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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第9石_スフェーン

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第56話_プレシャスの実力

「プレシャス、魔物は何処にいるのかわかる?」


 中位魔物が出たみたいなので、声をひそめて聞く。


「沼の反対付近で、まだこちらに気づいていないと思います」


「ひとまずは安心ね。ライマインさん、このあたりでも中位魔物はでるの?」


「あまり聞かない。俺ひとりでは倒すのがむずかしい中位魔物もいるから、何の魔物か確かめてから応援を呼ぶのが安全だ」


 ライマインさんでもてこずる魔物みたいで、私にはまだ荷が重い。戦うよりも相手を知ることが重要であって、ちょうどよさそうな覚えたての魔法があった。


「気づかれて戦闘になったら危ないから、姿と音を消せる魔法があるのよ。その魔法を使えば普通よりも近づけるから、魔物の正体が分かりやすいと思う」


「姿と音か。匂いは消せないが、風下から行けば平気だろう。アイだけを残すのは危険だから全員で確認に行くが、もし魔物に見つかったら俺が迎え撃つ。アイは回復魔法に専念してくれ」


 ライマインさんが具体的な指示を出してくれた。いくつもの宝石魔法を見ているライマインさんだから、魔法の効果を疑問視する素振りはなかった。


「回復や防御魔法は任せてね。姿と音を消す魔法が発動中は私から離れないでね。案内はプレシャスに任せる」


 ライマインさんとプレシャスを交互にみると、ふたりとも頷いてくれた。


「少し遠回りになりますが、見える位置まで案内します」


「さっそく魔法を使うよ。緑光スフェーン、黄光スフェーン」


 基本ルースが出現して淡い光が飛び出して、私たちを囲むように緑色と黄色の薄い膜が2重になった。


「この膜が姿と音を遮る境界だから、膜から出ないでね。私たちからは外の景色と声が聞こえるけれど、外からは姿が見えずに音も聞こえないから安心して」


「中からは外が見えて外の音も聞こえるが、本当に大丈夫か」


 心配そうにライマインさんが聞いてくる。


「事前に試したから平気よ」


「慣れないと戸惑いそうだが、大丈夫なら何の魔物か確認したい」


「プレシャス、魔物の場所までお願い」


「案内します」


 プレシャスのうしろに私とライマインさんが歩いて行く。プレシャスは風を感じながら進んでいるみたいで、ときおり移動する方向を大きく変えながら移動して、急にプレシャスの足が止まった。


「前方に見える枯れ木の奥にいます」


 プレシャスの声に従って、ライマインさんが遠くを眺める。


「スパイクベアーか。俺ひとりでは倒せないが、このまま放置するのは危険だ。街に戻って応援を呼んでから討伐する」


 私にも魔物の姿が見えた。スパイクベアーは2本足で立っているからか、トリプルボアーよりも大きかった。見た目はクマだけれど、全身にハリネズミのような棘があって強そうにみえる。


「アイ様、別の方角から人間の気配があって、複数人います」


「ライマインさん、私には経験がないからどうしてよいか分からない」


 最善策が何なのかは、魔物討伐に一番慣れているライマインさんにお願いした。


「冒険者か街の住人かは分かるか。冒険者なら一緒に倒す選択もあるが、街の住人なら魔物に気づかれると危ない」


 早口でライマインさんが質問する。


「プレシャス、どのような人間か見に行ってくれる?」


「すぐに確認してきます」


 プレシャスが素早く移動すると、すぐにプレシャスの姿が見えなくなった。私とライマインさんはスパイクベアーの動きに注目した。


「もしスパイクベアーが別の人間に突進したら、魔法を撃ってくれ。俺が盾になって動きを止めるから、アイは攻撃魔法や回復魔法で援護を頼む」


「何処までできるか不明だけれど頑張る」


「このまま何事もなければ、街に行って人数を集めれば何とかなるだろう」


「アイ様、戻りました。子供もいたのでおそらく街の住人です」


 いつの間にかプレシャスが戻ってきた。


「街の住人はスパイクベアーから遠ざかる方向か」


 ライマインさんは、視線をスパイクベアーのままで聞いてくる。


「どっちだった?」


「魔物に近づいています。いずれスパイクベアーも気づくでしょう」


「俺たちだけで対処するしかなさそうだが、アイの使い魔は魔物退治に一緒に参加できそうか」


「私もまだ把握しきっていないのよ。プレシャス、実力はどの程度なの?」


「スパイクベアー相手なら一撃で倒せます」


 プレシャスが平然と答えたからか、ライマインさんは目を見開いておどろいているようだった。


「本当か? 上級ハンターでないと一撃ではむずかしいぞ」


「プレシャスは嘘をつかないから、プレシャスに退治してもらっても平気?」


 早く決断しないと街の住人が危なくなるから、ライマインさんへ聞く。


「もし使い魔でスパイクベアーを倒せるのなら倒してもらいたい。それが被害を少なくするには一番の選択で、俺自身で魔物を倒すのには拘っていない」


 ライマインさんの了解が取れたので、すばやくプレシャスへお願いする。


「プレシャス、スパイクベアーを倒してくれる?」


「アイ様が危険になる可能性がありますから、すぐに倒してきます。この場所で少しお待ちください」


 プレシャスは話し終わると同時に姿が膨らんで、大型犬ほどの大きさになった。


 隠れる意思がないのか直線でスパイクベアーへ向かうと、スパイクベアーもプレシャスに気づいて、威嚇するように両腕をあげた。


 プレシャスとスパイクベアーが交差してから、プレシャスが向きを変えるとスパイクベアーが倒れて消滅した。何事もなかったようにプレシャスが犬のお座り姿で、こちらを見ている。


「終わったみたいだけれど、やっぱりプレシャスはすごいの?」


 強さの判断が分からなかったのでライマインさんへ聞いた。


「今の俺では1対1で勝てない強さだ。魔石はアイがもらってくれ。心強い相棒だが周囲に強さを話してしまうと、使い魔を目的にパーティーに勧誘されるぞ」


「プレシャスの強さは黙っているね。プレシャスが私たちを待っているみたい」


 プレシャスの元へ向かってから魔石を拾うと、魔石は赤色でイチゴくらいの大きさだった。この大きさが中粒みたい。街へ戻る途中で4刻の鐘が聞こえて、討伐依頼完了の合図にも感じた。

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