ここからなら、城外に出られる。


「だが、問題は、セレスティアが式の間から地下牢に送られるタイミングだ。遅すぎても早すぎても、失敗する」


「婚約の誓いを拒否した瞬間、処刑のために地下牢に連行される。その時が、唯一のチャンス」


レインは、頷いた。作戦は、分かった。だが、成功率は低い。王城の警備は厳しく、バルド自身も強力な魔術師だ。


「ねえ、レイン」


リィエルが、静かに言った。


「私、思うの。この作戦、成功しても、私たち全員が生きて帰れる保証はない」


「分かってる」


「それでも、行くの?」


レインは、迷わなかった。


「行く。セレスティアを、見捨てられない」


リィエルは、少し寂しそうに笑った。


「……そうでしょうね。私も、それに付き合うわ」


「あたしも」


ミアが、レインの手を握った。


「三人で行こう。生きて、帰ってくる。約束だよ」


「……ああ。約束だ」


---


三十日目——決戦前夜。


レインは、一人で宿の屋上に立っていた。


夜空には、星が瞬いている。冷たい風が、頬を撫でる。明日、自分たちは王城に乗り込む。失敗すれば、全員死ぬ。


(怖いか?)


自問する。怖い。正直、怖い。だが、それ以上に——


(セレスティアに、会いたい)


その想いが、レインを突き動かしていた。


「レイン」


背後から、声がした。ミアだ。


「どうした? 眠れないのか?」


「あんたこそ」


ミアは、レインの隣に並んだ。


「ねえ、レイン。あんた、セレスティアさんのこと、どれくらい好きなの?」


「……急に、何だ?」


「いいから、答えてよ」


レインは、少し考えた。


「……全部だ。彼女の笑顔も、声も、剣を握る姿も。彼女といると、自分が自分でいられる気がする」


「ふーん。じゃあ、あたしは?」


「……は?」


ミアが、レインの顔を覗き込む。


「あたしのこと、どう思ってる?」


レインは、言葉に詰まった。ミアは、いつも明るくて、頼りになる。だが、それ以上に——


「……仲間だ。大切な」


「そっか。仲間、ね」


ミアは、少しだけ寂しそうに笑った。そして、レインの肩に、頭を寄せた。


「いいよ。今は、それで。でも、いつか——」


「いつか?」


「何でもない。明日、頑張ろうね」


ミアは、それだけ言って、屋上を降りていった。レインは、しばらくその場に立ち尽くしていた。


(何だったんだ、今のは……)


理解できないまま、レインも屋上を降りた。明日に備えて、眠らなければ。


---


決戦当日——


朝日が昇る。レインは、宿の部屋で目を覚ました。緊張で、ほとんど眠れなかった。だが、体は動く。


装備を確認する。魔鉄剣、魔獣革の鎧、ポーション、閃光弾。すべて、準備は整っている。


ミアとリィエルも、すでに支度を終えていた。二人の目は、真剣だ。


「行くぞ」


「「ああ」」


三人は、宿を出た。王城は、リベルタスの中心にある。歩いて、十分ほどだ。


だが、その途中で——


《警告:強い殺気を感知》

《推定脅威度:Bランク》


レインは、足を止めた。路地の影から、人影が現れる。黒いマント。二本の短剣。銀色の髪に、青い瞳。


「……お前は」


「シャドウ、だ」


賞金稼ぎの女——シャドウが、目の前に立っていた。


「悪いけど、ここを通すわけにはいかない」


「……グランディアの手先か?」


「違う。だが、あんたの首には、金貨五百枚がかかってる。それに——」


シャドウの目が、わずかに揺れた。


「あんたを、王城には行かせられない。私の、依頼だから」


「誰の依頼だ?」


「……言えない。だが、あんたを止めるのが、私の仕事だ」


シャドウが、短剣を抜く。レインも、魔鉄剣を構えた。


「ミア、リィエル。先に行け」


「でも——」


「これは、俺がやる。お前たちは、セレスティアを頼む」


「……分かった。死ぬなよ、レイン!」


ミアとリィエルが、路地を駆け抜けていく。シャドウは、追おうとしない。その目は、レインだけを見ている。


「いいのか? 仲間を先に行かせて」


「お前を、止めるのが先だ」


レインは、剣を構えた。


「……行くぞ」


シャドウが、動いた。レインも、動く。二人の剣が、交錯する。


(速い……! 前より、強くなってる)


シャドウの動きは、以前より鋭い。だが、レインも成長している。魔素支配で、シャドウの動きを予測し、先回りする。


「……やるな」


「お前こそ」


激しい攻防。だが、レインは気づいていた。シャドウの剣には、殺意がない。正確に、急所を外している。


「お前、本気で殺る気はないだろ」


シャドウの動きが、一瞬止まる。


「……何を、言ってる」


「お前の剣は、殺すためじゃない。止めるためだ。誰かのために——」


シャドウは、答えない。だが、その目が、わずかに揺れた。


その時だった。


《警告:王城方面から、大規模な魔素反応を感知》

《推定脅威度:Aランク》


(何だ……!?)


レインとシャドウは、同時に王城の方向を見た。王城の上空に、黒い魔素が渦巻いている。そして——


《緊急クエスト:セレスティア・グランディアを救出せよ》

《報酬:殺戮ポイント20,000 KP、スキル『王殺しの加護Lv1』》

《期限:即時》

《拒否:不可》


(セレスティア……!)


レインは、シャドウを見た。シャドウも、王城を見ている。その目に、迷いが浮かんでいる。


「……行くのか?」


シャドウが、ぽつりと言う。


「ああ。止めるか?」


シャドウは、しばらく黙った。そして、短剣を納めた。


「……行け。ただし、生き残れ。じゃないと——」


「じゃないと?」


「……何でもない。行け!」


レインは、頷いた。そして、王城に向かって走り出した。背後から、シャドウの声が聞こえる。


「レイン・クロウ! お前は、絶対に——」


その声は、風に消えた。だが、レインには、なぜか分かった気がした。


(あの女、もしかして——)


考える暇はない。王城が、目の前だ。


(セレスティア、今行く!)


レインは、王城の門に向かって、駆け出した。

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