第49話_攻撃魔法の実力
コーテリアさんが私に視線を向けて聞いてくる。
「リリスールから回復魔法も使えると聞きましたが本当ですか」
「神官と同等の回復ができると俺は聞いた」
ライマインさんが、この前の回復魔法を思い出したように話す。私は肯定の意味で頷いた。
「防御と回復が実用的なら、これで攻撃魔法も強ければ万能です。さっそく攻撃魔法を見せてください」
コーテリアさんは、興味のある目で私を見ていた。せっかくだから攻撃魔法の威力も知りたいから、今の方法と逆を行えば魔法の威力が分かるかもしれない。
「コーテリアさん、攻撃魔法の威力を確かめたいけれど、今のように防御魔法を使えば確認できる?」
「可能ですので、今度は私が防御魔法を作ります。より実践的な防御魔法を見せるために、アイが攻撃魔法を唱え始めてから防御魔法を使いましょう。ラミーチェも一緒に来ますか」
肩に乗っている使い魔に確認していた。
「僕は空から魔宝石魔法を見るよ」
コーテリアさんの肩から使い魔が飛び立つと、緑色を基調に白色が調和したうつくしい使い魔だった。大きさは肩の上ではツバメくらいだったけれど、飛び立つときにはハトほどに巨大化して庭の上空で舞っていた。
コーテリアさんが庭の中央に移動して、私の方へ体を向ける。
「いつでも唱えてください」
遠隔用の攻撃魔法はひとつだけしか覚えていないから魔法は決まっていて、最初は宝石魔図鑑の威力で試してみる。
「それではこれから攻撃魔法を唱えます。紅球ルビー」
「ウィンドシールド」
私の魔法が展開するよりも早く、コーテリアさんが呪文を唱えた。
基本ルースから真っ赤に燃え上がる塊がコーテリアさんに向かっていくと、真っ赤な塊がコーテリアさんの前で弾け飛ぶ。よくみえるとコーテリアさんの前には半透明の壁があって、前方に少しだけ亀裂が入っていた。
「属性の相性はあるが、ウィンドシールドにひびを入れるとはすごい。アイは中級ハンターの力があるぞ」
驚いたようにライマインさんが話す。相手に攻撃は当たっていなかったけれど、ひびが入るだけでもすごいみたい。
「もう一度さきほどと同じ魔法を、同じ強さで唱えてください」
コーテリアさんが庭の中央から声をかけてくる。私は頷いてから魔法を唱えた。
「紅球ルビー」
「ウォーターシールド」
先ほどと同様に真っ赤な塊が飛んでいって、水と思われる壁にぶつかった真っ赤な塊はそのまま弾け飛んだ。先ほどと異なって壁には亀裂が入っていなくて、結果を確認したコーテリアさんが私たちの近くに戻ってきた。
「今の壁にひびが入ったかどうかの差は、魔法による相性の違いです。アイの攻撃魔法は火属性の影響を感じました。火属性は風属性に強いですが水属性には弱い特徴があります。でもこの威力があれば充分で、街周辺の魔物を一撃で倒せるでしょう」
「実用的な威力があってよかった」
ハンター試験ではリーフウルフを魔法の一撃で倒したけれど、どこまでの威力があるのかは不安だった。でも街を中心に活動するのなら問題のない威力があるみたいで安心した。
「アイの防御魔法と攻撃魔法は中級ハンター相当で、探究心をくすぐります。パーティーが前提ですが、最大威力なら中級ダンジョンも可能かも知れません。ただし魔物退治やパーティー戦に慣れる必要がありますから、無理はいけません」
最強ではないけれど、通常の旅なら問題ない魔法の強さはあるみたい。勇者になって世界を救うなどとは思っていないから、私はイロハ様の世界を楽しみたい。
「アイはすごい。ただダンジョンは危険が潜んでいるから、初級ダンジョンでも必ずパーティーを組んで行ってくれ。俺に声をかけてくれればメンバーは人選する」
「戦いを含めた魔物退治やパーティー戦に慣れたら、ダンジョンにも挑戦してみたいから、そのときはお願いね」
私が答えるとライマインさんが頷いてくれた。
「宝石魔法はめずらしいので、さらに魔法効果が強力すぎると王族や貴族が近寄ってくるでしょう。他国に拉致される可能性もありますから注意してください」
思った以上に宝石魔法は優秀なようで、逆に強すぎる場合の注意をコーテリアさんが教えてくれた。
「力を持ちすぎるのは、よい点ばかりではないのね」
世界を楽しむためには、宝石魔図鑑に書かれている威力がちょうどよい魔法の威力かもしれない。
「アイの攻撃魔法はほかにもありますか」
コーテリアさんが聞いてくる。
「遠隔用の攻撃魔法は今のだけで、もうひとつは接近用の魔法ね。でも属性の種類は今と同じ火属性よ」
「火属性に耐性がある魔物もいますから、もう1種類は別の属性を覚えると汎用性が拡がるでしょう。ひと通りアイの魔法を確認できましたから、魔法の訓練はこの辺までにしましょう」
当初と異なる魔法の訓練となったけれど充実した時間だった。
「コーテリアさんの防御魔法は詠唱が速かったから、私も見習いたい」
「実践では速さも重要で生死に関わります。でもアイは筋がよいので、頼もしいハンターが増えてうれしいです」
「アイは一流ハンターになりたいのか」
ライマインさんが聞いてきたけれどハンターとしての将来は考えていなかった。でもやりたいことは決まっている。
「私の目的はこの世界を楽しむことで、今はこの街で学びながら楽しみたい」
「異国から来たのに目的があるのはよいことだ。ハンターの知識なら俺に聞いてくれれば分かる範囲で教えてやる」
「頼りにしているね。今回の一般魔法も学べてよかった」
「アイには期待しています。私は用事があるので帰りますので、ライマイン、戦いの基礎を頼みました」
ライマインさんが頷いたのを確認すると、コーテリアさんが街へと戻った。




