表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「番いなんていらないし、関わりたくない……」 と言われました。そんな、抱き締められながら言われても……  作者: HARUHANA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/29

24.忘れられない姿

2026.6.25改稿しています。

「誰が……どこに行ったって……?」

 

 騎士が報告に来た内容を聞いて、背筋が凍った。


「フランセス伯爵令嬢が、王妃殿下を訪ねられています。それと、伝言を預かりました。捕えた弟子に、警護を付けて欲しいとのことです」


 あんな弱りきった身体で……わざわざ敵陣に……。


「……エイキ様」

「リゼが僕らのために動いてくれたんだろう」

「すぐ向かわれますか?」

「いや、リゼの努力を無駄にはしない。言う通り、牢に万全な体制を取れ」

「承知しました」

「予定通りに進めろ。リゼの警護も引き続き、怠るな」


 ……リゼ、お前に何度救われるんだろう。

 番いを得る身じゃなかったら、出会わなかったであろう存在――次は……この命に替えても、守ってみせる。


「ソイル、念の為にリゼへ密偵を送れ。城では何も出来ないと思うが……ちゃんと部屋へ行ったか確認してくれ」

「御意」


 ……俺の愛しい番いは、想像以上に手が掛かるな。



 ***



「シルビア……」


 彼女に初めて会ったのは、いつだっただろうか。

 各国が集まる大規模な場で……まさか、番いを見つけるとは夢にも思わなかった――

 

 スウィーデンの王として、成婚までに番いを見つけられなかった私は、貴族の中から選ばれた現王妃ジレットを妃に迎えた。不満などない。王妃になるべく、厳しく辛い修練も耐えてくれた。

 だから……子を授かった時も、共に喜び、分かち合った。


 ――建国祭の式典に集められた各国の要人が一同に介した会場で……漂う甘い香りに、動悸がした。

 ただひたすらに……その香りを辿って――


 番いを見つけた。


 妻も子もいる。だけど……抗うことは出来なかった。

 側近に頼んで、彼女を呼び出し、番いであることを告げた。私がすでに妻子ある身だと理解した彼女は、無かったことにしたいと辞退を申し出た。

 それは……至極真っ当なことで、仕方ない――そう何度自分に言い聞かせても、心と身体が解離する……。


 建国祭の式典が終わっても、彼女を訪ね続けた。


「貴女を名前で呼びたい。貴女の香りがないと生きていけない……」


 一度でも触れてしまえば、彼女を巻き込むと分かってた。ジレットにも罪悪感でいっぱいだった……だけど、私は――


「私には貴女だけなのです」


 そう告げて、唇を奪ってしまった……。

 触れてしまったら最後、私の番いとして発情を起こし……そして、エイキが生まれた。


 側妃として最上級の離宮を与え、シルビアとエイキに私の愛を一身に注いだ。どこにいても、シルビアの香りが私に癒しを与え、生きる意味をくれた。

 

 愛し合って二人目を孕った頃から、徐々にシルビアに変化が現れ始めた。時々ふと消える香り、優れない表情……妊娠による体調の変化だと言う医師の説明を間に受け、見過ごしてしまった。

 ただでさえ、側妃という微妙な立場で第二子の妊娠……対外的には内密にしていた。生まれたら公表しようと。


 ――そして、まもなく生まれる臨月のある日。


 シルビアの香りが完全に消え、城から姿を消した。


「すぐ探せ!!」

「陛下、エイキ様が――」


 馬車に乗って帰ってきたシルビアの胸に、勢いよく飛び込んだエイキを止めることも出来ず……シルビアが受け止めた。


 徐々に顔色が悪くなり、慌てて離宮へ運び入れたが……ベッドの上で、お腹を押さえて泣いた。硬くなった腹部が何を意味してるのか……医師から告げられた死産の言葉。それだけが響いたのを今でも覚えてる。


 そして、死産した子を産み落としてすぐ、シルビアの容体も悪化した。


「シルビア! ダメだ……諦めてはダメだ!」

「陛下……私……番いになれて……嬉しかったです」

「そ、そんなの、元気になったら幾らでも聞くっ」

「……愛して、ます……」

「シルビア!」

「……エイキを……エイキだけは――」



 

 瞳を閉じ、腕が力無く項垂れた姿は……何十年経っても忘れられない。唯一無二の番いを失った私は……喪が明ける一年、笑うことはなかった。それが……エイキを余計に追い詰めてしまった。

 自分のせいで母親を失った自責の念を抱え、番いを失った私の姿のせいで、自らの番いは見つけない……と。


 だが、それでも良いと思った。

 失う苦しみを知ってしまった私には……同じ思いをさせる事など出来ない。ただ……愛し合う尊さは、知るべきだとも思った。互いが唯一となる尊さは、何物にも代え難い。


 私のせいで塞いでしまった心を溶かせるのが番いだけならば……成婚の期限までに、最後の足掻きとして隣国に足を運ぶように促した。


 それが――リゼ嬢だった。



 シルビア……エイキが番いを見つけたぞ。

 どうか、エイキが生涯を番いと共に添えるように見守ってやってくれ。例え、困難があったとしても……自らの決断で乗り越えられるような力を、エイキに与えてやってくれ……。



「陛下、報告書をお待ちしました」

「……うむ」

「あの時と全く同じ状況です」

「……そうか」

「本当にこのまま静観されるのですか?」

「私は、最後の砦だ……」


 ――その時が来たら、正しい判断を下さねばならない。シルビアの死を、無駄にはしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ