第5話: 本日付で、この国は私の私有地です
私は再び、淡々とスライドを切り替えた。
**【ブルーム王国:実質破綻のお知らせ】**
「……は、破綻……? 何をふざけたことを……!」
ルカス王子が、震える指でスライドを指差した。
その顔はもはや青を通り越して土気色だ。
「ふざけてなどいません。客観的な『事実』を述べているだけです。
殿下、この国の主要産業である魔導石輸出の利益、
ここ三年間で40%減少していることに気づいておられました?」
「そ、それは……市場の冷え込みだと報告を受けている!」
「いいえ。隣国の新技術による『合成魔導石』の台頭です。
そして、その技術への投資を行い、市場の8割を独占しているのは
今や――私の会社です」
会場が、凍りついた。
「バカな……!
人質の小娘が、一国の基幹産業を潰したというのか!?」
「潰したのではなく、『市場原理』に従って最適化しただけです。
現在、この国の外貨準備高は底を突き、
他国からの借入金返済能力は**ゼロ**です」
私はスライドをめくる。
そこには、王宮内のあらゆる備品に
「済」印がついたリストが表示された。
**【資産差し押さえ実行リスト】**
・王宮正門の金装飾:**済**
・近衛騎士団の予備武器:**済**
・王族専用ワインセラー:**済**
・隣国公女の首元のピンクサファイア:**実行中**
「な……私のネックレスが『差し押さえ』ですって!?」
公女が悲鳴を上げ、自分の首を隠した。
だが、セバスチャンが音もなく
彼女の背後に立ち、事務的に告げる。
「失礼いたします。そちらの宝石は、本来支払われるべき
『王宮の清掃管理費』の代物弁済として
既に弊社の所有物となっております。速やかにご返却を。」
「ひ、ひっ……!」
セバスチャンの冷徹な笑みに、
公女は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
「エリス・ラングハイム……貴様、よくもこれほどまでの不敬を……!
国王兵! この不届き者を今すぐ捕らえろ!」
王子の叫びに、数人の兵士が剣を抜こうとした。
だが。
「無駄ですよ、殿下」
私は指をパチンと鳴らした。
その瞬間、王宮を包んでいた強力な「防衛魔法障壁」が、
ガラスが割れるような音と共に霧散した。
「……障壁が……消えた……?」
「障壁の維持には、膨大な魔力と『管理システム』が必要です。
そしてそのシステムのライセンス料、半年分滞納されていましたので、
本日付で利用停止させていただきました」
私は一歩、王子に詰め寄る。
「……さて、殿下。私を捕らえたとして、
誰がこの国の負債を肩代わりしてくれるとお考えですか?」
王子の剣を持つ手が、ガタガタと震え始めた。
「あ、言い忘れていました。スライド4枚目」
画面に映し出されたのは、一枚の契約書だった。
【債権譲渡契約書】
・譲渡先:エリス・ラングハイム
・対象:ブルーム王国の全土の『所有権』
「……つまり、今この瞬間から、この国は私の『私有地』です」
私は、膝をつく王子を見下ろした。
「不法侵入者(元王子)の皆様」
「……立ち退きのお時間を、あと五分ほど差し上げます」
ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m
本日、第5話まで投稿します。
明日も続けて2話投稿します。
最後まで楽しんで頂けると嬉しいです☆




