第37話 友をつれて1
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鋼の刃が砥石と擦れ合う音が響き、心地良いリズムを静かな空間に刻んでいる。囲炉裏の火が弾ける音がその合間に優しく交じり合い、セリヴァルは土間で斧槍を研ぐ青年の横顔を見つめた。
スティルクは日頃の飄々とした笑みを消し去り、ただひたすらに真摯な眼差しで刃を研ぎ続けている。
真っ直ぐにして純粋な、魂の営み。それを感じているのか、相棒の魔導石も穏やかにくつろいでいるようにも見える。
やがて斧の刃と槍を研ぎ終えたスティルクは油差しを行い、少し迷いながらも毛の細かいブラシで魔導石の塵を払い落とした。清めの水で浸した布を固く絞り、丁寧に魔導石と柄の革を拭いていく。
「……うん」
角灯の仄かな灯りで全体を確認したスティルクはおもむろに立ち上がった。
「終わりましたよ」
囲炉裏の傍に座っていたセリヴァルへ歩み寄り、斧槍を手渡す。先に終わっていた双剣は既に宝物庫へと収納済みだった。
「……綺麗ね。ありがとう、スティルク。この子も喜んでいるわ」
「セラさんとの手合わせが楽しかったので、武器三本分の手入れでもお釣りが来るぐらいでしたよ」
照れたように笑うスティルクに微笑みを返し、宝物庫へと斧槍を収める。
すると靴を脱ぎ、居間へと上がったスティルクがそっとセリヴァルを抱き寄せた。いつもと異なる正面からの抱擁に、思わず視線を上げる。
「スティルク?」
「セラさん……。今夜はここに、泊まりませんか?」
髪を撫でながら耳に落とされる声に、心臓が小さく跳ねる。
「襲ったりしませんから。セラさんが嫌だと思うことはしませんから、……ね?」
骨張った手が頬を滑り、大きな黒瞳がどこか訴えるような必死さで見下ろしてくる。
「……まぁ、いいわよ」
本当に、つくづく甘いなと思うのだが、どうにもこの黒瞳には弱いのだ。
スティルクはぱぁっと表情を輝かせると、セリヴァルの手を引いて壁に背を預け、腰を下ろした。そしてその正面、彼の膝の間へとセリヴァルを座らせる。
当然のように背後から両腕をまわされ、肩に顎を乗せられた。
「少し、ゆっくり話したかったんです。いつもこうさせてもらってるけど、ここのところ、あまり二人でゆっくりはできなかったから……」
「そうだったかしら?」
「そうですよ。少し、寂しかったです」
つい、驚いてしまった。
寂しかったなどという言葉を彼が使うとは。
口元にはいつもの笑みを浮かべながらも、拗ねたような瞳が取り繕っただけのものとも思えない。仕方ないので彼の胸に背を預けると、嬉しそうに抱きすくめてきた。
「そういえば、双剣にも斧槍にも何かの革が巻かれてましたけど、あれ、何の革ですか? 鱗がありましたけど」
問う言葉に、セリヴァルは静かに答える。
「……竜」
「竜? 西方の伝説の生き物っていう?」
「絶滅危惧種だけど、今もまだいるわよ。雛の頃から飼い馴らして、騎士の乗り物にしてる国もあるくらいですもの。というか、東方にもいるでしょう? 姿かたちは西方とは違うようだけど」
「へぇ……伝説じゃなかったんだ」
未知の生き物の話に興味を示したらしい。黒瞳がわずかに輝いたので、セリヴァルは続けた。




