第86話_輝くダイヤモンド魔法
メイティリスが寝室を出て行ったあと、プレシャスと一緒に魔法を考える。ただその前にプレシャスに話しておきたいことがあった。
「目が覚める前にイロハお姉様と会ったよ。宝石魔法を使って地上へ呼び出す許可をもらって、私の正体をメイティリスに話してもらえるのよ。もちろんすべてではないけれど、イロハお姉様の妹という位置づけになるわね」
本物のアイ様に会った理由や、宝石魔図鑑の問題も解決したと付け加えた。
「わたしでも驚くほどの出来事で、何よりもアイ様が無事でよかったです。イロハ様ですが本来は降臨などありえません。アイ様はイロハ様にとって特別なようです」
プレシャスがいつにも増して興奮しているように思えた。私自身もイロハ様が認めてくれるかは半信半疑だったので、プレシャスの気持ちもわかった。プレシャスにはこの世界へ来てからの思いを伝えた。
「私が本物のアイ様との絆だからみたいで、私自身はイロハお姉様と本物のアイ様に感謝している。宝石魔図鑑で宝石が堪能できて魔法が使えて、プレシャスやメイティリスと仲良くなって、この世界を楽しんでいるよ」
理由は何であれ、ふたりの女神様にやさしくしてもらっている。何度感謝しても感謝しきれない。ふたりの役に立ちたくて、いつかは3人で一緒に会ってみたい。
「この世界をアイ様が気に入って何よりです。眠っていた間の出来事をもっと聞きたいですが、時間もないと思いますので、今回の魔法はどの宝石を使うのですか」
このあとメイティリスへ秘密を明かすには、魔法をひとつ作る必要があった。
「私の中でイロハお姉様と言えばダイヤモンドで、ほかの宝石は考えられない」
宝石魔図鑑を出現させてダイヤモンドの頁を開いた。美しくかがやくダイヤモンドのルースが目に飛び込んできた。プレシャスと一緒にダイヤモンドの画像を楽しんだあとに、プレシャスが私へ顔を向ける。
「ダイヤモンドの特徴は何ですか」
「ダイヤモンドといえば硬度で、宝石の中ではもっとも硬いのよ。でも劈開という割れやすい特徴をもっていて、衝撃が加わると壊れるから興味深いよね」
「硬い宝石なのに割れやすいのですか」
不思議そうにプレシャスが聞いてくる。
「詳しい原理までは私には分からないけれど、何かを切るときに切りやすい方向があると思うけれど、それと同じ考えみたいよ」
「木目に似ているかもしれません。ほかの特徴も知りたいです」
たしかに木も切りやすい方向があるから、プレシャスの考えであっていそう。プレシャスが宝石に興味を示してくれるのが、純粋にうれしかった。
「ほかの宝石と違って、ダイヤモンドには品質を評価する鑑定があるのよ。鑑定と鑑別は異なるけれど、プレシャスには同じ言葉に聞こえるのよね」
「同じ言葉なのに異なると聞こえています」
イロハ様にもらった自動変換能力も万能ではないみたいで、それでも日常生活を送る上で困ることはなかった。
「ダイヤモンドには4Cと呼ばれる品質を評価する方法があるのよ。具体的にはカットがかがやき、カラットが重さ、カラーが色、クラリティが透明度ね。元の世界で使っていた言葉で頭文字がCだったから、4Cの名前になった理由ね」
「かがやきや色、透明度などは品質に影響すると思いますが、一番よい品質はどのような評価ですか」
鑑別と鑑定は同じに聞こえたらしいけれど、具体的な評価項目はそのまま伝わったみたいで、プレシャスは違いにも興味があるのね。
「カラット以外では、カットはエクセレント、カラーはDカラー、クラリティはフローレスが最高で、とくにカットは人の研磨技術が影響する項目ね。品質とは異なるけれどカットの種類も色々とあるから、同じ品質でも見た目で違いを楽しめるのよ」
宝石魔図鑑でルースを立体的に表示させてプレシャスへみせた。
基本となるラウンドブリリアンカットやオーバルカット、可愛いハートシェイプカットなどを表示させる。カットによって雰囲気が異なるところもすてきで、アンカットという研磨されていないルースもあった。
「たくさんのカットがあって、色の違いでも雰囲気が変わりそうです」
プレシャスが移動しながら、楽しげに立体画像をみていた。
「ピンクやブルーなどのカラーダイヤモンドもあるのよ。鮮明な色なら私では手が出せないほど高額になるから、いつもお店で眺めているだけだったかな」
少しの間、カットや色を変えて立体画像を楽しんだ。プレシャスもダイヤモンドの画像に満足したので、本題の魔法について考える。
「魔法の効果はイロハお姉様とお話ができるにしたいけれど、見た目の演出も凝りたい。ラウンドブリリアンカットの大きなルースの上にイロハお姉様が出現して、私たちに語りかける光景はきっと幻想的ですてきになるはずよ」
「イロハ様の出現する姿が楽しみです」
プレシャスも喜んでくれたので、宝石魔図鑑に効果や呪文を書き込んだ。
準備ができたので、メイティリスたちを呼んで庭に出た。清々しい青空で日はまだ高くて、イロハ様を呼ぶにはちょうどよさそうな雰囲気だった。




