表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「番いなんていらないし、関わりたくない……」 と言われました。そんな、抱き締められながら言われても……  作者: HARUHANA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/29

19.繋がりかける事実

 どのくらい殿下といたんだろう。朝、昼とご飯も食べず、発情に見舞われて……。殿下に寄り添いながら、過去の話しを聞いた。


 何か、力になれることがあるかもしれない。そんな風に思っていたのに。


 ……小さくお腹が鳴ってしまった。


「ククッ……」

「わ、笑わないで下さい……一日何も食べてないので」

「悪い。まずは、腹ごしらえだな」

「そういえば、シェリルは……」

「呼ぶまで誰も部屋に入るな、と伝えてある」

「あっ……」

「誰にも見られたくない」


 サラッと……恥ずかしいことを言う。思わず頬を押さえて、落ち着けと言い聞かせた。


「ここに運ばせよう」

「……ありがとうございます」


 暫くして、身体を気遣う食事が幾つも運ばれてきた。気を遣わせてしまって……申し訳ない気持ちがいっぱいだ。あとで、シェフの方にお礼を伝えに行こう。


「食べれそうか?」

「はい、身体に染みます。殿下も同じメニューに付き合ってもらって……すいません」

「……なぁ。そろそろ、その殿下って止めないか?」


 食事を口に運びながら、サラッと言ってのける。


「……名前……ですか?」

「他にないだろ。俺も、お前って言ってたけど。最近は、リゼって呼んでるぞ」

「確……かに。では……エイキ様?」

「……っ、」


 食事の手を止めて、視線がぶつかった。


「……悪くない」


 照れた様子で食事を進める姿が、なぜか可愛く見えた。揶揄えるほどの距離ではないけど、胸が満たされるのはきっと、私も心を開いたから……だと思う。


「……リゼ」

「はい?」


 不意に、真面目な声で呼ばれる。


「さっきの話だが……」


 スプーンを置いたエイキ様が、少しだけ視線を落とした。


「すぐに答えは出ない」

「……はい」

「だが、確かめる価値はあると思ってる」


 静かな決意が、何を意味しているのか分かってしまった。


「……調べるんですね」

「あぁ」

「なら私も――」

「ダメだ」


 被せるように言われて、言葉が止まった。


「リゼには関係ない話だ」

「でも……」

「キッカケを作ってくれたことは感謝してる」


 守るために引かれた、線。


「……分かりました」


 本当は、力になりたい。でも、それでも良いと思ってしまうくらいには――


 この人を、信じたいと思っている。



 ***



 リゼに「お休み」と告げて、部屋を出た。

 

「……ソイル」

「はい」


 視線も向けずに、淡々と歩きながら――


「母の件、洗い直す」

「どこまでを?」

「全部だ」

「…………」


 ソイルの沈黙は、探るときの癖だ。


「王妃様も、含めて……ですか?」

「……あぁ。表に出ていない記録、関係者、当時の侍女……全て洗え」

「御意」


 足を止めて、窓の外に見える夜の城下を見下ろした。


「もし何かあるなら……今度は、見逃さない」


 彼女が……リゼが背中を押してくれた。背こうと思えば、背けた。だけど、リゼは言った。


 "自分を責め続けたまま生きていくんですか?"


 どう生きたら、母さんに報いることが出来るのか散々考えてきた。同じ未来を繰り返さないために、番いを見つけないことが最善だと思ったのに。蓋を開けてみれば、番いであるリゼの考えが最善だと思ってる自分がいる。




 ――あれから、一週間は経っただろうか。

 夜も更けた書庫の奥。限られた者しか立ち入らない記録室に、紙を捲る乾いた音だけが響いていた。


「……ここまで揃うとはな」


 机に並べられた記録を見下ろし、低く呟いた。

 王命記録、当時の出入り記録、侍女の証言書。どれも断片的だったものが、一本の線で繋がり始めている。


「ソイル」

「はい」


 差し出された一枚の書面に、視線を落とした。


「当時、側妃様が外出された記録です。名目は、王命による外出」

「……問題は、ここか」

「王命なのに、陛下も居場所が分からないとは不自然、ですよね」


 喉の奥が僅かに詰まる。


「確かにあの時、父は探してた。嘘はついてない」

「実はその直前に、王妃様の私室へ呼び出されている記録があります」

「……王妃が?」

「はい。茶を共にした、と記載が」


 王妃が呼び出す理由は、何だ?


「その後、すぐに外出しているのか」

「えぇ。こちらが城門の出入り記録です」


 示された時間は、ほとんど間がない。


「医師の記録は、見事にないな」

「ありませんね。当時の侍女の証言では、確かに“体調を崩されていたため、外で診てもらう必要があった”と書いてあるんですが……」


 紙に残る文字を、目で追う。


 が、どこを辿っても、思い込んでいた事実は見つからない。当時、誰も疑問に思わなかったんだろうか……父でさえも。いや……俺と言う存在がいたから、か。


 もう一度、記録を見下ろし、逃さないように見入った。

 

 王妃の呼び出し。

 その直後の外出。

 王命という形。

 そして――。


「……外に出る理由を、与えられたのか。その理由まで辿れたら、真相に近づける」

「引き続き、調査を進めます」

「僕もだけが原因じゃない可能性か……」

「番い様の助言が、全てをひっくり返すかもしれません。どうされますか? 番い様にこの件を――」

「いや、まだだ。中途半端に巻き込みたくない」


 母さんを守ることは出来なかった。だが……リゼだけは、俺の番いだけは守りたい。ベッドに伏せた最後の母さんの姿が、無音でフラッシュバックした……。


 ――母さん……最後、僕に何を言いたかったんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ