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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第13石_アンバー

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第80話_大聖女の危機

 頭の中が熱くなって何も考えられなくなった。メイティリスが大怪我を負ったと聞いただけで鳥肌が立っている。


「タラーキンさん、メイティリスが危ないの?」


 なりふり構わずにふたりの間へ割って入った。


「アイさんでしたか。大事な話になりますので、少し待って頂けますか」


 タラーキンさんの声もいつもと異なって、緊張しているのがわかる。


「メイティリスの力になりたいから私も聞きたい」


 タラーキンさんを見つめると、タラーキンさんは困っている表情へ変わった。でもメイティリスのことでは1歩も引くつもりはない。


「アイさんは大聖女様を名前で呼ぶ仲でした。本当は神殿関係者以外には聞かせられない内容ですが、わかりました。一緒に聞いてください」


 私に答えたあと、タラーキンさんが白魔道士の男性に視線を向けた。


「大聖女様が上位魔物を弱体化していましたが、反撃を受けてしまいました。直撃は免れましたが危険な状態で、回復する白魔道士も足りません」


「メイティリスは助かるの?」


 状況を早く把握したくて男性の体を揺すってしまった。


「危険な状態です。それ以上は言えません」


 私から視線を逸らせて、もしかしたらこの場で話せない内容かもしれない。最悪の状況を考えてしまって、この場でじっとしていられない。


「場所はどの辺? 教えてほしい」


 強い口調で話すと、男性を身構えながらも答えてくれた。


「街から見て南の方向に、徒歩でなら半日程度の距離です」


「プレシャス、私を連れて行ける?」


 場所がわかったので、もっとも早く移動する手段を考えた。


「とくに問題はありませんし、詳細の場所も近づけば分かるでしょう」


 プレシャスがいれば途中の魔物も怖くないから、1秒でも早くメイティリスの元へ到着したい。


「アイさんは何を始めようとするつもりですか」


 タラーキンさんは私とプレシャスが話した意味を把握できなかったみたい。


「言葉どおりでメイティリスの元へ行ってくるのよ。私も回復魔法を使えるから、どのような状態であっても絶対にメイティリスを助ける」


 私自身に言い聞かせるように力強い言葉で答えて、じっとタラーキンさんを見つめる。私の真剣さが伝わったのか、タラーキンさんは態度を決めたみたい。


「ワタシが止めても無駄のようです。危険な場所ですので、くれぐれも気をつけてください。ワタシは関係者と対策を立てます」


 タラーキンさんは男性と一緒に神殿の奥へ姿を消した。ふたりがいなくなると視線をプレシャスへ向けた。


「プレシャスは私を乗せて移動できるよね。どの方法が一番早く到着できる?」


「空を飛ぶ方法です」


「神殿から飛ぶと目立ちそうだから、いったん家に戻ってからお願いするね」


 プレシャスと一緒に神殿を出て、急いで人目のつかない場所まで走った。周囲の人がいないのを確認してから転送魔法で収集部屋へ移動した。


 寝室を経由して、家を出ると同時にプレシャスが大きくなる。


「背中に乗ってください。わたしの力によって落ちる心配はありません」


「メイティリスの元へお願い」


 プレシャスの背中に飛び乗った。プレシャスが駆け出すと急に浮遊感を覚えて、プレシャスが羽もないのに宙に浮いた。加速して上空に向かっていくと風圧を感じたけれど、重心位置が固定しているかのように飛ばされる気配はなかった。


 街が小さくなって、プレシャスは南側へ向かって飛び立った。景色が急激な速さで後ろに流れていくので、思っていた以上に速く飛んでいるみたい。


 視界がよくて眺めもよかったから、ふだんなら心ゆくまで空中散歩を楽しめていたと思う。でも今はメイティリスが心配で、無事に生きていてほしい。前方に意識を集中させながら、早く到着してほしいと願った。


「遠くに上位魔物がいますので、もう少しで到着します」


 プレシャスの言葉に、上位魔物を探そうと周囲に目を凝らしたけれど、私には草原や森が見えるだけだった。プレシャスが高度を落とし始めると、地上に動くものが見えてきた。


 その高さになって、草原に異質の場所があるのを発見した。そこには巨大で半透明な白い建物が存在していて、その巨大な建物はゆっくり動いている。


 なおもプレシャスが近づくと巨大な建物は人の姿をしていて、足元に小さな動物が動いているようにみえる。よくみると小さな動物は人間と魔物が戦っている姿で、巨人は10階建てくらいの高さだった。


「この白い巨人が上位魔物なの?」


 恐る恐る聞いた。


「上位魔物で間違いありません。気配もほかの魔物と異なります」


 上位魔物のすごさがその巨体だけでも伝わってきた、よくみると、上位魔物は体の一部をちぎって周囲に投げている。半透明の白い塊が地面に突き刺さって、人間や魔物を問わずに巻き込んでいた。


 上位魔物は治癒機能があるのか、ちぎった体の部分は元の状態に戻っていた。


「上位魔物はすごいと聞いていたけれど、予想以上に大きすぎて街を破壊できるのも頷ける。それよりもメイティリスは何処か分かる?」


 ここへ来た目的をプレシャスへ伝える。


「気配を見つけましたので、今から向かいます」


 プレシャスが少し方向を修正して、南東の森へ向かって急降下する。低空飛行で木々の間をすり抜けると、随所で人間と魔物が戦っていた。上位魔物の破片は巨大な岩にみえたけれど、状況を把握する余裕はなくて前方に集中した。


「メイティリスが見つからない」


 目視では確認できなかった。


「もう少しです」


 プレシャスは確信のある飛び方をしているので、気配でメイティリスを把握しているみたい。


 プレシャスが地面を走ったけれど、このあたりには魔物がいなかった。私たちを近くにいる騎士や魔道士が驚いているけれど、声をかける余裕はない。早くメイティリスの元へ向かいたい。


 天幕の前に立っているタイタリッカさんの姿が見えた。タイタリッカさんの前でプレシャスが止まったので、飛び降りてタイタリッカさんに走り寄った。


「メイティリスは何処?」


「おどろいた。どうしてアイがいる。ここは強い魔物がいる危険地帯だ」


「メイティリスが危険と聞いたから、プレシャスに乗せてもらって急いできた。それよりもメイティリスはどのような状態なの?」


 早口に現状を説明して、メイティリスの状況を把握したかった。


「街に連絡が届いたか。白魔道士はいつ頃来そうだ?」


 タイタリッカさんが、きびしい表情から少しだけ明るい顔を見せる。


「聞く前に出発したから分からないけれど、私も回復魔法が使えるから大丈夫よ」


「それは本当か。大聖女様自身は魔法を唱える力が残っていないから、すぐにでも中へ入ってくれ」


 タイタリッカさんが開けた天幕の入口から、飛び込むように中へ入った。


 目の前に映ったのは横たわっているメイティリスで、傷だらけの顔に服は破けていて腹部には血が滲んでいる。思った以上に危険な状況で、目を疑ってしまうほどに信じられなかった。


「メイティリス」


 名前を呼ぶのが精一杯だった。


 ひとりの白魔道士がメイティリスを回復しているけれど、傍から見ても白魔道士が疲れているのが分かる。近くには不安な表情でミリーシャさんが立っていた。

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