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願う未来は永久にともに  作者: めこまる
第三章 執着への問い編
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第26話 試火その1

 ◇◇◇


 村の一角に設けられた広い試験場。

 集まった村中の人間が、一族屈指の職人であるリンガ母娘が織り上げた外套の成果を今か今かと待ち侘びている。

 青空の下で準備が進む中、リンガ母娘はスティルクに外套(マント)を着せながら試験の内容を再確認していた。

 そこへセリヴァルが悠々と姿を現し、軽く背伸びをしながら声をかける。


「これが例の外套ね。じゃあ、始めましょうか」


 その言葉に一瞬固まったリンガ母娘が驚愕に口を開いた。


「えっ!? まさか、セリヴァル様が攻撃役を!? お母さん、知ってた!?」

「まさか! ソルガン様が『どうにかする』って言ってたけど……。ほ、本当によろしいのですか!?」

「まぁ、ちょっとした縁ですもの」


 彼女たちの声を聞きつけた他の村人も、先程までとは異なるざわめきを立て始めた。これほどまでに驚いてくれるならば悪い気はしない。


(お饅頭、美味しかったしね!)


 結局、箸が上手く使えないせいで食べあぐねていた魚は、なぜかスティルクが手ずから食べさせてくれた。器用に身をほぐしてくれたのは良いのだが、際限なく口に放り込んでくるので、あれはあれで大変だった。

 おかげで早めに饅頭にありつけたので良しとしたが。


「で? 撃つのは無属性でいいのよね?」

「え、えぇ」


 確認のために問いかけると、リンガが緊張した面持ちで答える。


「軽いものから、徐々に攻撃出力を上げていただく感じで撃っていただければ良いかと。終了の合図は外套の術者であるスティルクが出しますので」


 視線を向けると、外套のフードを深く被ったスティルクがにこりと微笑む。


「よろしくお願いします、セラさん」

「えぇ。よろしくね」

「楽しみだなぁ、セラさんの攻撃魔法」


 軽い足取りで試験場の端へと歩いていく。

 セリヴァルはその逆側へと向かい、互いの距離が数十メートルになったところで足を止めた。


(防具の試験ってことは、試験者は何も防御せずに外套の力だけで攻撃に耐えるってことよね?)


 攻撃役の力加減と外套の力を信じ、ただ外套に命力を注いで無抵抗に攻撃を受ける役だ。改めて考えてみれば、なかなか胆力を必要とする役回りである。

 それだけでも適任者は限られそうだ。


「準備万端です!」


 スティルクが右手を上げた。

 心なしか、平時の彼よりも笑みが明るい気がする。楽しみだと言った言葉は本心だったのかもしれない。

 それならば、とセリヴァルも唇に弧を描く。


「いくわよ」


 告げ、右手を突き出す。

 それと同時に大気が震え、圧縮した魔力が三発、スティルクへと襲いかかった。土煙が上がり、フード姿が紛れる。

 ぼんやりと浮かぶ人影が、彼が微動だにせずそこに立ち続けていることを示していた。


「大丈夫ですよ! まだ余裕です!」


 土煙が薄れると、明るい声が飛んできた。

 見守る人波の中で、リンガと娘のルイカが祈るように両手を組んでいる。無理もない。外套の出来栄え次第では、スティルクが攻撃をもろに受けてしまうのだ。

 しかし遠慮は不要だろうとセリヴァルは判断した。


「じゃあ、もう少し上げてみるわね」


 指先を振り、さらに重い攻撃を連続で放っていく。

 一撃ごとに魔力の濃度を上げているが、それは攻撃を受けているスティルクにしか分からないだろう。


(っていうか、ダメージがないのはまだしも、あの衝撃を受けて微動だにしないってどういう体幹してるのよ……)


 たとえ防御力の高い装備を着用していようとも、通常ならばその衝撃に圧し負けて倒れるなりよろめくなりするはずである。

 それを彼は悠然と立ち続けているのだ。

 素の筋力によるものでもあるのだろうが、荷車を引いていたときと同じように、命力による身体強化を施しているように見える。


(魔導具にも命力を注ぎながら、己の体内にも巡らせているということ……?)


 魔力を持つ者でも、それと同じことができる人間はそう多くない。

 彼の命力操作の技量は、それほどまでに熟練していた。

 攻撃の手を止めると、スティルクは外套の状態を確認している素振りを見せた。


「もう少しいけます! 次が最後だと思うので、同じように連撃でお願いします!」

「……分かったわ」


 答えながら、セリヴァルはわずかに唇を噛みしめた。

 未だ揺らぎを見せない彼の姿勢に少々悔しくなってしまったのだ。元来が負けず嫌いなのである。一歩、いや半歩程度には彼をあの場から動かしてやりたい。

 周囲へ瞬間的に魔力を集め、次々と圧縮していく。それが五発の極めて純度の高い魔力の塊となり、順に放たれた。

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