第55話_初めての討伐依頼
翌日になってからプレシャスと一緒に、2刻の鐘がなる前にハンターギルドへ到着した。ライマインとの待ち合わせ場所で中を覗くとリリスールさんがいた。
「今日が初めての依頼と聞いたよ。緊張しているかい」
リリスールさんが声をかけてくる。きっと私を心配して見に来てくれたみたい。
「大丈夫かといえば嘘になるけれど体は動くから平気よ」
熟睡とまではいかないけれど、体を休めるくらいには睡眠がとれた。ライマインさんの指導もあって、体自体も昔に比べれば軽く感じた。
「ほどよい緊張は必要さ。アイちゃんなりの進め方で依頼を受ければ平気だよ」
「ほかのハンターはもっと頑張っているの?」
気になって聞いた。
「人それぞれさ。早くランクアップができれば報酬はよくなるけれど、急いで依頼を受けて失敗や怪我をすれば意味がないさ」
本来なら私は門前払いだと思うけれど、リリスールさんのおかげで試験を受けられた。ライマインさんが私を認めてくれて、コーテリアさんが魔法や使い魔に興味を示してくれた。偶然が重なった結果だけれど、きっとイロハ様のおかげね。
「まずはひとつひとつ依頼を達成したい」
「その心意気だよ。無理のない範囲で進めて一人前になっておくれよ」
「次の依頼ではリリスールさんに監視役をお願いしても平気?」
ライマインさん以外の考え方や、討伐時の神聖魔法の使い方も見てみたかった。
「嬉しい申し出だね。あたいと時間があえば歓迎さ。ライマインが来たよ」
ライマインさんがハンターギルドの中に入ってきて、私たちに気づいてこちらに歩いてくる。
「俺の準備はできているから、アイの準備が整ったら依頼を始めるぞ」
「地図や必要なものは持ってきたから大丈夫よ。ライマインさんは監視役だから私ひとりで魔物を討伐するけれど、プレシャスに手伝ってもらっても平気?」
確認のために聞いた。
「使い魔だから手伝ってもらうのは構わないが、今後の実力確認のためにも、できるだけ最初はアイ自身で討伐を試みてほしい」
「まずは私自身で倒してみせるね。その間はプレシャスも見守っていてね」
「アイ様の活躍を期待していますが、危ない場面ではわたしが助けます」
プレシャスが見守ってくれれば安心して討伐できる。
「アイちゃん、無理せずに頑張るのよ」
「ビッグポイズンフロッグは1匹ずつ倒していく。ライマインさんも来たからこれから行ってくるね」
リリスールさんに見送られて、ハンターギルトをあとにした。
地図を片手に街の門を通り過ぎると、ライマインさんが横に並ぶ。プレシャスはライマインさんの反対側にいた。ライマインさんは私が話せば雑談にはのってくれるけれど、討伐依頼に関する内容には口出しをしなかった。
私の家がある位置と逆方向に歩き出していくと、道の両側には畑や田んぼが広がっていた。遠くには森が見えて森の中に川や沼が点在していて、ビッグポイズンフロッグの生息場所でもあった。
森からビッグポイズンフロッグが出てくると、人間や農作物に危害が及ぶから討伐依頼が出されていた。
「プレシャス、私自身でビッグポイズンフロッグを見つけたいから、魔物の気配を感じても黙っていてね。でも凶暴な魔物の気配なら遠慮なく教えてほしい」
「今回は見守りますので、アイ様の討伐姿を楽しみにしています」
プレシャスは私の立場ややりたいことを把握してくれた。
「目指すは林の向こう側よ。私の活躍を見ていてね」
途中から脇道を進んで森の手前まで来た。私には魔物の気配を感じ取れるほどの力はないけれど、物音や目視で確認できるから周囲を警戒して森の中に入った。
少し開けた場所に出ると、前方には沼があって水草が浮かんでいる。沼周辺には犬ほどもある大きな蛙が3匹いた。
「聞いていた大きさで赤色と青色の斑点模様があるから、この蛙がビッグポイズンフロッグね。休んでいるように見て、確かに襲ってくる気配はなさそう」
「俺は口を出さないから、アイの好きなように倒してくれ」
ライマインさんが周囲を見ながら説明してくれたので、宝石魔図鑑を取り出す。
「私のやり方で倒してみるね。星剣ルビー、矢車サファイア」
基本ルースから6条の光をまとう剣と青色の丸盾を手に取った。ビッグポイズンフロッグが近づく前に魔法で片付ける予定だけれど、接近戦になるかもしれない。剣と盾があれば気持ちに余裕ができる。
深呼吸して心を落ち着かせたから、私自身の状況を確認した。丸盾の防御力は宝石魔図鑑のままでも充分な強さだから、慌てなければビッグポイズンフロッグを受け止められる。
1匹のビッグポイズンフロッグに狙いを定めたて、魔法の強さは宝石魔図鑑のままで魔法を試すことにした。
「紅球ルビー」
基本ルースから真っ赤な塊が飛んでいって、念じたとおりにビッグポイズンフロッグへ命中する。コーテリアさんとの訓練で経験したとおりに一撃で消滅した。残りの2匹は襲ってくる気配はないから、毒さえ注意すれば平気そう。
「紅球ルビー、紅球ルビー」
ふたつの真っ赤な塊がビッグポイズンフロッグに向かって、先ほどと同様に一撃で倒せた。
「アイ様、見事な魔法です」
プレシャスがうれしそうに声をかけてくれた。
「魔法にも慣れてきたから、魔物にも慣れればもっと楽になりそう」
「最初の討伐依頼としては冷静だ。アイには才能があるかもしれない」
ライマインさんも私の戦いに納得してくれたみたい。
「コーテリアさんとライマインさんとの訓練が役に立ったと思う。3匹倒したから魔石を拾って残り2匹を見つけるね」
「俺から何も指示はできないが、この調子で頑張ってくれ」
「気を引き締めて魔物退治する」
魔石を拾ってから場所を移動して、途中でリーフウルフを3匹見かけたけれど、近づく前に倒せた。
先ほど倒した3匹とは別に、4匹のビッグポイズンフロッグを発見できて目標の5匹以上となった。忘れずに魔石も拾って、順調に討伐依頼が完了した。
「ライマインさん、5匹以上倒したから討伐依頼は完了よね。あとはハンターギルドへ戻れば平気なの?」
「そうだ、ハンターギルドに戻って受付で依頼処理すれば完了だ。ただ簡単に倒せるのなら、もっと倒せば報酬を増やせるぞ」
慣れてくれば連戦してもよさそうだけれど、今日は無理したくない。
「最初だからこれで完了にする」
「そうか、初回の討伐依頼にしては上出来だ」
「無事に倒せてよかった。街へ戻るね」
来た道を引き返して、最初にビッグポイズンフロッグを倒した付近まで戻ってきたので、もう少しで街に戻れる。
「アイ様、中位魔物の気配です」
プレシャスの声に、私とライマインさんが足を止めた。




