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婚約破棄?ありがとうございます。7年かけて、この国を買収しました――数字は嘘をつきません  作者: ☆もも☆


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第4話: インフラ、順次停止いたします

会場の壁に投影されたのは、

整然と並んだ表と、右肩上がりの不穏なグラフだった。


右肩上がりのグラフは、普通は良いことを示す。

でもこれは違う。見た瞬間にわかる。


これは、誰かが長年かけて積み上げてきた「不正」の軌跡だ。


「な、なんだこれは……。魔導触媒の購入履歴……?」


呆然とするルカス王子に、私は扇をスライドの一箇所に向けた。


「いいえ殿下。

それは、あなたが過去三年間『視察』という名目で計上された

費用の内訳です。……セバスチャン、拡大して」


「御意」


セバスチャンが端末を操作すると、ある項目が強調される。

数字が、会場中に大きく映し出された。


「こちらの『特殊魔導石・一万ゴールド』。

実際はそちらの令嬢に贈られた、ピンクサファイアのネックレスです。

鑑定結果と貴金属店の帳簿を照合済みです」


「なっ……!?」


令嬢の顔が青ざめた。王子の顔も青ざめた。


「他にも、この『国境守備隊への激励費』。


中身は高級輸入ワイン十二ケース。

全て殿下の離宮へ運ばれ、そちらの令嬢との夜会で消費されています」


私は一拍置いた。


「……殿下、視察というのは、

ワインの銘柄を視察することだったのでしょうか?

激励された騎士は、〇名という集計が出ております。」


会場のどこかで、誰かが噴き出すのを必死で堪える気配がした。


「貴様……そんな細かいことを!

人質の分際で私を監査するつもりか!」


「いいえ。私は事実を述べているだけです。

では、次。スライド二枚目をお願いします」


壁の映像が切り替わる。


『王宮インフラ保守管理・契約終了のお知らせ』


「婚約破棄により、私とこの国を結ぶ契約が失効しました。

よって、私が個人的に『無償奉仕』として維持していた

王宮インフラの全機能を、順次停止いたします」


「インフラだと?魔法障壁や水道のことか?

そんなもの魔導師団にやらせれば――」


「あ、それも止まりますが、第一段階はこちらー」


私がパチンと指を鳴らした瞬間、

王宮内の全ての魔導照明が淡いピンク色に明滅し始めた。


これが、停止開始の合図だ。


「これより、王宮内の『消耗品自動配給システム』を

オフラインにします。

具体的に申しますと、

各個室の化粧室に備え付けのトイレットペーパーの

供給が、今この瞬間に停止しました」


会場が一瞬、シンと静まり返った。


次の瞬間、貴族たちが一斉にざわめき始める。


「……あ、ご安心ください。完全に無くなるわけではありません。

代替品をご用意しております」


私が扇でスライドの端を指すと、

そこには『わら』のイラストと丁寧な解説文が表示された。


「以後、備え付けの魔法デバイスを叩くと、

トイレットペーパーの代わりに乾燥した藁が出てきます。

中世への先祖返りですわね。皆様、お尻をお大事に」


一拍置いて、私は付け加えた。


「……あ、ちなみに殿下のお部屋には、

少し質の悪い藁を優先配分するよう設定しております」


「な、何だと!?即時撤回だ!撤回しろ!」


「殿下、数字で見れば紙より藁の方が

コストパフォーマンスに優れていますわよ?」


会場のあちこちで、貴族たちが顔を見合わせている。

笑っていいのか、青ざめるべきなのか、判断がつかない顔だ。


でも、答えはすぐに出ることになる。


一人の肥満体の男爵が、突然顔を歪めて席を立った。

さっきまで最高級の料理とワインを貪っていた男だ。


彼は早足で会場を出ていった。


それを皮切りに、一人、また一人と「失礼」と

呟きながら中座していく貴族たちの行列ができ始めた。


私は構わずスライドを進めた。


「さあ、殿下。本題に入りましょう。

スライド三枚目――

『ブルーム王国:実質破綻のご報告です」


王子が何かを言おうとした時、


遠くから、悲鳴が上がる。

続いて、乾いた摩擦音。


私は気にしなかった。

システムは、正常に稼働している。


ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m

本日、第5話まで投稿します。


明日も続けて2話投稿します。

最後まで楽しんで頂けると嬉しいです☆

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