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願う未来は永久にともに  作者: めこまる
第四章 交わされる想い編
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第41話 同じ気持ちで

「スティルク……」

「ソルガンさんに訊かれて以来、いっぱい考えたんですけどね。実験したり、ファイカンに相談したりもしたし……」

「実験?」


 スッ、とさり気なく視線を逸らされる。どうやら碌なものではなさそうだ。

 ファイカンに相談したというのも意外だったが、彼なら適任だろうとは思う。やはりスティルクはあの幼馴染を心の底では信頼していたらしい。


「それでもどうにもピンと来なかったんですけど、今なら分かります。恋焦がれるって、こういう感情なんですね。頭で悩んでもあんまり意味なかったかも」


 再び視線を合わせ、両頬を包みこむように撫でられる。


「あの約束は破棄してください。どうしてセラさんにだけは触れたくなるのか、寝てみたら分かるのかと思ったんですけど……それはもう、分かるから」

 

 穏やかな瞳が、今度は子犬のような装いでセリヴァルを見つめた。思わず胸がきゅっとなってしまう。

 

「……セラさんの嫌がることはしません。セラさんに嫌われることだけは、絶対に嫌だ。怖いです。……だからセラさん。いいって言って……。約束とは別で、僕にセラさんを抱かせてほしいです」

「……っ」


 本当に困った人だとセリヴァルは眉尻を下げる。

 そのような目で乞われ、求められては拒絶などできようはずもない。

 心を閉じていたがために表に出にくかっただけで、ソルガン家に目一杯愛された彼は、立派な末っ子気質に成長していたようだ。


(あぁ……私は本当に、美しいものに弱いのだわ……)


 清澄であるがゆえに、何ものにでも染まってしまえる危うさを持つ、純粋無垢な魂。その魂が苦難にもがき、それでも強く歩まんとする生き様はひたすらに美しい。

 愛おしく思ってしまう理由は、きっとそれだけではないのだろうけれど。


「好きです、セラさん。……好き」


 初めて生まれた感情を持て余すように紡ぎ、ほんのわずかに、唇が触れ合う。恐る恐るといった様子で反応を窺う彼の胸元に、セリヴァルはそっと手を添えた。

 手のひらに強く伝わる早鐘に、ふっと笑みが漏れる。


「……嫌じゃない?」

「えぇ。嫌じゃないわ」

「……もっと、していい?」

「えぇ。……して、スティルク」


 微笑んで答えると、スティルクの頬が一気に紅潮した。

 そして何かの糸が切れたように、噛みつくような口づけが幾度も落とされる。荒く乱れた吐息に溶ける熱が、セリヴァルの胸を震わせた。




 ◇◇◇


「……ね、セラさん」


 寝台を軋ませ、色香の熱情を黒瞳に滲ませたスティルクが耳元に甘く囁く。


「んっ……、な、に……?」


 分厚い肉体に押し潰されそうになりながらも、汗ばんだ肌が心地いい。広い背中を抱き返し、喉を震わせる。


「唇への口づけは、惚れた男とだけ……でしたっけ? 僕、自惚れてもいいですか?」

「そ、それ今訊くの!?」


 途端に軋む寝台の音が強く大きくなり、思考が真っ白になりそうになる。

 わざとこんなタイミングで問うのかと睨み上げようとするも、悦楽に満ちた笑みが返された。


「聞きたい。答えて、セラさん……」

「──っ! もうっ、あなたって人は……!」


 やられっぱなしなのが腹立たしくなり、ぐいっと彼の顔を引き寄せる。そのまま深く口づけ、戸惑う熱い吐息を呑み込んだ。


「……好きよ、スティルク」

「~~っ!」


 触れ合う唇の隙間から囁き、再び口づける。鎧のような筋肉がびくりと跳ね、かと思うと、腹の底に強烈な甘美さが打ちつけられ始めた。

 思わず弓なりにしなる背中をぎゅうっと抱きすくめられる。


「っは、……好き。セラさん、好きです……。セラさんが今まで拒んでてくれて、本当に良かった。同じ気持ちで繋がれるのって、こんなに満たされるものなんですね……」

「スティルク……」


 何度も。何度も。

 未だ幼さを残したような恋情を紡ぎ落としながら、スティルクは春情の果てへと駆け上った。同時に、セリヴァルも総身を震わせる。

 剣の打ち合いでも息一つ乱さなかった青年は肩を上下させ、照れくさそうに破顔した。



 しばらく抱き合っていると、もぞもぞと身体を起こしたスティルクがセリヴァルの片膝を持ち上げ、ゆっくりと内側へ倒した。


「なぁに?」

「……ん。いつもみたいにしたいだけです」

 

 いつもみたいに、というのは、背中から抱きしめたいということだったらしい。幾度となく抱き寄せられてきたが、そういえば正面からの抱擁は少なかったなと思い出す。


「……あなた、この体勢好きよね」

「え? あー……、確かに。密着しやすいし、なんか落ち着くんですよね。拘束もしやすいですし」


 しれっととんでもないことを言う。

 つい半眼で睨めつけると、何か問題でもあったのかと言わんばかりの、きょとんとした視線を返された。

 そんな発言をしておきながら甘えるように頭をすり寄せてくるのだ。悪気がないとは恐ろしいものである。

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