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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第10石_スピネル

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第62話_降臨した女神様

 眠りから覚めたのか目の前が明るくなって、まぶたを開けると写し出されたのは見慣れた天井だった。


「ここはいつもの寝室よね。たしか庭で魔法を試していたと思うけれど、夢か何かだったの?」


 眠っていたためか回らない頭を稼働させて、眠る前の状態を思い出す。直前の出来事を把握しようとつとめると、顔の横に温かみを感じた。


「アイ様、大丈夫ですか。体に違和感はありませんか」


 耳元から心配そうに話すプレシャスの声が聞こえた。ゆっくりと横を向くとプレシャスの顔があった。

「少し気分がすぐれないけれど体に痛みはないよ。それよりも何があったの?」


「アイ様が魔法を唱えると急に倒れました。無事に目が覚めてよかったです」


 プレシャスが心配するほどたいへんだったみたいで、安心させるためにプレシャスの頭を撫でてあげると、頬をすり寄せてきた。くすぐったいけれど心に余裕ができたので、体を起こすと視線の先に人の姿が見えた。


「イロハお姉様?」


 見た目はイロハ様だけれど、何故この場所にいるのか不思議だった。


「アイが倒れたと聞いて急いできました」


 イロハ様が私の横まで来ると私を抱きしめる。急の出来事で驚いたけれど、この温かい感触はイロハ様で間違いない。


「夢の中ではなさそうよね」


 星空は何処にも見えないし、部屋の中を見渡すといつもの寝室だった。


「魔法を唱えたあとにアイ様が倒れてしまって、起きる気配もありませんでした。攻撃を受けた様子もなかったため、イロハ様を呼びました」


 プレシャスがもう一度、状況を教えてくれた。


「心配してくれたのね、ありがとう。急に睡魔が襲って意識がなくなったのよ」


 プレシャスに感謝しながら、少しずつ当時の状況を思い出していく。


「アイが倒れる直前に異変はなかったですか」


 イロハ様の言葉にもう少しくわしく思い出してみる。倒れる前は7色パールを唱えて、魔法は普通に発動していた。普段と異なる状況を思い出してみると、気になる点があった。


「ふたつほど違和感があったよ。ひとつはペンダントトップが熱くなって、もうひとつは体がだるくなった。両方とも1回目の7色オパールを唱えたあとに感じた」


 体のだるさは疲れと思うけれど、今まで魔法を唱えたときに同じ感覚はなかったので念のために話した。


「敷地内にあるワタシの加護は正常ですから、宝石魔法に異変があったと考えるのが妥当でしょう」


「イロハお姉様、何が原因なのかを確認する方法はある?」


 今まで体調を崩すことはなかったけれど、何が原因かをはっきりさせたい。それにペンダントトップが熱くなったのも気になっている。


「原因を確認する方法はありますが、アイに少し辛い思いをさせてしまいます」


「このままだと宝石魔法を唱えるのにためらってしまうし、宝石魔法はアイ様からもらった大事な宝物よ。楽しく宝石魔法を唱えたいから辛くても平気よ」


 これからも宝石魔法を使っていきたいから、問題があるのなら今のうちに解決したい。それにイロハ様がついているから、多少の辛さなら耐えられると思う。


「アイに覚悟があると分かったので、確認方法を教えましょう。確認方法といってもすごく簡単で、全ての宝石魔法を唱えるだけです。ただし異変が起きないようにワタシが加護しますから安心して唱えてください」


「ただ唱えれば平気?」


 確認方法が思った以上に簡単だったので、おもわず聞き返してしまった。


「魔法を発動させればよいので、威力を弱くして唱えるだけです。倒れるかもしれない恐怖心があるかも知れませんが、ワタシがいるので平気です」


 イロハ様が私の手を握ってくると、温かなぬくもりを感じた。心の中に安心感ができてきて、イロハ様の気遣いがうれしかった。


「この状態で魔法を唱えればよいのね」


 確認するように聞く。


「ワタシが触っていればアイに危険はありませんから、いつでも好きなときに魔法を唱えてください」


「イロハお姉様が傍にいれば安心して唱えられる。魔法は覚えた順番に唱えるね。最初の魔法は、輝きオパール」


 宝石魔図鑑と基本ルースが出現して、そこからハートシェイプが飛び出した。ハートシェイプに明かりが灯ったので、魔法の発動を確認できた。この魔法では体やペンダントトップに変化を感じなかった。


「次の魔法は――」


 発動と異常がないことを確認できると次の魔法へ移る。順番に魔法を唱えて、最後の魔法は今日覚えたばかりの花びらスピネルだった。無事に全部の魔法を唱え終わったけれど、私の体に異変は感じ取れなかった。


「イロハお姉様、今の魔法で最後だけれど何かわかった? 私自身ではとくに異常は分からなかったよ」


 どの状態なのか分からず心配になって聞く。


「7色オパールのみ異変を感じて、アイが持っている本物の宝石と共鳴しました。妹が作った世界に存在していた宝石だから宝石魔法に反応したと思います。7色オパールはすてきな魔法ですが、きれいな魔法には棘があります」


 原理までは分からないけれど原因が分かって、問題の魔法は私が倒れる前に何度も唱えていた魔法だった。


「7色オパール以外の魔法は今まで通り使っても平気?」


 ほかの魔法にも影響するのか気になった。


「そのほかの魔法なら危険はありません。7色オパールは特徴的な効果も感じられますが、ブラックオパールとダイヤモンドを使った魔法はなるべく使わないほうがよいでしょう。ペンダントの加護も万能ではなくて、アイの辛い姿は見たくないです」


 話し終わると急にイロハ様が抱きしめてきた。温かい感じに包まれて、地上まで降りてきてくれるほど私のことが心配だったのかもしれない。そのように考えると申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。


「イロハお姉様、迷惑をかけてごめんね。私はもう大丈夫よ。プレシャスもイロハお姉様を呼んでくれてありがとう」


「アイ様も落ち着いてきたようでよかったです」


 プレシャスの話し方には安堵感のような、ほっとした声だった。


「人間が来たようですので、ワタシは帰ります。アイの活躍はプレシャスから聞いていますので、今後も世界を楽しんでください」


 最後に私へ頬ずりしてイロハ様は姿を消した。


「誰かが来たみたいね。私には気配が分からないけれどプレシャスには分かる?」


「わたしもまだ気配を感じられません」


 イロハ様の気配感知はプレシャス以上に広範囲みたいで、この家に来る用事があるとすればメイティリスくらいしか思い浮かばなかった。


「私はどの程度寝ていたの?」


 メイティリスと会う約束を思い出して聞いた。


「もう少しで3刻の鐘が鳴ります。ちょうど気配を感じました、大聖女です」


「メイティリスたちを迎えに行くね」


 立ち上がろうとしたけれど、足の踏ん張りが利かなかった。ベッドに手をついて倒れるのを防いだけれど、思っていたよりも体が疲れているみたい。


「アイ様、無理はいけません」


「重心の位置を間違えただけだから、そんなに心配しなくて平気よ」


 安心させるようにプレシャスの頭を撫でてあげた。


 今度はゆっくりと姿勢を起こしてから立ち上げって、寝室の中で歩いてみた。急激な動きをしなければ大丈夫そうなので、プレシャスと一緒に寝室をあとにして玄関へ向かった。

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