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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第10石_スピネル

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第63話_慌てる大聖女

 玄関の扉を叩く音が聞こえたので、扉を開けるとメイティリスが家の中へ飛び込んできた。今までのメイティリスとは明らかに異なる動きで、タイタリッカさんとミリーシャさんも慌てている。


「イロハ様がいるの? 強烈な気配を感じるの」


 私の顔を見てメイティリスが訴えかけてくる。メイティリスは息を切らしているので、走ってきたみたい。


「急にどうしたの?」


 なんとなく理由は分かったけれど涼しい顔で平静を装った。慌てるとイロハ様がいたと分かってしまうかもしれない。


「この家の中からは大きなイロハ様の気配がするの。絶対にイロハ様がいるはず」


 断言しながら、私が止める間もなくメイティリスが家の中に入ってきた。


「大聖女様、どうしたのですか」


 タイタリッカさんが止めようとしたけれど、メイティリスは一直線に寝室へ向かっていく。メイティリスが寝室の扉を勢いよく開けたので、慌てて声をかけた。


「この部屋は私の寝室でさすがに恥ずかしい。それと先ほどまで調子を崩して寝ていたから、昼食の準備にもう少し時間がかかりそうだから、ちょっと待っていてね」


 早口でメイティリスに声をかけると、メイティリスは私の顔を覗いてから両手を握ってきた。


「アイはアイなの? 本当は誰なの?」


 最初に会ったときと同じで、尊敬するような眼差しで私を見ている。返答に困ってしまって、前と同じに宝石魔法を見せれば納得してくれるか分からないので、プレシャスに視線を送った。


「アイ様にはイロハ様と異なる気配を感じ取れるはずです。アイ様の異なる気配が別人だという証拠です」


 プレシャスが冷静に説明してくれた。私にはまだ分からないけれど、特徴のある気配があると、事前にプレシャスが教えてくれていた。


「たしかにアイの気配はイロハ様とは異なる気配ではあるけれど、この部屋からイロハ様の気配も感じられるの」


「大聖女様、アイさんが困っています。少し落ち着いてみたら如何かしら」


 ミリーシャさんからの助け船でその場が少し落ち着いた。ミリーシャさんからみても、それほどまでにメイティリスの態度は普段と異なったみたい。


「イロハ様に会ったときと同じくらいの気配なの。アイがイロハ様でなくてもこの家にはイロハ様がいるはずと思ったから慌てたの」


 少しだけメイティリスの話し方が元に戻ってきた。それでもイロハ様がいるとまだ思っているみたい。


「この家の何処にもイロハ様はいないよ。メイティリスの気が済むなら、家の中を探しても平気よ」


「それなら確認したいの」


 メイティリスを家の中にある各部屋へ案内すると、後ろからはタイタリッカさんとミリーシャさんがついてくる。1階建ての1軒家で部屋数は多くないので、時間をかけずに全部の部屋を回ることができた。


「今案内した部屋で最後よ。生活用品が少なくて恥ずかしいけれど、私たち以外は誰もいなかったでしょ」


 確認するようにメイティリスへ告げる。


「たしかにイロハ様はいなかったけれど、あまりにもイロハ様の気配が強いの。本当に今の部屋が最後なの?」


 まだメイティリスが諦めてくれなかったので、プレシャスに助けを求めるとプレシャスと視線が合った。プレシャスは何か訴えそうな雰囲気だった。


「何か気になることでもある?」


 気になってプレシャスへ聞いた。


「床の模様は如何しますか」


 意味の分からない唐突な言葉だったけれど、プレシャスは無意味な発言はしないはず。過去の出来事を思い出すと、ひとつだけ該当する模様がみつかった。


「プレシャス、ありがとう。忘れていた部屋を思い出したよ」


「まだ部屋があるの?」


 部屋という言葉に反応してメイティリスが聞き返す。


「プレシャスから言われるまで忘れていたけれど、実は隠し部屋があるのよ。秘密の部屋だけれど、メイティリスになら見せても平気よ」


 メイティリスたちを引き連れて寝室へ戻ってきた。


「最初に確認した部屋だけれど、イロハ様はいなかったの」


 予想外の部屋だったのか、メイティリスの声には覇気がなかった。


「私だけが扉を開けられる隠し部屋があるのよ。この世界で集めた品物を保管する収集部屋で、中身は空っぽだから誰もいないとひと目で分かるはずよ」


 床の模様に手をかざすと扉が出現した。


「魔法ですか。興味がありますわ」


 扉をじっと見つめているミリーシャさんだった。やはり魔法に関連しそうな現象には惹かれるものがあるのかもしれない。


「魔法に似ていると思うけれど、隠し部屋だからあまり詳しく聞かないでね」


「他人に教える内容ではありませんから、わたくしの発言も迂闊でしたわ」


「気にしていないから平気よ。収集部屋を見せるね」


 階段を下りて最後の扉に手をかざして、収集部屋の扉を開けた。私が中へ入ると同時に、うしろからメイティリスが顔を覗かせて部屋の中を確認する。


「誰もいないの。でもイロハ様はいるはずなの」


 メイティリスが私の腕を掴んで、その瞳は真剣そのものだった。イロハ様の気配がする理由は知っているけれど、ここで話すことはできない。


「大聖女様、わたくしも確認しましたが誰もいません。昼食の準備もまだのようですので、これ以上はアイさんに迷惑がかかるかしら」


 ミリーシャさんがメイティリスをなだめるように話しかける。


「明日には街を出発するから、もし可能ならイロハ様に会いたかったの。上位魔物と対峙する前に加護をもらいたいの」


 伏し目がちで話すメイティリスの言葉で、街を出発する理由を初めて知った。

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