第6話: 28,000Gで、村が救えました
大広間は、静寂に支配されていた。
トイレットペーパーのパニックで騒いでいた貴族たちも、
今は石のように固まっている。
私は、淡々と指を動かした。
「では、スライド5枚目です」
**【ルカス・ブルーム氏の散財が、実社会に与えた影響について】**
「殿下が隣国のアスリッド令嬢に贈られた
ブレスレットとイヤリングのセット。総額28,000G。
……セバスチャン、比較スライドを」
「御意。事実をご覧入れましょう。」
画面が切り替わる。
**【28,000Gの投資対効果】**
●令嬢への宝飾品セット:28,000G
●使用頻度:推定3回
●現在の資産価値:**差し押さえにより「ゼロ」**
続けて、横に比較データが表示された。
**【28,000Gで何ができたか:人道的試算】**
*対象:北の国境沿い・レノン村(人口312名/昨年秋より凶作)*
・村全体の子ども87人の冬越し用食料:約8,500G
・井戸3基と灌漑魔導石の再起動 :約12,000G
・冬季の医療費補助(肺炎に罹った村人全員分):約4,200G
------------------------------------
**合計:24,700G**
**余剰:3,300G**(※翌年分の種籾も余裕で買えます)
会場が、静まり返った。
それは藁のパニックで笑っていた時のような空気ではない。
もっと重く、冷たく、逃げ場のない「嫌悪」が室内に充満し始める。
「……イヤリング一つで、村が救えたっていうのか?」
誰かが、震える声で呟いた。
その視線は、もはや王子を「次期国王」としては見ていなかった。
「な、なんだその目は!
私は王族だぞ!それが王族の役目だろう。見せることも統治だ」
王子が必死に叫ぶが、その声は虚しく響く。
「多少の贅沢?……いいえ殿下。
これは経営学的に言えば『不適合資産の垂れ流し』です。
人道的にもどうかと思われますが。」
私は扇を閉じ、冷徹に言い放った。
「さて。これまでの使途不明金、および横領額の累計……。
殿下が死ぬまで働いても返せない額に達しておりますわね」
私はスライドをめくる。
そこには、王子の『新しい履歴書』が用意されていた。
**【元王子・ルカス氏:再就職(債務整理)プラン】**
●勤務先:最北端・魔導石採掘場
●時給:0.5G(全額返済に充当)
●完済予定日:**842年後**注)一日も休まず働いて、842年です
「……842年だと!? 貴様、正気か!
俺は王子だ!国の金は俺の金だ。使って何が悪い?」
「彼は今この瞬間から、負債として計上しておきます。」
「842年・・」
王子の声が絶望に満ちていた。
ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m
本日、第7話まで投稿します。
明日も続けて2話投稿します。
最後まで楽しんで頂けると嬉しいです☆




