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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第6石_トルマリン

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第38話_酒場と吟遊詩人

 ほかのお店も見て回ると、串焼きの食べ物もあったので買ってみる。元の世界ほどの濃厚さや柔らかさはないけれど、素朴ながらも普通に食べられた。


「少し歩いただけでも楽しくてもっと見て回りたいけれど、そろそろハンターギルドに行くね」


 寄り道をしながら歩いて、プレシャスと一緒にハンターギルドの扉を開けた。お祭りの影響なのか酒場のほうは賑わっている。周囲を見渡すと近くでライマインさんを見つけた。


「ライマインさん、少しだけ時間はある? ちょっと相談事があるのよ」


「今日は用事がないから討伐依頼の監視役も可能だ」


 私がハンターギルドになる条件として、ランク2になるまでの討伐依頼では誰かが監視役としてつく必要があった。


「そのうち監視役をお願いするかもしれないけれど、討伐依頼の前段階で相談があるのよ。討伐依頼を受けたいけれど私は魔法しか知らないから、私自身を守れるように剣や盾の使い方を覚えたい。基本で構わないので教えてほしい」


 現状では魔法の威力で魔物を退治できているだけで、戦闘に関する基本を知らないと討伐依頼はむずかしいと感じていた。


「そういう相談事は大歓迎だ。事前に言ってもらえれば調整できる」


「それならお祭りが終わったら、基本的な動きの指導をお願いできる? 場所は私が住んでいる家の庭で考えている」


「ハンターギルドにも練習場があるぞ」


「実は庭に畑を作る予定だから、できれば一緒に手伝ってくれるとうれしい。もちろん指導料や手伝い料は支払うわよ」


 もしかしたらこちらの理由が本命かも知れないけれど、さすがに畑の手伝いだけでライマインさんにお願いするのは申し訳なく感じた。


「そういう理由ならアイの家で構わないし、指導料などは気にしなくて平気だ」


 ライマインさんが承諾してくれたので、これで野菜を作る第一歩を踏み出せる。基本的な剣と盾も教えてもらえるのもうれしかった。


「うれしいけれど無料は悪いから、異国の食事をご馳走するね」


「それは楽しみだ。事前に討伐予定の魔物を決めておかないか。そうすれば効率よく教えられる」


「マイリンさんに討伐依頼の内容を聞いてみるね」


「俺も一緒に依頼内容を確認しよう」


 受付に向かうと、私に気づいたマイリンさんが手を振ってくれた。


「お祭りが終わったら初めて討伐依頼を受けようと思うけれど、どのような魔物がいるのか教えてほしい」


「いよいよ討伐依頼を考えているのですね。今なら常時討伐依頼が3件あって、どの討伐依頼もアイさんによさそうな依頼よ」


 3件の依頼書を見せてもらうと、どの討伐依頼も街や森周辺に出没する下位魔物が対象だった。魔物の種類や討伐数は依頼によって異なっていた。


「私にはどの討伐依頼がよいか分からないから、ライマインさん、おすすめの討伐依頼を教えてほしい」


 ライマインさんが依頼書を手に取って、中身を見比べてくれた。


「アイは毒の状態異常を回復させる魔法は覚えているか」


「この前唱えた回復魔法で、毒をふくめた一般的な状態異常を直せるよ」


「それなら決まりだ。ビッグポイズンフロッグ討伐がおすすめだ」


 ライマインさんが選んだ依頼書をみせてもらうと、魔物を5匹以上倒す討伐内容だった。農作物を育てている場所の近くで出没して、害虫駆除に近い雰囲気みたい。今の時季なら定期的に倒す必要があるらしくて、常時討伐依頼になっていた。


「討伐報酬は5匹で銀貨10枚、6匹以上は1匹につき銀貨1枚ね。ほかの討伐依頼に比べて、どのあたりがよかったの?」


 何の理由でこの討伐依頼にしたのか知りたかった。


「ビッグポイズンフロッグは大きい蛙で、リーフウルフと同じくらいだ。赤色と青色の斑点模様が特徴で、手出しをしなければビッグポイズンフロッグからは襲ってこない。動きは遅いが、逆に耐久性が高くて毒を持っている」


「倒すには時間がかかるけれど、毒対処ができれば危険が少ないのね」


「アイの考え通りだ。毒を治せる魔法があれば、安全でおいしい依頼だろう」


 ポーションでも毒は治せるけれどお金がかかって、そのぶん報酬が減るから魔法で治せるほうが得だった。それで私に毒の状態異常が治せるのか聞いたのね。


「ライマインさん、おすすめの討伐依頼を選んでくれて助かった。マイリンさん、お祭りが終わったらこの討伐依頼を受けてみるね」


「依頼前に討伐の稽古もするつもりだから、危なくなったら俺が助ける」


 ライマインさんがマイリンさんへ補足してくれた。


「実際に依頼を受ける段階になったら、また声をかけてください。初めての討伐依頼になると思うので、無理はしないでください」


「怪我には注意するね。お祭りのあとに討伐依頼と戦闘の指導も決まったから、今日はもう一度お祭りを見てから帰るかな」


 賑わっている街の雰囲気をもっと楽しみたかった。先ほどのアクセサリーを置いてあるお店のように、また新しい発見があるかも知れない。


「アイさんはこの街のお祭りは初めてだと思うので、存分に楽しんでください。でも今年は少し残念な知らせがあって、となりの酒場で吟遊詩人を呼べませんでした。急な用事で来られなかったみたいよ」


「吟遊詩人は、楽器を使いながら歌う人であっている?」


 ゲームなどで登場していた記憶があったので、間違っていないか聞いてみた。


「アイさんの説明どおりで、吟遊詩人の奏でる音色が心に染み込んですてきよ」


「俺は一緒に来る踊り子が楽しみで、音楽にあわせた踊りは心が奪われる」


 マイリンさんとライマインさんは吟遊詩人と踊り子が楽しみだったみたい。音楽と踊りはお祭りを華やかにするから、楽しみにしていた理由も頷けた。


「音楽や踊りは私も好きよ」


「アイの国に伝わる音楽はどのような感じだ?」


 ライマインさんが聞いてくる。元の世界では友達とカラオケに行って、一緒に歌って踊っていた。昨日のように思い出してきて、涙は出なくなったけれどまだ心が辛くなる。それでもイロハ様の世界では色々な人が私を支えてくれている。


「上手ではないけれど歌を聴いてみる?」


 恩返しの意味を込めてライマインさんへ聞く。


「アイがよければ聴いてみたい」


「わたしもアイさんの歌を楽しみたいです」


「ふたりにはお世話になっているから、踊りも合わせてみるね。音楽と踊りを考えるから、それまで少し待っていてね」


 近くのテーブルへプレシャスと移動した。

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