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願う未来は永久にともに  作者: めこまる
第二章 少年とソルガン家編
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第18話 初めての友人

 ◇◇◇


 ソルガン家に迎え入れられてから、一カ月ほどが経過した。

 歩けるようになると、先の宣言通りアストリアによって村を案内され、スティルクの存在は他の一族の者たちにもしっかりと共有された。

 村に来る前のことを詮索する人間は一人もいなかった。

 安堵する反面、新たな警戒心が芽生える。


(ソルガンさんが先に手を回していたのかな……。ってことは、あの人やっぱり、僕が何をしたのか気づいてるんじゃないのかな……)


 そういえば、と思い出す。

 初めて会ったとき、ソルガンにはあの刀を見られているはずなのだ。行方が分からなくなっているあの刀は、スティルクにとっては秘密の証明であり、身を護る唯一の武器でもあった。

 今のところは必要なさそうだが、手元にないと思うと心細い。

 心ここに在らずでそわそわしていると、真正面から声が飛んできた。


「お前、女みてぇな顔してんな!」


 顔を上げてみると、気の強そうな金髪碧眼の少年が仁王立ちしていた。

 初めて見る髪と瞳の色だ。以前の村でも見たことがない輝きである。黒髪黒瞳が大半を占める一族の中でぽつりと輝くその色彩が、まるで明け方の青い空に浮かぶ明星を思わせる。

 腰に両手をあてて見下ろしてくる少年に、アストリアがつっかかる。


「何よぅ、ファイカンくん! 可愛いからいいじゃないの!」

「男に『可愛い』なんて変だ!」


 何が言いたいのかはよく分からなかったが、ファイカンという少年には、あまり良く思われてはいないらしい。

 しかし顔が気に入らないと言われると、どう対応したら良いものか。笑うのでもだめなのだろうか。

 悩んでいると、新たな少女の声が割り込む。


「ファイカンったら……。そういう言い方は良くないよ」


 窘めるように言う少女は、どこかアストリアに似た雰囲気の子で赤茶の髪をしていた。後に聞いた話によると、彼女はフレイナの姪であり、アストリアとは従姉妹だったらしい。


「私はフィヨル。よろしくね、スティルク」


 彼女はにこりとスティルクに笑いかける。

 小さく会釈を返すと、金髪の少年が「けっ」と吐き捨てた。


「何だよ、フィヨルまで。こいつがきれーな顔してるからってデレデレすんなよな!」


 完全に機嫌を損ねてしまったらしい少年に、アストリアが「ほほう」と意地悪く笑う。


「そういうことね!」

「アストリア姉さん? そういうことって……?」


 不安になって尋ねるも、アストリアはニヤニヤとした表情のままスティルクの手を握りしめる。


「気にしなくていいのよ、スティルク。ファイカンくんはスティルクが可愛いからって、し(・)っ(・)と(・)してるだけなんだから」

「嫉妬……?」

「ば……っ! な、何言ってんだよ、アストリアさん!」


 気の強そうな少年の顔が真っ赤に染まっている。

 図星を突かれて焦っている様子に見えるが、ただただ疑問が深まっただけのスティルクは首を傾げる。

 嫉妬されているということは、顔の造形を羨ましがられているということなのだろうけれど──。


「……僕は、君の髪と目の方が綺麗だと思うけどな」

「!!?」


 少年が真っ赤な顔のまま固まってしまった。あんぐりと開いた口が何か言わんとぱくぱくしているが、言葉が出ないらしい。

 アストリアは腹を抱えて笑い、彼女に似た少女は困った様子で金髪の少年を覗き込んでいる。


「行こっ、スティルク! ご紹介、まだ終わってないから!」

「えっ……」


 手を引かれ、彼は放っておいていいのかと見上げるも、アストリアは「いいのいいの」と笑う。

 彼らから離れると、彼女はこっそりと耳元に顔を寄せる。


「ファイカンくん。素直じゃないけど、優しくていい子だから。仲良くしてあげてね」

「仲良く……」


 できるのだろうか。嫌われてしまっている気がするのだが。


(……でも、あの村の子供たちみたいな、僕を気持ち悪がる感じはしない……)


 ──後日。

 なぜか木登りで勝ったら認めてやると言われ、圧勝したスティルクは、無事に金髪碧眼の少年ファイカンと友人になれたのだった。


「ま、負けたからには認めてやるけど……、でも……」

「でも?」

「フィヨルには手ぇ出すなよ! あいつは俺のだからな!」


 大木のてっぺんで耳打ちされ、思わず見下ろした。

 下ではフィヨルとアストリアがハラハラしたような顔でこちらを見上げている。その二人の肩を、木登りはとうに卒業したらしいシグルフが安心させるように抱いていた。

 アストリアに似た少女も、明るく優しい子だとスティルクは認識している。

 きっと彼女も敵ではない。


「そんなことしないよ?」

「絶対だかんな!」

「うん」


 指切りの約束を交わしたが、「手を出す」の意味をはき違えていたことにスティルクが気づいたのは、随分あとになってからのことだった。


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