第67話_2点間の移動
朝の仕事でもある畑の手入れが終わったので、プレシャスと一緒にリビングで休憩をしていた。
休みながらも畑の今後を考えると、収穫になれば野菜を運ぶのに苦労しそう。手軽に野菜や大きな品物を運べる手段も考えているうちに、宝石魔法による活用を思い浮かべた。
「たしか前に転送魔法は存在すると話していたよね。宝石魔法で同様な魔法を作りたいけれど作っても平気?」
転送魔法は実用性がないと聞いていたので、あまり目立ちたくないからプレシャスへ聞いてみた。
「2点間を移動するために使うのでしょうか」
「何かを買ったときの収納や旅先から家までの移動が目的で、イロハお姉様が作ってくれた収集部屋を活用したい。旅に出たときに貴重品をなくしたくないし、貴重品は収集部屋にしまって必要なときに取り出せば、旅先とこの家の行き来にも使える」
具体的な活用方法をプレシャスへ話した。
イロハ様に頂いたこの家を拠点にしたいとも思った。この場所が私にとって、この世界のふるさとでもあるので、何処へ行っても簡単に戻ってきたかった。
「安全に旅ができれば安心できますが、転送魔法を人前で使うのは控えたほうがよいと思います。人目に付かず魔法を使えるのが重要と思いますが、どのような魔法を考えているのですか」
プレシャスとしては転送魔法を作っても平気みたいだけれど、やはり目立ってはいけないみたいね。まずは現状考えている方法をプレシャスに話してみる。
「今ある転送魔法と同じ雰囲気で考えているから、魔方陣を作ってその間を移動する感じね。最初は収集部屋と私がいる場所との間で転送して、問題なくできるようになったら固定した場所間の転送も考えてみたい」
一度訪れた遠くの土地へ転送魔法ですぐに移動できるようにしたいけれど、旅に出かけるまでに考えればよさそうね。まずは私とこの家の間を行き来できれば充分だと思っている。
「収集部屋には固定の魔方陣を作れると思いますが、アイ様側の魔方陣はその都度ごとに描くのでしょうか」
もっともな質問が返ってきた。私が何処にいても転送魔法を使うには、移動先で魔方陣を使う必要があるけれど、毎回魔方陣を描かずに済む方法を思いついていた。
「緊急時にも使いたいから事前に魔方陣を描いておきたいし、魔方陣の大きさも制限をつけずに使えるようにしたい。そうすれば小さい魔方陣でも平気だから、普段から身につけている品物に魔方陣を描いて魔法が使えると思う」
人が移動できるには大きな魔方陣が必要と考えやすいけれど、宝石魔法なら大きさは関係なく使えると感じていた。
「それならペンダントはどうでしょうか。ペンダントはアイ様から離れることはありませんから、魔方陣を描いておくにはちょうどよいと思います」
イロハ様にもらったペンダントなら、これ以上に安全な品物はなかった。仮に誰かが魔方陣をみても、ジュエリーのデザインと認識してくれそう。ただペンダントに魔方陣を描くのにひとつだけ不安があった。
「ペンダントなら一番安心できるけれど、ペンダントに魔方陣を刻んでもイロハお姉様から叱られない?」
「魔方陣を描く行為はアイ様が楽しむためなら問題ありませんし、イロハ様の加護には影響しませんから大丈夫です」
私を安心させるように力強い言葉で答えてくれた。確証はないけれど、きっとイロハ様も同じ考えに違いないと感じた。
「プレシャスがそういってくれるなら、ペンダントに魔方陣を描くね。目立たないようにリボンの裏側へ刻んで、魔法の中身を決めれば転送魔法の完成が近づきそう。あとは魔方陣を作る魔法と転送する魔法は分けたほうがよさそうね」
徐々に魔法の完成が近づいてきた。
「どのような宝石を使うのですか」
プレシャスが目を輝かせて聞いてくるけれど、そういえば宝石はまだ決めていなかった。転送や移動に関する宝石は思いつかなかったから、別の視点から決める必要がありそうね。
「転送魔法に関連しそうな宝石は思い浮かばないから、ほかの言葉を参考にしたいけれど、転送や移動以外で思いつく単語はある?」
「空間はどうでしょうか。考え方を変えれば、収集や大事な品物もあります」
プレシャスは頭の回転が早くて、すぐに別の視点で単語を示してくれた。今聞いた単語から連想して宝石を思い浮かべてみると、ちょうどよさそうな宝石があった。
「この魔法の目的は大切な品物を収集部屋に保管するのだから、プレシャスの言葉から思い浮かんだ宝石があったよ」
「何の宝石でしょうか」
興味深そうにプレシャスが聞いてきた。




